介護保険制度における最適マネジメントの方策に関する研究(総括研究報告)

文献情報

文献番号
200000199A
報告書区分
総括
研究課題名
介護保険制度における最適マネジメントの方策に関する研究(総括研究報告)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
小山 秀夫(国立医療・病院管理研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、今後大きな変革を求められる介護保険施設における最適なマネジメントを模索し、介護保険施行時に効果を発揮するような施設マネジメントにおける最適化指標等を作成することである。わが国においては、論文・研究等において、高齢者保健医療施設の最適マネジメントに触れたものは少なく、実証研究によってまとめられたものはほとんどない。本研究は、そのような意味から、介護保険制度における最適マネジメントの方策について実証的に検証する研究することを目的としたものである。
研究方法
平成10年度、平成11年度における研究結果に基づいて、最終年度である平成12年度には、米国への現地聞き取り調査並びに文献調査等から、米国における在宅定額支払制度等の実態分析を行った。また、カナダ、ドイツ、オランダ、ルクセンブルク等の高齢者ヘルスマネジメントの現状分析を行った。委員会において、各国のインターネット上の最新情報を分析するとともに、今後ともそれらの追跡調査を実施することを確認した。また、米国の現地実態調査については、ワシントンDCで開催された全米老年学会第53回大会において、ポスター発表「日本における介護保険の最適マネジメントについて」を行うとともに、教育シンポジウムとして「日本の長期ケアシステムに与えた介護保険制度の影響」というテーマで報告した。米国において、わが国の介護保険制度は大きな関心を集めており、特に要介護認定システムとともにわが国の高齢者保健・医療施設におけるマネジメントについての報告には、多くの質問が寄せられた。今後のは、今年度収集した諸外国の動向について、わが国の実際の適用を念頭においたシミュレーションを実施し、その有用性を検証する必要がある。
結果と考察
1)米国において1997年8月5日に施行された「均衡予算法(The Balanced Budget Act of 1997:BBA)」は、メディケアの保険認定在宅ケア提供業者に対して、PPS(定額予測給付)を導入し、97年10月1日からは、暫定給付方式(Interim Payment System:IPS)を導入した。HHS/PPSの導入により、在宅ケアの利用率が低下していることが明らかとなった。具体的には、慢性疾患や糖尿病、呼吸器系疾患等の特定の疾患、高齢者や独居者の利用が減少する一方で、中南米移民や高額所得者、アルツハイマー患者などの利用が増えているという実態が明らかになった。これらの米国の動向から、わが国の介護保険制度における在宅給付のあり方の見直し等を行う必要があることが示唆できた。2)HHS/PPSの導入に対するサービス提供者側の不満は大きく、出来高払いから定額制の移行に対処できないという実態が明らかとなった。標準予測給付額の水準や受給者のニーズの判定については、大量の統計データと科学的な調査分析手法に基づいてシステム(OASIS)が作成されている。このシステムはわが国の介護保険制度における要介護認定のコンピュータプログラム等と類似の考え方が基礎にあるものと考えられる。米国では、ニーズの適性評価と2ヶ月ごとの再評価の実施により、2000年12月以降はニーズ判定の検証が薦められている。なお、給付水準については、2001年4月1日までに適正な給付額を設定するとしている。3)HHS/PPSの各種機能と手法についての研究を実施し、これらの機能・手法がわが国の高齢者のヘルスマネジメント分野の政策立案の基礎資料として、参考となることが確認できた。4)HHS/PPSを参考としたシミュレーション案を作成し、委員会において検討した結果、モデル施設・機関における調査の必要性が示唆された。
結論
本年度の研究では、以下のことが研究成果として得られた。
第一に、米国における在宅ケアのHHS-PPSの導入により、在宅ケアの利用率が低下していることが明かとなった。具体的には、慢性疾患や糖尿病や呼吸器系疾患等の特定の疾患、高齢者や独居者の利用が減少し、中南米移民や高額所得者、アルツハイマー患者などの利用が増えているという実態が明らかとなった。第二に、サービス提供者側の不満は大きく、出来高払いからPPSへの移行に対処できないという実態が明らかとなった。SPP標準予測給付額の水準や受給者のニーズの判定については、大量の統計データと科学的な調査分析手法に基づいて設計されたシステム(OASIS)が作成されている。このシステムはわが国の介護保険制度における要介護認定のコンピュータプログラム等の考え方が影響を与えている者と考えられる。米国では、ニーズの適性評価と、2ヶ月ごとの再評価の実施により、12月にはニーズ判定の検証が行われている。SPPの水準については、2001年4月1日までに適正な給付額を設定するとしている。
HHA-PPSには以下の機能と手法があることが明らかとなった。①HHRG(Home Health Resource Groups):ケアニーズや利用サービスの種類・量(回数)などが類似する加入者を、利用資源規模(コスト)の実績に基づいて、80の共通利用者群に分類し、資源の規模を胸痛群の総体係数で示す、②OASIS(Outcome and Assessment Information Set):メディケア受給者の多様なケアニーズをケースミックスによって統合一本化したうえで評価し、HHRGのどれに該当するかを判定するための全米統一的な情報セット。③HAVEN(HAVEN software):州ごとに設置するOASISの端末コンピュータシステム。④SPP(Standard Prospective Payment):受給者一人当たりにつき、60日間を一つの単位としてHHAに給付するための全米統一的な標準予測給付額。⑤SCIC(Significant Change in Condition):60日間の期間中にケアニーズが大きく変化し、HHRGの変更やケアプランの見直しが必要になった場合に適用される給付修正方法。⑥LUPA(Low Utilization Payment Adjustment):受給者が60日間の間に受けるサービス量は種類ごとに全米平均量(訪問回数の全米平均値)を設定しているが、仮にHHAが平均値を下回ってサービス提供を行った場合には、SPPを1訪問当たりの定額給付にする。⑦RHHI(Regional Home Health Int
ermediary):州を単位として地域ごとに設置される「地域ホームヘルス給付代行機関」で、基本的にはメディケアの給付の仲介・代行を行う。RHHIはHHAからの「サービス提供開始レポート」を受理し、HHRGや給付額の確定を行う。これらの機能・手法は、わが国の今後の高齢者ヘルスケアマネジメント分野においても、参考となるものと考える。
今後はこれらの米国の動向について、わが国においてシミュレーションを実施し、その有用性を検証する必要があろう。
わが国の介護保険制度は諸外国において、大きな注目を集めている。介護保険制度は、国民にとってよりよい制度となるべく今後とも改正を重ねていくことはいうまでもない。本研究は、将来的な介護保険制度の改革に向けての基礎資料を作成するものである。介護保険制度のさらなる発展には、施設の最適マネジメントについての考え方がなくてはならないと考える。なぜならば、わが国の社会保険方式では、施設の経営等のマネジメントの不備によって生じた損失を、保険の財源で賄っているからである。国民の税金や社会保険料等の負担、保険の一部負担等だけでは、高騰する医療費の問題、介護保険料の問題等の抜本的解決にはならない。今後の介護政策を考えると、必ず施設マネジメントの改革にぶつかることは必須であると考える。政策提言として、このような方向性を示唆することは、わが国の介護保険行政にとって大変重要な課題であると考える。

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