医薬品の適正使用の推進を目的とした医薬品情報交換方策に関する研究

文献情報

文献番号
199900759A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品の適正使用の推進を目的とした医薬品情報交換方策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
武田 裕(大阪大学医学部附属病院医療情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 黒川信夫(大阪大学医学部附属病院薬剤部)
  • 翁健(大阪府保健衛生部薬務課)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「行政」「医療機関」「製薬企業」「一般消費者(患者)」間の「医薬品情報の交換方策」の確立により『医療機関・製薬企業の「医薬品情報」への積極的な関与』、『一般消費者(患者)自らの「医療」への積極的な関与』を促進し、「医薬品適正使用」の推進を図る。
研究方法
本研究班は、上記に掲げた各方面の協力研究者によって構成されており、システム部会、情報部会及び行政部会の3部会を構成している。システム部会は、主として、大阪府が平成10年度に構築した「大阪府医薬品安全性情報交換システム」のパイロットスタディ等に本研究班が参画し、本システムの稼働性能等について研究することによって、「医療現場で真に活用できる医薬品情報を含む地域医療情報ネットワークの構築」などについて検討する。情報部会は、主として、「患者から見た医薬品情報提供の在り方」「医薬品情報収集・提供における薬剤師の役割」などについて検討する。行政部会は、主として、「医薬品安全対策業務における地方行政の役割」「医薬品情報収集・提供において生じる法的問題及び医薬品情報の法的位置付け等に関する法的側面からの研究」などについて検討する。3部会で検討された研究結果は、全体部会で評価されるとともに、情報部会及び行政部会での研究結果は、システム部会での「システム及びネットワーク構築」に反映させるなど、各部会での研究内容を「マトリックス化」してとりまとめる。
結果と考察
1)今年度システム部会では、平成11年2月1日から6月30日まで実施したパイロットスタディ結果を基にシステムのバージョンアップを行うとともに、本システムに使用されている医薬品副作用用語辞書(J-ART)について検討を加え今後導入される「MedDRA/J」への対応についての調査研究を行った。次回バージョンアップ時の「MedDRA/J対応」については、ICHでの合意が必要となることが明確になった一方で、MedDRA自身の持つ問題点が把握できた。2)行政部会では、「医薬品安全対策業務における地方行政の役割」を検討するとともに、昨年度に引き続いて「医薬品情報収集・提供において生じる法的問題及び医薬品情報の法的位置付け等に関する法的側面からの研究」を行った。医薬品安全対策業務は、今後も承認権限を有する国主導型で行われることが適切であるが、国との役割を明確にした上で本業務における地方庁でのより積極的な関与が必要であるという結果が得られた。また、副作用情報を含む医薬品情報収集・提供において生じる患者のプライバシー保護と情報公開(府の公開条例を含む)への対応については「患者情報の保護」「インフォームド・コンセントの範囲」「営業権侵害への可能性」等について検討した。その結果、「大阪府医薬品安全性情報交換システム利用承認基準等の改定」「本システム使用説明書への患者情報保護に関する追記」等を行った。3)情報部会では、昨年度の研究結果を踏まえ本システムを真に活用できるものとするために不可欠な薬剤師の医薬品情報収集・提供業務における役割と患者への情報提供の在り方などを具体的に検討する目的で(社)大阪府病院薬剤師会の協力の下に府内30施設の病院薬剤部(薬局)に対し「病院内での薬剤部(薬局)における医薬品情報の一元的管理状況」「患者への情報提供状況」「病院薬剤師の意識調査」を、また、(社)大阪府薬剤師会の協力の下に全基準薬局1408店舗に対し「基準薬局での医薬品情報収集・提供及び患者への情報提供に関する状況」についてアンケート調査を行った。この結果、大半の病院薬剤部では医薬品情報の一元的管理が実施されており、勤務してい
る薬剤師の大半は各医療機関での現状を把握した上で、より適切な患者への情報提供の在り方を模索していることが分かった。また、基準薬局での情報収集・提供業務についても殆どの薬局では薬局の現状を踏まえた中で収集・提供が実施されており、患者への情報提供についても多数の基準薬局では保険制度の観点から病院の外来患者への情報提供とほぼ同様の情報提供が行われていることなどが分かった。
結論
最近の医療事故や医療訴訟等の件数の増加、「個人情報保護法の設置」などを背景に、医薬品情報収集・提供については医療関係者等から種々の問題点が提示されているが、これら問題点を解決し、真に医療現場で活用できる医薬品情報収集・提供体制を構築するには1)法的検討の実施とその整備、2)国との情報の共有化、3)ハッカー対策の充実、4)地方庁における具体的な安全対策業務の検討、5)患者への医薬品情報提供の在り方に関する一層の検討などが不可欠であり、この体制を構築することが医薬品適正使用を推進し、実際的な健康危機管理体制を構築することになる。

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