水道における化学物質の毒性、挙動及び低減化に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000716A
報告書区分
総括
研究課題名
水道における化学物質の毒性、挙動及び低減化に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
眞柄 泰基(北海道大学大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 国包章一(国立公衆衛生院)
  • 相澤貴子(国立公衆衛生院)
  • 安藤正典(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 長谷川隆一(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 西村哲治(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 小泉清(横浜市水道局)
  • 伊藤禎彦(京都大学大学院)
  • 伊藤雅喜(国立公衆衛生院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
65,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2003年のWHO飲料水水質ガイドラインの全面改訂に対応し、我が国の水道水質に関する基準も全面的に見直す必要が生ずると考えられ、このため、未規制、未監視の化学物質の水道における存在状況の把握、浄水処理における除去・生成・制御機構の理論的解明、毒性情報の収集・評価といった化学物質に関する科学的情報、知見を得ることを目的とする。
研究方法
主任研究者及び分担研究者の他、水道事業体等技術者、研究者47名の研究協力者からなる研究委員会を設置し、全国レベルでの実態調査および室内実験等をおこなった。
結果と考察
未規制又は未監視の化学物質の存在状況等に係る研究では、①フェノブァルブ等の農薬、ミクロキスティンの水系における挙動及び水道における存在状況の把握、②1,4-ジオキサンの水道における存在状況の把握、③非イオン界面活性剤の発泡性に関する水道における限界濃度の定量、④有機化学物質の包括的一斉分析手法の開発をする事ができた。
浄水処理における除去・生成機構の理論的解明に係る研究では、①重金属等無機物質の凝集処理過程における挙動解明、②塩素処理、オゾン処理等消毒処理により生成される副生成物の生成機構など明らかにすることができた。毒性情報が不足している物質の毒性評価に係る文献調査及び評価をおこなった。
未規制または未監視の化学物質の存在状況等に係わる研究では、水質基準、監視項目およびゴルフ場農薬に指定されている農薬に加えて、内分泌攪乱化学物質としてリストアップされた7農薬と1998年のWHOガイドラインでドラフトされた7農薬を調査対象とした。農薬使用量は年々減少傾向にあり、内分泌攪乱化学物質7農薬も同様の傾向を示した。検出された総農薬の水道水のリスクをADIに基づく暫定最大許容摂取量(PMADI)への寄与率として計算すると、原水における各農薬検出最大値検出日では最大17%、検出平均値(検出したものの平均)でも最大6.8%であった。
富栄養化が進みMicrocystis、Anabaenaの発生が認められる湖沼・貯水池を水源としている水道の原水・浄水を対象として、ミクロキスティン、アナトキシン濃度の実態調査を実施した。その結果、ミクロキスティンについては原水試料35検体中1検体からミクロキスティン-LR、RRが検出され、その濃度はそれぞれ0.59、0.95μg/Lであった。浄水試料(35検体)からは検出されなかった。アナトキシン-aについては原水・浄水の全試料(48検体)から検出されなかった。
界面活性剤の不純物として存在し、メチルクロロホルムの安定剤として利用されている1,4ジオキサンは河川水や地下水から検出された。1,4ジオキサンは工業用洗浄剤にも高濃度で含有されていることが明らかとなり、工業用薬品使用者が1,4ジオキサンの含有を認識しないで使用して排出されている可能性が高いことが推定される。水道原水中に存在した場合、1,4ジオキサンは親水性であるため標準的な浄水処理での低減化は困難であることが明らかとなった。オゾンによってもその分解率は低かった。界面活性剤の発泡特性について調査した結果、ノニオン系の洗剤は、アニオン系に比べて発泡限界は低濃度であることが明らかになるとともに、水温が高い方が発泡性が強いことが明らかとなった。なお、水道原水のようにノニオン系やアニオン系が混合すると、発泡性には相乗効果があることが明らかとなった。
鉛管を用いている給水管について400カ所の給水栓水の調査を行った。その結果、管内滞留水を排出した流水については、水道水質基準値である50ppb を超えることはなく、最大でも13ppbであった。管内滞留水についても水道水質基準値を超えることはなかった。硬質水道用塩化ビニル管からスズが溶出することが明らかとなったが、その形態は試料によって異なることが明らかとなった。アンチモンについては凝集沈殿ろ過による除去性が低いことから、逆浸透膜法による処理実験を行った。アンチモンを含有する廃金属鉱山廃水の影響を受ける水道原水を用いて連続処理実験を行った果有効な処理方法であることが明らかになった。
ハロ酢酸の挙動はTHMと類似することから水質監視と制御にTHMを代替指標に用いることができる水道も多いことが明らかになった。ハロ酢酸の低減化技術としては中間塩素処理、粉末活性炭処理、高度浄水処理(オゾン活性炭処理と粒状活性炭処理)、二酸化塩素処理が有効であり、水道におけるハロ酢酸制御は技術的には十分可能であると考えられた。
WHO飲料水ガイドラインの原案作成の内、日本が担当となった3物質(1,4-ジオキサン、エピクロロヒドリン、ヘキサクロロブタジエン)について、その健康影響およびガイドライン値の原案を作成した。
結論
WHO飲料水ガイドラインの改訂及び水道法に定める水質基準の見直しに際して生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会で11年度に調査を要すると指摘された事項については、水道における毒性、挙動及び低減化に関する知見を得ることが出来た。
さらに、WHOが2003年の全面改訂を予定していることから、既存の水道水質基準に定められている項目ばかりでなく、新規物質についても調査をおこなった。

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研究報告書(紙媒体)

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