保育所と幼稚園の合同保育に関する調査研究 -保育所保育の特性を探求する-

文献情報

文献番号
200000360A
報告書区分
総括
研究課題名
保育所と幼稚園の合同保育に関する調査研究 -保育所保育の特性を探求する-
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
石井 哲夫(社会福祉法人 嬉泉 常務理事)
研究分担者(所属機関)
  • 金子恵美(日本社会事業大学専任講師)
  • 藤井和枝(埼玉純真女子短期大学教授)
  • 大豆生田啓友(関東学院女子短期大学専任講師)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究は、“子どもの福祉"という視点から、保育所と幼稚園の合同保育の条件(保育内容)が子どもに与える影響について明らかにすることを目的とする。これによって、“保育に欠ける"子どもが必要とする保育条件を明らかにし、合同保育にとどまらず多様な保育サービスの進行にあたって、子どもの福祉という視点から必要な保育条件について検討する際の基礎資料を提供するものである。
研究方法
本研究は、次の3つの方法からなる。
1.有識者へのヒアリング 合同保育に関して、保育制度・国際比較・教育など多様な視点から研究を行っている研究者7名(網野武博氏、泉千勢氏、大場幸夫氏、岡田正章氏、待井和江氏、森上史朗氏、森田明美氏)にヒアリングを行い、次の5点に関するそれぞれの研究者の意見を明らかにした。①「合同保育における児童への影響に関する調査  研究(石井哲夫,1999年3月)」結果についての意見,②合同保育についての意見,③合同保育の進行への対応についての意見,④本調査の視点・方法についての意見,⑤幼保一元化についての意見
2.合同保育実施園の実態調査及び利用者の意識調査(保育所・幼稚園の調査を含む)1997年に厚生省が実施した「幼稚園・保育所の合築等の施設の実態調査」結果をもとに保育所と幼稚園の子どもを同一クラスで保育している合同保育実施園を抽出、そのうち協力の得られた16園について、次の4種類のアンケート調査を実施した。①園の概要(園長または主任),②5歳児の保育内容(5歳児クラス担任保育者),③保育者の意見(合同保育クラスを担任したことがある保育者),④保護者の意見(5歳児クラス在園児の保護者)。なお実験群(合同保育実施園)と同地域から、統制群として保育所、幼稚園を各2園づつ抽出、そのうち協力の得られた園についてアンケート調査を実施した(保育所24園、幼稚園25園)。調査票の種類と対象は上記と同様である(該当しない質問は除外)
3.合同保育実施園のケーススタディ 上記の合同保育実施園のうち3園を抽出し、5歳児の保育と子どもの状況について観察とビデオ撮影を行った。さらに園長、5歳児担任保育者への聞き取り調査を行った。観察とビデオ撮影の方法・内容は次の通りである。①方法:おおむね7:30-13:30,15:00-16:00の時間帯に分担研究者3名で実施,②内容:園の概要(環境・クラス編成、保育者の配置等)、見学日の保育の流れ、具体的な活動内容、子どもの状況等について(早朝保育・午前中の保育・幼稚園児の降園場面・昼食・午後の保育)
結果と考察
合同保育の実態として、次のような傾向がうかんできた。第一に、同一クラスで保育を行っていても、保育開始時期や保育時間の違いから、保育園児と幼稚園児とでは子どもの状況やニーズに違いがみられる。すなわち、園は幼稚園児にとって社会生活の場であるが、保育園児にとっては自分をさらけ出す生活の場であり、子ども同士の集団生活の時間が長い保育園児は、親に保護されている時間の長い幼稚園児に比べて、園生活において自我を強く主張する傾向がみられた。第二に、合同保育が「地域の子どもに対して保育所・幼稚園の区別なく同じ保育を行う」という保育の共通性の強調のもとに実施されていることから、“保育に欠ける子ども"に対する配慮が意図的に行われにくい傾向がみられた。 さらに子ども、保護者、保育者に影響を及ぼす要因として、次のことを抽出した。
①“集団規模が大きい"と、子ども同士・保護者同士の関係が保育所・幼稚園それぞれで固まりがちとなり、保育園児の情緒に気になる影響がみられ、さらに保育者は両者のニーズの違いをより認識する傾向にある。しかし、合同保育実施園は保育園児に幼稚園児が加わることから、統制群の園に比べて、集団規模が大きくなりがちな傾向がある。②幼稚園児の降園時間が常に13時~14時までの“早帰り型"の園が11園と最も多い。“早帰り型"の園は、基本保育時間が保育園と同様の8時間となっている“一体型"の3園と比べて、子ども同士・保護者同士の関係が保育所・幼稚園それぞれで固まりがち、保育園児の情緒に気になる影響がみられ、また保育者の負担感が重い傾向にある。③保育士と幼稚園教諭とが別々にローテーションを組んでいる“別勤務"の園では、全く同様にローテーションを組んでいる“同一勤務"の園と比べて、子ども同士・保護者同士の関係が保育所・幼稚園それぞれで固まりがち、保育者は両者のニーズの違いをより認識する傾向にある。しかし、別勤務の場合の方が、保育園児の情緒は安定する傾向にある。④近年新たに人口が流入して待機児の多い“都市化"が進む地域の園は、“過疎地"にある園に比べて、子ども同士・保護者同士の関係が保育所・幼稚園それぞれで固まりがちであり、保育園児の情緒に気になる影響がみられ、また合同保育についての評価も「気になる影響がある」と感じる保護者が「良い影響がある」と感じる保護者を上回っている。逆に“過疎地"にある園は、もともと住民同士の関係が親密であり、合同保育によって子ども集団を確保することができることで、保育者にも保護者にも良好な評価を得ている。⑤親の子育てへの“関心が低い"地域の園は、“関心が高い"地域の園に比べて、子ども同士・保護者同士の関係が保育所・幼稚園それぞれで固まりがちであり、保育者の負担感も重い傾向にある。“関心が高い"地域の園では、保護者は保育園児の情緒の揺れ動きを敏感に察知しており、これに対応すると考えられるため、逆に保育者は“関心の低い"地域の園の方が、保育園児の情緒に気になる影響を感じる傾向にある。
結論
“保育に欠ける子ども"が必要とする保育条件として、小規模の子ども集団、一日を通した担当保育者との結びつき、個人のプライドを守ることに気を配る養護的な配慮、保育園児と幼稚園児の生活リズムの違いに配慮した心身の休息や活動の一日の流れのデザイン、等があげられる。

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