心身症、神経症等の実態把握及び対策に関する研究

文献情報

文献番号
200000332A
報告書区分
総括
研究課題名
心身症、神経症等の実態把握及び対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
奥野 晃正(旭川医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 三池輝久(熊本大学)
  • 渡辺久子(慶應義塾大学)
  • 星加明徳(東京医科大学)
  • 衞藤 隆(東京大学)
  • 小枝達也(鳥取大学)
  • 金生由紀子(東京大学)
  • 山縣然太朗(山梨医科大学)
  • 沖 潤一(旭川医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、小児科領域で全身倦怠感、頭痛、腹痛など心の問題に起因する不定愁訴、神経性食欲不振症、睡眠障害などを主訴として受診する患者が増加しているといわれているが、これまで全国的な実態調査はなされていなかった。本研究では、医療機関および学校を対象に心身症・神経症等の実態調査を行い、患者支援の対策を提言する。今年度は3年計画の最終年にあたるので、昨年度行った実態調査の分析を完了し、心身症・神経症の診断および対応の手引きをまとめた。
研究方法
結果と考察
研究結果:全国実態調査について昨年度は単純集計を行ったが、今年度は心の問題の有無を勘案して詳細な分析を行った。医療機関における調査は、日本小児科学会認定医制度研修施設を調査当日に受診した患者を対象にした。3歳以上の患者の5.6%が担当医により心の問題があると判定された(判定保留を含めると9.5%)。学校における調査は月曜から金曜までの5日間に保健室を利用した児童生徒を対象にした。保健室利用者は学年とともに増加し、男女ともに中学校3年で最大となった。いずれも女子の利用が多かった(1.4倍)。養護教諭の記載の内容から心の問題があると考えられたものは、小学校12.5%、中学校14.6%、高校13.5%であった。これら心の問題をもつ患者あるいは児童生徒に特徴的な症状は「だるい・疲れる」「頭痛」「腹痛」で、病院および学校で一致した結果が得られ、両者は同じ病態を把握していると考えられる。また、睡眠障害、登校状況、対人関係とも強い関連が認められた。この結果をもとに算出した病院小児科を受診する心の問題をもつ患者数は3,561人/日(判定保留を含めると6,041人/日)である。同様に、学校の保健室を利用する児童生徒の内、心の問題を抱えるものの実数は、小・中・高校をあわせて5日間で198,000人と推定される。保健室を利用しない児童生徒も多いことことから、この人数はさらに多いと考えられる。一方、これに対応する医療関係者を関連学会会員数から見ると、小児科学会1,7000人(認定医12,000人)、小児心身医学会809人、児童青年精神医学会2,210人、臨床心理士6,730人(乳幼児・児童青年領域4,157人)である。さらに、上で指摘された症状を示す児童生徒は不登校の準備状態であり、慢性疲労症候群の概念に一致すること、同じような慢性疲労状態にありながら見かけ上元気にふるまっているのが神経性食欲不振症であることが指摘された。また、学習障害、注意欠陥多動障害はともに心身症の合併率が約60%と高く、とくに前者では不登校などの学校不適応が顕著に認められており、医療面からの支援が求められる。
以上の内容をもとに、次の提言と対応の手引きをまとめた。
提 言:1)体調不良を繰り返し訴える児童生徒には早期に医療機関を受診することを勧める。2)心身症、神経症に関する医学教育、医師の生涯学習を充実する。3)小児精神保健の専門家を育成する。4)家庭・学校・病院・行政のチームを作り、各地域や学校の動向を把握し、協力して対応に当たる。5)一般社会に向けて心の問題について理解を求めるよう働きかける。
手引き:1)「心身症への対応」のための家族用マニュアル:不定愁訴、チック、夜尿症、夜驚症、2)トゥレット症候群に関するマニュアル(本人および保護者用、医師用、学校用)、3)不登校「(慢性)疲労症候群」診断基準、4)神経性食欲不振症:小学生、中学生、高校生用の手引き、5)学習障害診断の手引き、6)小児心身医学研修ガイドライン(日本小児心身医学会案)
結論

公開日・更新日

公開日
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更新日
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