気候・地勢および温冷刺激の保養効果の自律神経指標による評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000885A
報告書区分
総括
研究課題名
気候・地勢および温冷刺激の保養効果の自律神経指標による評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
鏡森 定信(富山医科薬科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 本橋豊(秋田大学)
  • 関根道和(富山医科薬科大学)
  • 中川秀昭(金沢医科大学)
  • 鏡森定信(富山医科薬科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保養地における温冷環境刺激および温浴行動の健康影響を自律神経系への作用を中心に置き、心理・生理学的面からみた保養効果を把握するための妥当な指標の開発とそれに基づいた保養プログラムの提示を研究目的とした。
研究方法
本年度は評価会員会からの心理精神的健康面への影響の面の把握をさらに強化すべきとの指摘にしたがい、主観的気分や脳波検査・睡眠の質などに関する指標も導入して保養効果の把握のための指標を提示した。また、保養地の環境面からその健康影響を評価するために気象条件のうち、今回の研究の主題である保養地における温冷刺激との関連で、気温と湿度から判定する不快指数を指標として、それが心臓自律神経活動に影響することをヒトのモニタリング観察によりまず確認し、ついで日本各地方の不快指数を算出し、環境面から保養地としての適正を評価する方法を提示した。
結果と考察
1.温浴行動の健康影響を把握するための心理・生理学指標に関する研究。
1)温浴が自律神経指標および脳機能指標に及ぼす影響の把握。
被験者は健康な成人男性7名(平均年齢39.4±7.4歳)で、保養地の温泉(約 41°C)において2分の休息をはさんで3分間の全身入浴を3回繰り返した。脳波の周波数分析の欠課、α2波パワー値の増加が認められた。また、平衡機能を鋭敏に反映する指標である重心動揺量は、温泉入浴後に動揺軌跡長が減少した。以上の結果は今回質問票で確認した入浴後の精神的なリラクゼーション効果と対応しており、温泉入浴の効果を客観的に評価できる有用な指標であると考えられた。
2)運動浴のリラックス感および睡眠の質への影響の把握。
温浴(34℃)中に各30分のストレッチ、歩行、浮遊の合計90分のいわゆる運動を行っ   た場合の効果を、主観的リラックス感や睡眠感(OSA睡眠評価表)および客観的指標 としての唾液中のナトリュウム、カリュウム、免疫グロブリンAの濃度、尿中の成長ホルモン、カテコラミンや睡眠中脳波などから検討した。 その結果、午後、夜いずれの運動浴も熟睡感を増すが、夜の方がよりそれが強いこと、午後の運動浴では主観的調査における覚醒度の上昇、夜のそれでは唾液中のNa/K比の上昇、すなわちリラックス感の上昇のみられることが分かった。唾液中のIgAや尿中の成長ホルモンやカテコラミンでは運動浴にる効果を明らかにすることはできなかった。
2.保養地の気象環境の自律神経系に対する影響から見た評価に関する研究。
1) 気温と相対湿度から算出した不快指数と心臓自律神経活動の関連。
個人サンプラ-で気温と相対湿度およびホルタ-心電計で心拍を連続的にモニタリングし、その変動スペクトル解析により気温と相対湿度からアメリカ大気局の方法で算出した不快指数の心臓自律神経活動への影響を検討した。
不快を訴える人が出現しはじめる不快指数70前後で、不快指数の増加にともなって心臓交感神経活動指標(低周波/高周波成分比;LHR)は上昇し、一方その副交感神経活動指標は低下する反応が確認され、不快指数の環境指標としての意義が自律神経系との関連で位置づけられた。
2)不快指数からみた保養地としての適正評価。
日本の各地方および日本を代表する保養地である軽井沢について気温と湿度の統合的指標である不快指数を用いて検討を加え、保養地の適正を評価する視点から整理を行った。
北海道から沖縄まで、各地方の気象台における直近の1998年の毎時間ごとの温度と湿度の測定値を用い、毎時間毎の不快指数を、1、5、8、10の各月の全日の24時間時間帯について算出し、これをそれぞれの月の全日の各時間帯の平均値として検討を加えた。この際、不快指数の70を快適レベル、75をやや不快のレベル、80を不快のレベル、85を著しく不快なレベルと定義した。
その結果、北海道と軽井沢は夏の避暑地として最適の地位にあった。この後に秋田、盛岡、宇都宮、富山が続き、その他の地方は気象条件から見て避暑には適さないと判定された。なお、沖縄は冬の不快指数はいわゆる「快適」に近いレベルにあり、その温暖さとともに不快指数からみても冬季の保養に適していると判定された。
結論

公開日・更新日

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