社会福祉事業の経営指標作成に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000014A
報告書区分
総括
研究課題名
社会福祉事業の経営指標作成に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
矢野 聡(国際医療福祉総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 立岡 浩(広島国際大学)
  • 砂原 和仁(東京海上ベターライフ株式会社)
  • 小山 剛(長岡高齢者総合ケアセンターこぶし園)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
5,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今後重要になるであろう社会福祉に必要な経営指標の概念を、主に高齢者施設及びそれを経営する法人本部の実態をみることによって分析、解明する。同時に諸外国における同様の施設およびNPO組織の経営実態と財務内容をみることによって、我が国との違いを明らかにし、今後の経営を行う際の指標化の確立に示唆を与える。
研究方法
4つの視点からアプローチした。①福祉事業で著名な複数施設を経営する法人幹部への経営の動向、②介護老人福祉施設およびそれを有する法人全国調査。③全国的にヒヤリング。そして④海外の高齢者福祉施設福祉団体の経営実態調査。
結果と考察
理論研究では、もっとも市場との対応が進んでいるとみられる米国でも、最近の文献によると社会福祉の経営(Management)が語られたのは90年代の始めからで、この分野はまだ学問領域として確立していない事実が伺えた。全国実態調査では、介護保険制度実施以前では施設経営者に経営感覚浸透の動機付けがあまり行われていなかったが、追跡調査では若干の改善がみられた。経営者へのヒヤリングの結果から得られた経営ベンチマークの実像は、もと医療従事者、公務員、政治家、創業者の2世、3世など様々であるが、組織発展論とともに今後さらに分析を続ける必要が感じられた。海外ヒヤリングでは、フランスの施設は収入源が医療・福祉ミックスであり、公的財源配分の根拠として財務、事業および人事計画を含む経営計画の内容によるという事実が明らかとなった。イギリスでは、規制緩和により公的機関が非営利化して、従来の非営利団体がさらに民間との共存を探るという方向性を鮮明にしている事実があった。
結論
今回行われた社会福祉事業の経営指標開発の研究は、社会福祉施設の財務会計に資するための実践的なツールとして開発されるよりもむしろ、大学や大学院等の高等教育機関による社会福祉経営の基礎教育の一環として、今後さらに開発すべきである。これによって今日の社会福祉が直面する諸問題を営利市場との対比、あるいは他の人的サービスとの対比から明らかにすることができ、産業社会における社会福祉事業の固有性を考察することができる。
欧米でも、経営アプローチからの福祉研究はその重要性が指摘されていながら、著についたばかりであり、その意味では横並びの学問ということがでる。従って我が国でも今後さらに積極的な調査研究が期待される。今後の課題としては社会福祉の組織論、人事管理論の発展に寄与する指標開発を、情報化の進展と平行して進めていきたい。

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