21世紀の地域保健福祉対策に従事する保健婦の活動と配置のあり方に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900843A
報告書区分
総括
研究課題名
21世紀の地域保健福祉対策に従事する保健婦の活動と配置のあり方に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
北川 定謙(埼玉県立大学)
研究分担者(所属機関)
  • 尾島俊之(自治医科大学)
  • 北川定謙(埼玉県立大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域住民のニーズの多様化・複雑化に伴い、地域保健福祉対策のあり方は変化している。平成12年度から導入される介護保険制度をはじめとして、老人保健福祉対策、精神保健福祉対策、難病対策およびエイズなどの感染症対策などすべての対策に連動するものである。本研究では、介護保険制度に焦点をあて、地域保健福祉対策の主な担い手である保健婦・士(以下、保健婦とする。)の活動と配置のあり方について検討した。
なお、研究課題は、以下の2課題とした。
1) 21世紀の地域保健福祉対策における保健婦の活動のあり方に関する研究
2) 21世紀の地域保健福祉対策における保健婦の配置のあり方に関する研究
研究方法
1) 21世紀の地域保健福祉対策における保健婦の活動のあり方に関する研究
① 市区町村、都道府県保健所を1/3無作為抽出にてアンケート調査を行った。
② 調査対象は、老人保健担当課長1)、介護保険担当課長2)、介護保険部門の保健婦3)、保健部門の保健婦4)、福祉部門の保健婦5)、保健所の介護保険担当保健婦または保健婦長6)とした。(市町村は1)から5)、政令市・特別区は1)から6)、都道府県保健所は6)のみ)
③ 主な調査内容は以下のとおり。
・ 市区町村各部門別保健婦配置数
・ 介護保険部門における保健婦が担っている業務内容と量および保健部門における保健事業への影響
・ 福祉部門における業務内容と介護保険業務の内容と量
・ 介護予防事業への取り組みの状況
・ 保健所の担う介護保険業務の内容と業務量
④調査期間は、平成12年1月5日から20日まで
2)「21世紀の地域保健福祉対策における保健婦の配置のあり方に関する研究」
① 市町村の保健部門の保健婦に関しては、平成9年度老人保健事業報告および平成9年度地域保健事業報告の各種事業実績と保健婦数をもとに、各種の指標を作成した。
② 分析は、各種保健事業の実績の平均と標準偏差を求め、次に、保健婦数と各種事業実績との相関分析を行った。
③ 人口規模を勘案し、保健事業の実績が、(1)平均-標準偏差、(2)平均、(3) 平均+標準偏差を回帰式に代入して、それに対応する人口あたり保健婦数を求め、それぞれ低位、中位、高位は一基準とした。
④ 福祉部門、介護保険部門の保健婦数については、配属保健婦数を調査した。
⑤ ③と④を合算して、市町村の保健婦配置の目安とした。
結果と考察
1)「21世紀の地域保健福祉対策における保健婦の活動のあり方に関する研究」
保健婦の配置は、地域保健法が前面施行された平成9年度以降も順次増加しており、特に平成11年度の増加分は、介護保険制度の導入に伴う増員であると考えられる。介護保険制度が施行された平成12年度以降に介護保険部門へ保健婦の配置を予定している市区町村は約1割であり、保健部門、福祉部門および保健所においても若干の増加が見込まれていた。
次に、市区町村の保健婦が担う介護保険業務については、要介護認定に関わる業務や介護保険制度に関する相談、苦情への対応などの相談業務が、介護保険制度の導入準備期から施行後も引き続き、保健婦の担う中心的な役割であると考えられた。
介護保険制度の導入による保健事業への影響は、母子保健事業および老人保健事業ともに訪問指導を除いては、業務量はやや増加傾向にあった。業務量変化の理由は、介護保険業務優先、保健婦数の減少、対象者の増加などさまざまであった。
保健所保健婦が担う介護保険業務では、精神障害者や難病患者への専門的・技術的関与、保健医療福祉情報の収集・分析・提供、市区町村職員・介護保険事業従事者への研修など資質の向上に関するものであった。
2)「21世紀の地域保健福祉対策における保健婦の配置のあり方に関する研究」
人口規模毎の市町村数、種々の指標の平均値と標準偏差を勘案したところ、人口1万人当たり保健婦数は、算術平均で3.53人、幾何平均で2.85人であった。算術平均と幾何平均とは、全市町村で見ると差が大きいが、市町村規模毎の分析では差が小さい。
人口1万対保健婦数と種々の保健事業実績の相関係数を見ると、多くの保健事業において、保健婦数と保健事業実績の間には統計的に有意な関連が見られた。特に、母子訪問指導延人員は関連が強かった。また、胃がん検診受診率(対象年齢人口)、精神保健福祉相談等延人員比、健康相談被指導延人員、健康教育参加延人員なども、関連が強かった。逆に、予防接種率(対人口)、健康手帳交付件数、胃がん精検受診率、大腸がん精検受診率、生活習慣改善被指導実人員率(対象者数)などは、関連が弱かった。
さらに、保健婦数と母子訪問の関係(散布図)を見ると、対数変換前は数が小さい部分に集中した分布を示すのに対し、対数変換後は中央に集中する分布を示した。
市町村規模毎の保健婦配置目安数は対数変換した保健婦の現状を示していた。
結論
1)「21世紀の地域保健福祉対策に従事する保健婦の配置のあり方に関する研究」
介護保険業務における市区町村保健婦、保健所保健婦の果たす役割および配属された部門ごとに担う役割と介護保険制度が導入後の保健婦の活動の方向性が明らかになった。
2)「21世紀の地域保健福祉対策に従事する保健婦の配置のあり方に関する研究Ⅱ」
平成12年度以降の市町村の保健婦の配置の目安を、人口規模を勘案し、その市町村が目指す保健事業のレベルごとに提示した。

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