微量栄養素(ビタミン、ミネラル)の安全性評価研究

文献情報

文献番号
199900650A
報告書区分
総括
研究課題名
微量栄養素(ビタミン、ミネラル)の安全性評価研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
五十嵐 脩(お茶の水女子大学)
研究分担者(所属機関)
  • 糸川嘉則(福井県立大学)
  • 美濃 眞(清恵会病院)
  • 湯川 進(和歌山県立医科大学)
  • 岡野登志夫(神戸薬科大学)
  • 藤原葉子(お茶の水女子大学)
  • 玉井 浩(大阪医科大学)
  • 鈴木和春(東京農業大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
14,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国民の健康や栄養に対する関心が高まる中で、いわゆる栄養補助食品やOTCなどの医薬品などへの需要は高いものがある。その中では、ビタミン、ミネラルへの関心が特に高いことが注目に値する。これらのビタミン、ミネラルを含有する製品には通常の栄養所要量程度の範囲までの含量の製品から、もっと高い含量のビタミンやミネラルを含む製品も市販されている。しかし、全てのビタミン、ミネラルについて許容上限摂取量(UL)が決められている訳ではない。本年度の本研究では、ヒトへのビタミンE投与によるULの策定、同様なDについての研究、ビタミンE同族体であるγートコフェロールについての代謝研究、高齢者におけるビタミンCとビタミンE相互作用、マグネシウム欠乏時の過酸化脂質の産生増加とその原因の解明、血中微量元素であるセレンとモリブデンの測定法の確立などを行い、従来の研究と併せて、ビタミン、ミネラルのULの策定と策定への準備段階のデータ作成を行った。
研究方法
1.ヒトへの投与試験
(1).ビタミンE
ビタミンEについては、成人男子と女子についてd-αートコフェロールを800mg/日を最大6週間までの投与を行い、また、未熟児についても安全性評価を行った。また、ビタミンEとCの相互作用を高齢者について検討し、両ビタミンの相互作用を確認した。
(2).ビタミンD
成人女子について、100μg、200μg/日の投与を6週間行い、血液学的な指標からその安全性評価を行い、ULの設定試みた。
2.動物での研究
ビタミンCの関連化合物であるエリソルビン酸の安全性評価、マグネシウム欠乏時の過酸化脂質の産生の増加、鉄、銅などの過剰蓄積への効果などを検討した。
3.ヒト及び動物の血液中の微量元素の測定法
血液中の微量元素の定量法には問題点が多いため、信頼できるデータを得るための定量法の検討を行った。
4.文献学的な検討
昨年度公表された日本人の栄養所要量(食事摂取基準)の問題点などについて最初に検討し、次いで色々なビタミン、ミネラルのULの設定に関する文献的な検討を行った。また、アメリカで公表された一部のビタミン、ミネラルについてのULと我々の検討との比較を行った。
結果と考察
(1).ビタミンEのULの設定と未熟児での検討
成人について、男子と女子についてd-αートコフェロールのULの設定を投与試験から試みた。その結果、血液中の上記d-αートコフェロール)の濃度及び血液中の諸指標から、d-αートコフェロールのULは男子で600mg/日、男子で800mg/日とすることが妥当と判断された。これは、従来の実験結果も考慮して決めた。なお、d-γートコフェロールの動物での代謝研究より、このビタミンEは急速に胆汁と尿中に排泄されることが分かった。しかし、これらビタミンE同族体のULを決定するには至らなかった。
(2).ビタミンDのULの設定
成人女子についての6週間にわたる投与試験から、そのULは200μg/日と決められた。
(3).ビタミンCの関連化合物であるエリソルビン酸の安全性は確認されたが、UL値の設定には至らなかった。
(4).マグネシウム欠乏時に鉄と銅の肝臓中の濃度が増加し、過酸化脂質の産生を増加させ、ビタミンEやCなどの抗酸化ビタミンの必要量が増すことが認められた。
(5).高齢者では、ビタミンEとCがその濃度を維持する上で、相互作用することが認められた。
(6).血液中セレン、モリブデンの濃度測定法が確立された。
結論
以上述べたように、本年度は本研究の2年度目に当たり、ビタミンD、Eについてヒトでの実験に基づき、その許容上限摂取量の設定を行った。また、未熟児についてもビタミンEの安全性について試験した。また、ビタミンE同族体については、代謝研究から許容上限摂取量の設定を試みたが、設定には至らなかった。なお、ビタミンCの関連化合物であるエリソルビンについては従来の摂取基準でよいことが確かめられた。なお、今回改定された日本人のの食事摂取基準においては、多くのビタミンについて当量換算で表示されているが、これには問題点が多く、各化合物毎に許容上限摂取量を設定すべきとの結論に達した。また、ミネラルについてはマグネシウムに他のミネラルとの相互作用があり、今後、許容上限摂取量の策定に当たっては、相互作用を考慮すべきであると結論された。

公開日・更新日

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