保健サービスの効果測定等の評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900799A
報告書区分
総括
研究課題名
保健サービスの効果測定等の評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
上村 隆元(慶応義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤千史(東京医科歯科大学医学部保健衛生学科)
  • 森口尚史(東京大学先端科学技術研究センター知的財産権大部門)
  • 大前和幸(慶応義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国でのQOL測定(健康効用値算出)に関する基盤研究として、カナダマクマスター大学開発のHUI(Health Utilities Index)ⅡⅢSU15Qの邦訳版を開発し、地域一般健康集団にフィールド調査を施行して判別妥当性(discriminative validity)、評価妥当性(evaluation validity),反応妥当性(responsiveness)の検証を行なう。日本で使用可能な効用換算式を検討、集団の健康調査環境を整備しわが国での医療政策上、費用効用分析の妥当な手法を整えることを目的とする。
研究方法
初年度に開発した質問票を用い、地域一般健康集団を対象に健康状態調査を行なう。QOLに関する指標としてHUIのシングルスコア(Vision、Hearing、Speech、Ambulation、Dexterity、Emotion、Cognition、Pain)、多属性効用値、VAS(Visual Analogue Scale)-QOLをカナダ版効用換算式を用いて算出し目的変数とする。説明変数となるバックグラウンド指標として年齢、性別、BMI、職業、学歴、居住地域、同居家族数、結婚歴、住居、年収、借入金の有無、就業状況、雇用状況、経営状況、通勤・通学時間、職場における人間関係、家庭における人間関係、慢性疾患数、慢性疾患の種類を調査し効用値との相関および階級別の平均値を検討する。また各説明変数の多属性効用値への寄与度を検討する。
結果と考察
3年計画の2年目として、地域一般健康集団3752例(41.0±14.3歳、17~90歳、♂2651名♀1101名)に自己記入方式で邦訳HUI MarkⅡⅢSU15Qで調査を行なった。調査票から質問主旨の理解度は概ね良好。シングルスコアごとにみるとEmotionを除き加齢による変化を反映しており、年齢判別妥当性は良好といえる。多属性効用値は年齢階級別に変化しない。VAS-QOLとの相関はr=0.44であった。バックグランド指標のうち結婚歴、職場および家庭人間関係、慢性疾患数・種類などは階級別に多属性効用値平均は妥当な判別性を示した。VASおよび多属性効用値を目的変数としたStepwise重回帰分析の結果、F値順に前者では慢性疾患個数、家族内人間関係、職域人間関係、性別、年齢、後者では職域人間関係、家族内人間関係、慢性疾患個数、学歴、性別、職業、年齢、結婚歴、年収が組み込まれた。VAS-QOLに対するシングルスコアの寄与度はF値10以上で高い順にEmotion、Pain、Cognition、Speechで、重相関係数は0.43であった。
結論
地域一般健康集団を対象にHUI邦訳版を用いて測定した効用値は、カナダ版効用換算式を用いてもほぼ妥当な判別妥当性と評価妥当性を示した。言語構成や寄与領域(Attributes)などの基本構造に問題は無いと考えられ、一般集団および他疾患群での調査結果を経てわが国での効用換算式が検討された後、十分実用性が検証されるものと考えられる。

公開日・更新日

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