震災時水道施設復旧支援システム開発研究

文献情報

文献番号
199900705A
報告書区分
総括
研究課題名
震災時水道施設復旧支援システム開発研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 正弘(財団法人水道技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
24,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本における水道の普及率は96%を超え、欠くことのできない社会基盤施設となっている。このような状況で地震が発生すれば、水道施設は甚大な被害を受けることが想定される。平成8年度から3か年で実施された「地震による水道被害の予測および探査に関する技術開発研究」の成果として、震災時に水道施設が受ける被害を予測することが可能となった。しかし、最終的に水道事業体は、施設の耐震化及び更新、並びに地震発生を想定した応急復旧・応急給水等の計画立案や、地震発生時の水道施設被災状況に応じた迅速な応急復旧・応急給水を実施しなければならない。特に、管網を形成している配水管では、上流側からの復旧や口径の大小による復旧が効率的であるとは限らない。そのためには、施設被害予測結果だけで対応することは不可能であり水理的要素を考慮した応急復旧・応急給水までの手法を明確にする必要がある。
本研究は、施設被害予測結果をもとにして、合理的に断水人口を予測し、最も効率的・効果的な応急復旧・応急給水の実施計画策定を可能とする震災時水道施設復旧支援システムの構築と、空管、満水管に併用可能な漏水・断水探知技術の研究及び管路の漏水・断水自動検知システムの開発を行うことを目的とする。
研究方法
本研究は産学官の共同プロジェクトとして実施し、その実施に当たっては学識者、水道事業体及び民間企業からなる「震災時水道施設復旧支援システム開発研究検討委員会」、「企業幹事会」及び「影響度予測システム研究WG」「被害探査技術研究WG」「復旧支援システム開発研究WG」を設置し、種々の討議を重ねながら研究開発を推進しているところである。本研究は平成11年度から平成13年度までの3か年で行い、初年度である本年度は、研究開発方針の立案、復旧支援システムの基本仕様作成、効率的探査技術に関する研究等について検討し、取りまとめを行った。
結果と考察
1.影響度予測システム研究
1)全体計画の作成
「断水人口シミュレーション」「応急復旧シミュレーション」「応急給水シミュレーション」からなる影響度予測システムに関し内容を検討し、3か年の研究内容をまとめた。
2)事業体ヒアリング
本共同研究に参加している6水道事業体に対して震災時の対策・対応に関してヒアリングを行い、影響度予測システムに反映すべき事項について整理、検討を行った。
3)各シミュレーションに関する機能検討
「断水人口シミュレーション」「応急復旧シミュレーション」「応急給水シミュレーション」がそれぞれ具備しておくべき機能を(財)水道技術研究センターの『地震による水道被害の予測および探査に関する技術開発研究報告書(平成10年度)』の影響度予測コンセプトと事業体ヒアリング結果等をもとに検討した。その際、各シミュレーションが具備すべき機能と各シミュレーション間の関連も含めて情報の入力、計算方法、出力の視点から整理を行った。特に、断水人口シミュレーションについては、被害予測システムの出力結果を入力条件とし、その出力を応急復旧シミュレーション、応急給水シミュレーションの入力とすることを前提に検討した。
また、各シミュレーション間の関連を総合的に評価するため、それぞれの機能と各事業体の施策支援との関連について検討した。ここでの施策としては、平時(震災前)、混乱期、復旧期の各局面を想定した「影響度・探知技術を利用した計画策定」、「緊急措置計画・復旧計画(戦略)立案」、「復旧・給水計画の実施」とした。その際、シナリオ分析(震災時施策の分析)を意識し、そのシナリオの例示も行った。
4)シミュレーションモデルの機能整理
ヒアリング調査結果をもとに、シミュレーションモデルの構築を行う際必要となる要求機能を整理した。これは次年度以降のプロトタイプシステム作成時の基本仕様決定の際に基礎資料となるものである。
5)考察
「断水人口シミュレーション」「応急復旧シミュレーション」「応急給水シミュレーション」からなる影響度予測システムに関してそれぞれが具備すべき機能、入力情報、計算方法及び出力について整理を行い、システム全体の骨格が明確となった。次年度はこれらシミュレーションシステムの詳細仕様の作成と各シミュレーション間の関連付けについて検討を進める。
2.被害探査技術研究
1)全体計画の検討
平成10年度までの震災時の空管を対象とした探知技術開発の成果をふまえて、満水時にも適用可能な技術内容を検討し、3年間の研究実施計画を作成した。
2)アクティブ音波注入法による被害探査の基礎実験
満水状態を想定した実験設備を用意し、水中マイク、水中スピーカの特性確認のため音波特性及び伝播特性に関する基礎実験を行い、データ収集を実施した。
3)音圧水圧測定による漏水監視基礎実験方法の検討
管路内に音圧・水圧測定センサーを設置し、音圧および水圧値をデータ解析することで、漏水の有無を推定する漏水判定技術の実験方法について検討した。
4)震災復旧時の効率的管路状況把握手法の研究
平常時の漏水調査に用いられている技術が震災発生後の復旧プロセスでそのまま通用するか、また震災後の管路被害実態を把握する従来技術の事例と最新の技術動向を調べる目的で水道事業体のヒアリング調査を実施した。調査結果に基づき、現状での水道事業体のニーズを踏まえ、復旧プロセスに対応した従来技術の適用可能性の評価と、震災時における水道管路の被害探査を効率化する要因の整理を行った。
5)考察
今年度は被害探査技術研究として平常時に用いられている漏水調査技術の特徴、実態及び動向を調査し、震災時の管種別、応急復旧段階別の適用性について明確化することができた。今後はこの漏水・破断検知手法のリアルタイム化、音圧・水圧による漏水発生判定の手法及び音響法による漏水探知機のアルゴリズムについて研究を進める。
結論
平成11年度は3か年計画の初年度ということで研究の全体方針の立案と復旧支援システム全体の骨格を明確化すると共に、システムとして具備すべき内容を把握する目的で水道事業体へのヒヤリング調査を実施し、有効な知見を得た。また、被害探査技術については平常時に使用されている漏水・破断探知手法について水道事業体へヒヤリング調査を行い、震災時の被害探査に求められる技術や適用性について整理を行い、被災時の被害探査・監視体制のあり方について検討を進めた。また、これと平行して音圧・水圧を利用した漏水監視技術の基礎調査と音響法による満水時の漏水探知技術について、基礎実験を実施し、有効な基礎データを得ることができた。

公開日・更新日

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