廃棄物の適正処理及びリサイクルに関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900660A
報告書区分
総括
研究課題名
廃棄物の適正処理及びリサイクルに関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
八木 美雄(財団法人廃棄物研究財団)
研究分担者(所属機関)
  • 古市 徹(北海道大学大学院工学研究科)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
不法投棄現場を含む周辺環境の長期的な安全性の確保等を考慮するにあたり、早期に汚染診断修復システムを確立させ、その中の調査技術の充実、原状回復修復技術のオンサイトでの適用性を検討する必要がある。本研究は、汚染診断修復計画の検証,見直し、汚染修復方策,数値シミュレーションについての研究を行い、汚染診断修復システムの確立を図ることを目的とした。
また、遮断型最終処分場の廃止に係る基本的な概念の整理と手順の検討を行い、実際の最終処分場の埋立物の無害化,構造物の補強対策について研究し、廃止を適正に推進するため基礎的資料の作成を目的とした。
研究方法
本研究は、汚染診断修復システムの確立に向けて、K市における廃棄物不法投棄現場を対象に汚染診断修復計画の手順を適用させ、汚染部位,汚染物質,汚染の拡散状況について現状を把握し、調査手法を検証し、システム構築した。また、現場における汚染土壌,汚染地下水の浄化方法を検討し、室内浄化実験を行い、技術の適用性,浄化性能,処理条件,処理効率等基礎データについて研究を行った。さらに、土壌・地下水汚染診断システムにおけるシミュレーションについては、実汚染現場を対象として数値シミュレーションの適用手順を示すと共に、地下水流れ場のモデル化,地下水汚染拡散防止対策及び浄化対策による修復の効率性の検討を行い、修復技術選択を数値シミュレーションを用いて理論づけした。
遮断型最終処分場の無害化検討調査においては、薬剤による無害化実証実験の実施による無害化方策の検証,処分槽の補強方策について検討を行い、補強方策,起こり得る自然災害への対応事項を全ての処分場について検討し、パターン化し、廃止作業の基礎資料として技術的な研究を実施した。
結果と考察
汚染診断修復システムについては、実際の汚染現場において、汚染状況調査手法の適用,土壌・地下水汚染シミュレーションの構築,室内浄化実験の実施を行い、調査手法の進め方の適用性,課題等、シミュレーションの役割と効果,修復計画に関する研究を行い、汚染状況調査手法,リスク評価方法,修復方法の選定,修復の実施,措置後のモニタリング手法等からなるシステムを構築した。
汚染状況調査は、汚染形態の把握を行い、汚染対策が緊急を要することを示した。また、汚染範囲の特定化に関し地中レーダー法により有害物の広がりを把握した。調査の実施にあたっては、敷地境界を越えて汚染が拡散する場合、どの範囲まで拡散しているかを排出原者以外の土地において調査を行う必要がある。外部地権者の調査同意の取得が困難で、調査が迅速に進展しない場合があり、有害物の汚染形態を的確に把握するためには広域的な調査連絡体制の確立が必要と考える。また、現地の状況を把握する調査事項(手法,項目,方法)と、実証試験のための必要となる条件,シミュレーションの構築に必要な条件が異なることに起因する数度にわたる調査の実施を防止し、各目的に対する効率的,総合的調査フローを立案する必要がある。
汚染の修復方法に関しては、廃棄物層内水質浄化に対し活性汚泥処理を用いた水処理法を、周辺汚染土壌浄化に対し間接加熱処理法をそれぞれ適用し、浄化性能,処理条件,処理効率等基礎データについて研究を行った。その結果、各方法が汚染の浄化に対し有効な手法であることが示された。
シミュレーションに関しては、土壌・地下水汚染修復対策の検討として、汚染の現状把握,将来予測,そして修復効果の比較を実際の汚染現場を対象にモデルを構築し、シミュレーションの効果を示すことができた。今後、遮水壁と揚水井戸を具体的に設計するための(設計段階)揚水試験等の条件を調査により決定する必要がある。また、汚染源の浄化、周辺環境の浄化も視野にいれた調査を行い、また数値シミュレーションを行うことによって跡地利用まで考慮した恒久対策を検討する必要がある。本研究は、K市の安定型処分場に管理型廃棄物及び廃油等が不法投棄された現場を対象に検討してきたが、今後、本研究事例は本格的な対策が施され、環境保全が図られるものと期待される。しかし、近年は新たな不法投棄が急増しており、新しいタイプの事例も多く発生していると考えられ、できるだけ多くの事例タイプを検証し、それぞれに対応できるシステムが開発されることが必要と考えられる。
遮断型最終処分場埋立物無害化検討調査については、遮断型最終処分場の廃止に係る基本的な概念は、既存資料調査,現地調査を行い検討した結果、ステージ1「内容物が有する環境リスクの低減化」,ステージ2「遮断槽構造の補強」,ステージ3「自然的条件への対応」の3ステージをクリアする方策が妥当と考える。
現地調査によって日本全国に設置されている遮断型最終処分場は、立地条件,周辺環境,埋立物質,施設の施工状況等についてある程度類型化され、埋立物は多くの施設で缶,袋等、容器に梱包されたまま処分されている結果が得られ、無害化技術の適用は非常に困難を要すると考えられる。実際に不溶化に関する研究を行った結果、3施設について無害化技術の適用が可能と判断され、不溶化方策を策定した。埋立物の無害化に関しては、遮断型最終処分場の類型化を行い、類型化した処分場グループについて無害化方策に要する費用を算出した結果、薬剤を用いた槽内処理で14~7.9万円/m3、廃棄物を取り出して無害化処理しいれ直す方策で16万円~6.5万円/m3、資源化方策で6.7万円/m3、撤去(管理型処分)で10万円/m3程度の対策費が必要となった。今後は、各施設個別に対する不溶化剤の選定,薬剤の添加量,混合方法,対策費用について検討する必要がある。
既設遮断型最終処分場の施工状況は施設により様々で、良好な施設から構造上問題点を有する施設があり、立地環境上,災害を受け得る状況も危惧された。廃止を前提とする場合は、再度構造安定計算を個別に行い、安全性を判断する必要があり、旧共同命令に満たない施設は少なくとも同基準をクリアする必要があると考える。
既設遮断型最終処分場の立地状況は様々であり、埋立地内,河川敷,丘陵地,山間地,傾斜地,地下水面が高い地区等が明らかとなった。廃止を行うには、処分場周辺の地形特性を把握し、起こり得る自然災害を配慮した構造強化を図る必要がある。自然災害に対し検討すべき内容は、洪水・地震・崖崩れに伴う廃棄物流出及び遮断槽の破壊防止,軟弱地盤における遮断槽の不等沈下防止,地下水・塩水の上昇に伴うコンクリート部の劣化防止が挙げられ、個別に災害の可能性を判断し、必要な対策を講ずる必要がある。
結論
廃棄物の不適正保管,不適正処分及び不法投棄等により土壌,地下水等に環境汚染が発生する現場は、汚染源の位置,量,流出・揮発拡散形態が様々であるとともに、周辺の環境条件も異なり、対策に急を要する場合が多いと考えられる。
不法投棄現場を含む周辺環境の長期的な安全性の確保等を考慮するにあたり、早期に本汚染診断修復システムを適用させ、その中の調査技術の充実,原状回復修復技術のオンサイトでの適用性を検討する必要があるが、現場の状況は各サイトにおいて様々であり、効果的な調査技術,修復技術としての技術選択を行い、代替案を構築する必要がある。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-