文献情報
文献番号
199900792A
報告書区分
総括
研究課題名
地域保健における保健婦の機能・役割と資質向上に関する研究(総括研究報告)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
丸山 美知子(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
- 村山正子(富山医科薬科大学)
- 金子仁子(筑波大学医療技術短期大学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
保健婦の「教育・研修企画機能」及び「保健計画・施策化機能」「調査・研究機能」の資質向上を図るため実践的な指導方法を開発し指導指針を作成するとともに、「保健所保健婦の現任教育方法」に関する指針を作成することを目的とする。
研究方法
本研究は、研究目的に従って4つの分担研究を行った。
(1)保健婦の「教育・研修企画」機能の資質向上に関する研究
①研修企画担当保健婦6人に、研修企画上の問題や課題をヒアリングし分類・整理した。
②上記①を参考に、学識者、研修企画担当保健婦による会議を開催し、研修企画プロセス別に研修企画担当保健婦に求められる内容について、「ニーズ把握」「研修会の企画」「研修会の運営」「評価の実施」の4段階に分類し、81項目を作成した。
③都道府県保健所の研修企画担当保健婦各1人(472人)を対象に、研修企画プロセス81項目の実施状況、自己課題、強化したい能力、保健婦研修状況(平成11年度分)、各保健所の研修体制について郵送調査を行った。
④上記①~③の結果を踏まえ、研修企画担当保健婦のための実践マニュアルを作成した。
(2)保健婦の保健計画・施策化に関する指導方法の開発・指針作成
①前年度に作成した「保健計画・施策化能力に関する指導指針(案)」を3県のリーダー保健婦研修会の参加者40人に、事業化プロセスの実践内容及びスタッフ指導方法についてヒアリングをした。
②上記①を参考に、研究員の討議により、保健婦階層別の4段階能力評価表および保健計画・施策化能力育成のための職場内教育ガイドブックを作成した。
(3)保健所保健婦の現任教育方法の開発・指針作成
①9府県の中堅保健所保健婦288人を対象に郵送調査を行った。新任期から現在までに受けた現任教育方法、自己評価表について調査を行った。
②上記①を参考に、保健所保健婦の現任教育方法を検討するとともに、専門性を高めるための促進要因・阻害要因について検討した。
③上記①~②の結果を踏まえて、新任期の保健婦を中心とした保健所保健婦の現任教育方法のマニュアルを作成した。
(4)保健婦の調査・研究機能に関する指導指針の作成
①前年度に作成した指導指針を精選するため、H県保健所保健婦のうち調査・研究に関する研修受講後、大学教員等による調査・研究の個別指導を受け保健婦学術研究会に研究報告をした22ヵ所の保健所の保健婦、指導した保健婦、大学教員等を対象に前年度と同じ調査内容について郵送調査を行った。
②上記①を参考に、前年度の指針を見直し、一部を加筆した。
(1)保健婦の「教育・研修企画」機能の資質向上に関する研究
①研修企画担当保健婦6人に、研修企画上の問題や課題をヒアリングし分類・整理した。
②上記①を参考に、学識者、研修企画担当保健婦による会議を開催し、研修企画プロセス別に研修企画担当保健婦に求められる内容について、「ニーズ把握」「研修会の企画」「研修会の運営」「評価の実施」の4段階に分類し、81項目を作成した。
③都道府県保健所の研修企画担当保健婦各1人(472人)を対象に、研修企画プロセス81項目の実施状況、自己課題、強化したい能力、保健婦研修状況(平成11年度分)、各保健所の研修体制について郵送調査を行った。
④上記①~③の結果を踏まえ、研修企画担当保健婦のための実践マニュアルを作成した。
(2)保健婦の保健計画・施策化に関する指導方法の開発・指針作成
①前年度に作成した「保健計画・施策化能力に関する指導指針(案)」を3県のリーダー保健婦研修会の参加者40人に、事業化プロセスの実践内容及びスタッフ指導方法についてヒアリングをした。
②上記①を参考に、研究員の討議により、保健婦階層別の4段階能力評価表および保健計画・施策化能力育成のための職場内教育ガイドブックを作成した。
(3)保健所保健婦の現任教育方法の開発・指針作成
①9府県の中堅保健所保健婦288人を対象に郵送調査を行った。新任期から現在までに受けた現任教育方法、自己評価表について調査を行った。
②上記①を参考に、保健所保健婦の現任教育方法を検討するとともに、専門性を高めるための促進要因・阻害要因について検討した。
③上記①~②の結果を踏まえて、新任期の保健婦を中心とした保健所保健婦の現任教育方法のマニュアルを作成した。
(4)保健婦の調査・研究機能に関する指導指針の作成
①前年度に作成した指導指針を精選するため、H県保健所保健婦のうち調査・研究に関する研修受講後、大学教員等による調査・研究の個別指導を受け保健婦学術研究会に研究報告をした22ヵ所の保健所の保健婦、指導した保健婦、大学教員等を対象に前年度と同じ調査内容について郵送調査を行った。
②上記①を参考に、前年度の指針を見直し、一部を加筆した。
結果と考察
4つの分担研究結果及び考察は以下のとおりである。
(1)保健婦の「教育・研修企画」機能の資質向上に関する研究
保健・医療・福祉従事者の研修企画担当の専門部署がある保健所は約半数、研修企画委員会がある保健所は約2割であった。また、保健婦が専門部署や研修企画委員会に配属され、大きな役割を果たしていた。しかしスタッフ保健婦が多く、担当経験も1~2年で受講歴が半数以下であり、直属上司が事務職が多いことから研修受講体制や相談支援体制を整備する必要がある。
研修企画プロセスをみると、研修ニーズの把握からテーマ設定に至るプロセスの実施状況が低く、自己課題が多い項目であることから演習等を通して修得する必要がある。さらに研修方法、評価方法に関する知識・技術、教育課程に関する基礎的な理論や実践、研修生の基礎教育の実態、国・都道府県・市町村の保健・医療・福祉の動向などの外部情報を把握する必要があることが明らかになった。
これらのことを踏まえて、①研修企画のための研修プログラム内容及び検討事項、②研修企画プロセスにおける実施チェックリスト、③研修体制等の内容を盛り込んだ研修企画担当保健婦のための実践マニュアルを作成した。また、調査時に了解を得た保健所の保健婦研修状況を冊子にして全国保健所に研修情報として平成12年度に提供する計画である。
(2)保健婦の「保健計画・施策化」に関する指導方法の開発・指導指針
前年度に作成した「保健計画・施策化能力に関する指導指針」についてリーダー保健婦からヒアリングをした結果、職場の現任教育体制づくり、具体的な教育方法等に関して、指導者をサポートすることが必要と考えられた。また、マニュアル化のリスクも視野に入れて、個々の現場の特徴に基づいて柔軟に活用できるものを作成する必要性が示唆された。
これらのことから、事業化プロセスにおける実践能力評価表として施策化プロセス17項目に沿った保健婦階層別の4段階能力評価表を作成した。さらに、市町村の中堅保健婦を対象に上職位の保健婦が職場内教育(OJT)に活用できる職場内教育ガイドブック(保健計画・施策化能力育成)を作成した。
(3)保健所保健婦の現任教育方法の開発・指針作成
新任期保健婦の能力育成には、受け持ち地区の地区診断や事例検討、地区住民の生活からニーズを導く経験が有効であった。中堅保健婦の自己評価では、調整機能に比べ企画機能の評価が低く、市町村支援として健康づくり推進協議会・保健計画を「経験したことがない」ものが多くなった。保健所らしい活動や研究的な仕事の経験者群の自己評価得点が高かった。
これらのことから、教育期間として重要な新任期教育に注目した保健所保健婦の現任教育方法のマニュアル方法を作成した。
(4)保健婦の調査・研究機能に関する指導指針の作成
保健婦が調査・研究を実施するにあたって課題と思っていることは指導保健婦は調査目的・目標の設定、結果のまとめであった。スタッフ保健婦は目的・目標の設定、結果の分析・解釈をあげ、役立った指導・助言は結果の分析・解釈、調査の実際、結果のまとめと前年度とほぼ同様の結果を得た。また、指導助言内容や工夫については前年度より具体的であった。
これらのことから、前年度の指針を見直し、一部を加筆した。
(1)保健婦の「教育・研修企画」機能の資質向上に関する研究
保健・医療・福祉従事者の研修企画担当の専門部署がある保健所は約半数、研修企画委員会がある保健所は約2割であった。また、保健婦が専門部署や研修企画委員会に配属され、大きな役割を果たしていた。しかしスタッフ保健婦が多く、担当経験も1~2年で受講歴が半数以下であり、直属上司が事務職が多いことから研修受講体制や相談支援体制を整備する必要がある。
研修企画プロセスをみると、研修ニーズの把握からテーマ設定に至るプロセスの実施状況が低く、自己課題が多い項目であることから演習等を通して修得する必要がある。さらに研修方法、評価方法に関する知識・技術、教育課程に関する基礎的な理論や実践、研修生の基礎教育の実態、国・都道府県・市町村の保健・医療・福祉の動向などの外部情報を把握する必要があることが明らかになった。
これらのことを踏まえて、①研修企画のための研修プログラム内容及び検討事項、②研修企画プロセスにおける実施チェックリスト、③研修体制等の内容を盛り込んだ研修企画担当保健婦のための実践マニュアルを作成した。また、調査時に了解を得た保健所の保健婦研修状況を冊子にして全国保健所に研修情報として平成12年度に提供する計画である。
(2)保健婦の「保健計画・施策化」に関する指導方法の開発・指導指針
前年度に作成した「保健計画・施策化能力に関する指導指針」についてリーダー保健婦からヒアリングをした結果、職場の現任教育体制づくり、具体的な教育方法等に関して、指導者をサポートすることが必要と考えられた。また、マニュアル化のリスクも視野に入れて、個々の現場の特徴に基づいて柔軟に活用できるものを作成する必要性が示唆された。
これらのことから、事業化プロセスにおける実践能力評価表として施策化プロセス17項目に沿った保健婦階層別の4段階能力評価表を作成した。さらに、市町村の中堅保健婦を対象に上職位の保健婦が職場内教育(OJT)に活用できる職場内教育ガイドブック(保健計画・施策化能力育成)を作成した。
(3)保健所保健婦の現任教育方法の開発・指針作成
新任期保健婦の能力育成には、受け持ち地区の地区診断や事例検討、地区住民の生活からニーズを導く経験が有効であった。中堅保健婦の自己評価では、調整機能に比べ企画機能の評価が低く、市町村支援として健康づくり推進協議会・保健計画を「経験したことがない」ものが多くなった。保健所らしい活動や研究的な仕事の経験者群の自己評価得点が高かった。
これらのことから、教育期間として重要な新任期教育に注目した保健所保健婦の現任教育方法のマニュアル方法を作成した。
(4)保健婦の調査・研究機能に関する指導指針の作成
保健婦が調査・研究を実施するにあたって課題と思っていることは指導保健婦は調査目的・目標の設定、結果のまとめであった。スタッフ保健婦は目的・目標の設定、結果の分析・解釈をあげ、役立った指導・助言は結果の分析・解釈、調査の実際、結果のまとめと前年度とほぼ同様の結果を得た。また、指導助言内容や工夫については前年度より具体的であった。
これらのことから、前年度の指針を見直し、一部を加筆した。
結論
平成12年3月の地域保健法の基本指針の改正を目指して研修体制を整備する必要がある。
1.保健所の保健・医療・福祉従事者の研修企画担当の専門部署及び研修企画委員会の設置を促進する。
2.市町村、関係機関を含めた研修体制の充実と役割分担を明確化にする。
3.保健婦研修の責任所在を明らかにする。
4.研修企画の大学・研究所等研究機関による支援体制について都道府県レベルで調整する。
5.保健婦機能の資質向上のため、①研修企画担当保健婦のための実践マニュア、②保健計画・施策化能力育成のための職場内教育ガイドブック及び事業化プロセスにおける実践力評価表、③保健所保健婦の専門性育成のための現任教育方法マニュアルを作成した。
6.保健婦の研修企画、調査・研究等の現任教育において大学への期待は大きいが、大学教員の調査回答は低かった。今後は、都道府県立の看護系大学等を中心として、保健婦の現任教育に果たす大学等の役割に関する研究を独自に実施する必要がある。
1.保健所の保健・医療・福祉従事者の研修企画担当の専門部署及び研修企画委員会の設置を促進する。
2.市町村、関係機関を含めた研修体制の充実と役割分担を明確化にする。
3.保健婦研修の責任所在を明らかにする。
4.研修企画の大学・研究所等研究機関による支援体制について都道府県レベルで調整する。
5.保健婦機能の資質向上のため、①研修企画担当保健婦のための実践マニュア、②保健計画・施策化能力育成のための職場内教育ガイドブック及び事業化プロセスにおける実践力評価表、③保健所保健婦の専門性育成のための現任教育方法マニュアルを作成した。
6.保健婦の研修企画、調査・研究等の現任教育において大学への期待は大きいが、大学教員の調査回答は低かった。今後は、都道府県立の看護系大学等を中心として、保健婦の現任教育に果たす大学等の役割に関する研究を独自に実施する必要がある。
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