ケアマネジメント・システムに対する総合評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000263A
報告書区分
総括
研究課題名
ケアマネジメント・システムに対する総合評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
白澤 政和(大阪市立大学大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 松井妙子(大阪府立看護大学・医療技術短期大学部)
  • 岡田進一(大阪市立大学大学院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険制度の導入により、介護支援専門員制度も確立され、効果的な居宅介護支援事業が展開されるようになってきた。しかし、介護支援専門員の相談支援サービスの質に関する議論は、これからであり、また、介護支援に関連する居宅介護サービスの質に関する研究も進んではいない。
欧米での先行研究では、ケアマネジメントに関する実証的研究が多く見られ、わが国においても、ケアマネジメントに対する評価に関する紹介が多くなされている。しかし、ケアマネジメントを包括的に評価を行うような研究はこれからであり、ケアマネジメント実践やケアマネジメントを成立させる要件および評価に関する研究は非常に少ない。そこで、本年度は、米国の先行研究を踏まえて、わが国のケアマネジャー(介護支援専門員)の現状と評価基準に関する基礎研究を行うこととした。特に、ケアマネジャーの問題解決支援能力や職務満足度の観点から分析を行い、ケアマネジメント評価のあり方を検討する。
研究方法
調査対象者は、全国社会福祉協議会名簿に在宅介護支援センターとして登録されているセンターから無作為に抽出された全国の在宅介護支援センター500ヶ所の職員500名である。調査方法は、質問紙を用いた横断的調査法である。調査期間は、2001年1月から2月までである。調査回答は任意とし、回答が得られた比率は、約68.0%で、その人数は340名であった。
結果と考察
利用者の立場に立った問題解決支援行動と職員の職務満足度との関連を見るため、因子分析で算出されたそれぞれの因子得点間の相関を見た。その結果、問題解決支援行動の「利用者の問題解決に対する支援行動」因子と「利用者の自己決定に対する支援行動」因子は、職務満足度の「職務全体に対する満足度」因子と強い相関があることが明らかとなった。また、問題解決支援行動の「利用者の問題解決に対する支援行動」因子は、職務満足度の「職場環境と責務に対する満足度」因子と関連が深いことも明らかとなった。
このことは、利用者の立場に立った支援を行っているケアマネジャーは、専門的技術を十分に発揮し、さらに、その技能を自己評価して職務満足度も高くなる傾向を示したものと言える。また、職務満足度が高くなると、さらに技術を磨こうとするモチベーションが高まり、より利用者の立場に立った支援を行おうと努力するのではないかとも考えられる。いずれにしても、この関連は、相互作用によって相乗効果となって出現している現象ではないかと考察している。今後、相互作用を分析できる共分散構造分析などの方法でさらなる解明が必要と考える。
結論
本研究結果から、職務満足度の高いケアマネジャー(介護支援専門員)は、サービス利用者の視点に立ったサービス提供を行っていると考えられる。そのことは、介護保険制度の基本的理念である「利用者の立場に立脚したサービス提供」を具体的に評価するための基準の一つが職務満足度であると言え、職務満足度がケアマネジメント評価基準の一部となることが望ましい。

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