化学物質の循環・廃棄過程における制御方策に関する研究

文献情報

文献番号
199900707A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の循環・廃棄過程における制御方策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
八木 美雄(財団法人廃棄物研究財団)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
-
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①家電・OA機器等に係る化学物質に関する調査について:家電・OA機器等には、化学物質や有害な金属類が部品や部材に使用されている。家電製品等が廃棄又はリサイクルの過程で使用されている化学物質等が環境中に排出される可能性が指摘されている。化学物質・有害金属類の環境への排出負荷を制御するためには、家電・OA機器の部品や部材に使用されているの化学物質等の種類と含有量等を明らかにする必要がある。本研究ではこれらの化学物質等が組み立て⇒製品(使用)⇒廃棄/再利用の過程で環境への排出(循環)動態を検討し、制御・削減方法を研究する。
本年度は、物質フローについて既存知見やヒアリング等による情報収集により把握し、今後の制御の有り方を検討するための基礎資料とすることを目的として実施する。
②廃木材等から環境排出形態の把握に関する基礎的研究について:住宅建て替えによる廃木材発生量の増加が見込まれており、またその廃木材中に塗布あるいは含浸されている防腐剤において化学物質による環境汚染が懸念されている。こういった状況の中、循環型社会への移行という視点から、廃木材を資源として有効利用することが肝要である。廃木材の循環過程ならびに廃棄過程における化学物質の制御を図るために、本年度は廃木材の発生動態調査と燃焼試験を行った。
③化学物質の移動・排出実態に関する基礎調査について:本調査研究の対象としている家電、廃木材等における化学物質の消費・排出を位置付けるためには、対象とする化学物質が、我が国全体で他の製品等も含めてどの程度消費され、廃棄されているのかを把握しておく必要がある。
製造工程等から排ガス、廃水、廃棄物による環境への排出、又製品に移行しているこれらの化学物質が、トータルにどのような形で環境に移動・排出しているかを把握し、産業廃棄物としての廃棄、製品を通じた廃棄のウエイトを位置付けることが可能になろう。本調査では、それら化学物質の全体の循環・廃棄フローの全体像を把握し、又廃棄物(産業廃棄物と製品廃棄物)を通じた環境への負荷実態について把握することを目的に、化学物質の消費実態に関する情報収集やPRTRによる循環・廃棄の把握の方向性に関する情報を収集するとともに、化学物質による環境負荷全体の中で家電製品と廃木材による負荷が占める割合、その重要性を検討する。
研究方法
①について:家電製品リサイクル法対象であるテレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機の4品目に、製品のライフサイクルが短く、使用量が増加しているパソコン及び携帯電話を加え、対象品目を計6品目とした。
〇家電・OA機器等に使用されている化学物質のうち、有害性の判定基準等、内外で問題になっている物質等を考慮して検討対象物質を選定した結果、有機系臭素化合物(Br)、塩化ビニール、Cl、Cr、As、Ni、Pb、Cu、Cd、Be、Sb等)製品開発やLCA等で検討対象としている物質の実態などを文献等で把握し、その物質も検討対象とした。
〇検討対象とする家電・OA機器で使用されている検討対象化学物質・金属類について文献情報を中心にデータの収集を行い、把握・整理し、文献で把握できない部分に関しては、関係団体又は先進的に取り組んでいるメーカーに対してヒアリングを実施した。
〇製品種類別に製造台数等の統計資料より、検討対象化学物質等の消費総量(含有量)を推定し、製品種類別のストックと排出実態、循環・処理フローを文献、統計資料、ヒアリング等により調査した。特に家電リサイクル法対象4品目以外の機器(パソコン及び携帯電話)については、廃棄に係るフローについて関係団体へのヒアリングを行った。
〇製品種類別に検討対象の化学物質・金属類の使用の実態、処理に伴う排出特性を考慮して、推定の方法を検討した上で排出実態を想定した。この推定方法を設定するにあたり、プロセスでの物質の移動、リリースについて事例的な検討を行い、原理的に観点から物質の移動について想定し、その点をヒアリングなどにより裏付けを取った。
〇家電製品やOA機器類の化学物質・金属類の使用削減や転換について検討する動向がある。例えば、臭素系の難燃材を使用しないプラスチック、鉛やクロムの使用削減等などが挙げられる。これらの動きについて文献情報を中心に整理した。
②について:廃木材の廃棄過程調査とし、粗大ごみとしての廃木材の発生動態を把握するため、CCA等の無機系薬剤やペンタクロロフェノール等の有機系薬剤で処理された木材に含まれるこれら化学物質に着目し、破砕処理施設前後での各種廃木材試料中の含有量を調査した。また、廃木材を対象とした溶出試験を行い、リスク評価の基礎となる水系への化学物質の環境進入を調査した。
〇廃木材を焼却処理するにあたり、防腐剤として重金属類やクレオソート等の有機系薬剤を含む廃木材の燃焼過程に焦点をあて、これら種々の化学物質ならびに副生物の挙動を調査し、リスク評価ならびに制御方策立案の前提となる基礎的知見を得ることを目的として燃焼試験を行った。特に、燃焼排ガスによる気系への環境進入を想定し、排ガス中の重金属類、PCP,PAH,HCB,PCDDs/DFs,PCB,Co-PCBs濃度を測定した。また、残留性有機化合物の燃焼過程における生成・分解を把握するため、燃焼試料中ならびに焼却残□中の各種化学物質の濃度を測定した。
③について:「①家電・OA機器等に係る化学物質に関する調査」で設定した検討対象物質に関する基礎的な情報、毒性や環境中の検出状況について文献調査し、我が国全体でどのような利用実態となっているか、統計データ、文献などから概略をまとめた。PRTR法の概要、PRTRの実施内容、パイロット調査の実施状況等について文献等を整理し、環境庁が実施した神奈川県や愛知県でのPRTRのパイロット事業の結果をベースに業種別の対象化学物質の消費・排出・製品移行等の実態を把握した。検討対象物質のPRTRにおけるウエイトを把握するため、検討対象物質以外にPRTRにおいて排出量、環境負荷が大きいと目される物質についてその製品への移行・排出についてもレビューした。
〇検討対象物質ごとに、使用している業種、製造工程、廃水・排ガス、産業廃棄物、製品含有による移動のパターンについて整理する。一方、業種ごとに化学物質の排出・移動の特性・傾向を解析し、業種ごとの移動量・排出量を我が国全体に拡大推計する手法を検討した。特に電気製品・精密機械製品製造業での実態について出来るだけ詳細に把握し、家電・OA機器等での化学物質の使用等のウエイトを想定する。前項のPRTRに関する調査結果と併せ、検討対象化学物質等の移動・排出実態の全体像と、その循環・廃棄の過程での環境への負荷のウエイトを把握する。
結果と考察
①について:家電・OA機器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、パソコン、携帯電話)における製品毎の大まかな使用科学物質を把握し、使用実態をまとめた。例えば、テレビのキャビネットについては難燃剤として臭素系化合物やアンチモンが使用されており、テレビの廃棄とともに分解され、プラスチックを除去し更に破砕選別し鉄、銅、アルミを中質する。次に製品別の排出・処理・リサイクル・処分フローを整理した。鉛、六価クロム、水銀、ハロゲン元素(塩素、臭素)、塩化ビニール、難燃性プラスチックについては削減・代替対策が進んでおり、その動向を調査した。
②について:50本の廃木材をサンプリングし、CCA系、有機系等を大まかに分類し、蛍光X線分析で塩素等の括りが可能であるかを検討した。CCA系薬剤を含む廃木材は表面が緑色で防腐処理の刻印がある等特徴があり目視でスクリーニングすることが可能であった。
〇重金属類含有量を分析した結果、CCA系薬剤を含む廃木材はCrが最高で1300mg/kgと高かった。一般木材でもホウ素が多いもので720mg/kg検出されるものもあった。残留有機汚染物質類に関する試験において、有機系薬剤を含む廃木材はPAHsの中でもNaphthalene、Phenanthrene、Pyrene、Chryseneが高かった。有機系薬剤を含む廃木材中のDXN含有量は最高で29pg-TEQ/g、次に18pg-TEQ/gという値であった。溶出試験においてCCA系薬剤を含む廃木材、有機系薬剤を含む廃木材ともホウ素が高い値を示した。
〇廃木材の燃焼試験では、燃焼条件としてはキルン回転型一次燃焼炉(能力0.5~1.0kg/hr) 二次燃焼炉2秒設定、排ガス冷却炉出口で200℃2秒に設定し、これらの個所から焼却主灰、配管堆積物、活性炭出口としてサンプリングした。その結果、CCA系薬剤を含む廃木材は有機系薬剤を含む廃木材に比べ、ダイオキシン類の毒性等量が高く、多環芳香族、PHAは低かった。また排ガス系ではPAHが高く、リグニン系を燃やした時には留意する必要がある。
③について:家電・OA機器と廃木材に使用されている化学物質の種類は多様であり、使用量は、例えば家電・OA機器では微量である。また大手家電メーカーは、化学物質の使用量削減・代替物質への転換に向け動き始めており、今後もこの流れは加速していくものと推定される。
〇化学物質の使用量は製品1台に対して微量であるが、毒性等の点を考えれば環境への負荷や人への暴露といった危険性が懸念される。また、家電・OA機器以外の製品にも化学物質は使用されている。そのため、まず他製品(他業種)における化学物質の循環・廃棄過程をより詳細に把握することが望まれる。
結論
今年度は、家電・OA機器及び廃木材に使用されている化学物質を中心に取りまとめたが、化学物質に係る動向(循環・廃棄過程、毒性、業界毎の対策)をより広範かつ詳細に把握する必要がある。そのため次年度以降は、対象業種、対象化学物質の範囲を広げながら化学物質の制御方策の検討に資する情報収集・整理を行うとともに、それをもとに化学物質の制御方策のあり方について提言していく必要がある。

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