室内空気中の化学物質に関する調査研究

文献情報

文献番号
199900635A
報告書区分
総括
研究課題名
室内空気中の化学物質に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
安藤 正典(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤正典(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 石川 哲(北里研究所病院)
  • 松村 年郎(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 原邦夫(財)労働科学研究所)
  • 池田 耕一(国立公衆衛生院)
  • 内山 巌雄(国立公衆衛生院)
  • 鳥居 新平(愛知学泉大学)
  • 五十嵐良明(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活環境中に多くの化学物質が利用され、その結果、室内空気中にも化学物質が多く存在し、これらの暴露と疾病との関連性や室内空気の化学物質に係わる安全性の問題については、新聞等において連日のように取り上げられ社会的に多くの関心を持たれている。室内空気環境を取り巻く化学物質は、建築資機材や家庭用品等から発生し、放出される化学物質の種類,使用量,放出条件,気密性など,実際の居住者や居住環境によってその存在状況も大きく異なる。さらに、室内空気中の化学物質の存在量、挙動並びにヒトへの暴露の状況はほとんど明らかになっていない。また、室内空気中化学物質が関与していると考えられる化学物質過敏症は診断基準が示されているものの、本疾病と室内空気中化学物質との関連性に関する研究や類似疾病との相違点等についての研究は皆無に近い。加えて、室内空間には種々の増悪因子が存在することから、暴露量と疾病発生との関連性をさらに不明確にしている。このような状況から、化学物質からの安全性の確保と健康保持の立場から、室内空気中化学物質の実態を明らかにし、疾病との関連性を整理してその予防手法の開発等を明確にすることを目的として研究を実施した。
研究方法
本研究では室内空気中化学物質と疾病との関連性を明らかにするため、
Ⅰ.室内空気中化学物質の免疫系に対する影響評価に関する基礎的研究
Ⅱ.室内空気中化学物質が起因とされる疾病の臨床病理学的研究、
Ⅲ.室内空気中化学物質が起因とされる疾病と化学物質の関連性に関する研究
Ⅳ.居住環境、オフィスビルにおける空気環境中化学物質及び防蟻剤の存在状況
Ⅴ. 室内空気中の化学物質の測定方法の開発に関する研究
Ⅵ.公衆衛生学的立場から見た化学物質過敏症について
の6つにテーマを15の分担研究者及び分担協力者によって実施した。
結果と考察
Ⅰ.室内空気中化学物質の免疫系に対する影響評価に関する基礎的研究
本分担研究ではホルムアルデヒドトルエン等の室内空気中化学物質の臨床免疫学に係わる臨床及び生物学的面から発症メカニズムに関する基礎的研究を行った。平成10年度は、(1)小児気管支喘息患者におけるホルムアルデヒド特異IgE抗体保有率に関する検討、(2)ホルムアルデヒド暴露によるアレルギー反応に対する影響、(3)リポ多糖体(LPS)吸入曝露後のラット気道におけるホルムアルデヒドの惹起性について検討した。本年度は、動物を用いた基礎的検討としてアレルギー獲得のための高分子タンパクと化学物質としてのトルエンあるいはホルムアルデヒド単独での検討を行った。
(1) 室内空気中のトルエン及びリポ多糖(LPS)が気道の自律神経系に及ぼす影響に関する基礎研究
鳥居 新平(愛知学泉大学)、坂本 龍雄(名古屋大学医学部)
全身麻酔下のラットに10分間、トルエンガスを吸入させ、エバンスブルー法で気管、主気管支組織中への血漿漏出量を測定した。その結果、気管では50ppm以上、主気管支では18ppm以上の濃度のトルエン吸入で有意な血漿漏出が惹起された。タキキニンNK1受容体拮抗剤CP999,94を前投与するとこれらの気道反応が消失したことから、トルエンは気道のC線維を刺激し、遊離したタキキニンによりNK1受容体を刺激して血漿漏出を引き起すことが明らかとなった。
リポ多糖(LPS)の吸入は、それ自体で軽度の気道血管透過性亢進を惹起した。また、トルエンと同様、この反応にタキキニンNK1受容体を介する機序が含まれていることを明らかにした。また、LPS吸入は内因性タキキニンの遊離を抑制する効果をもたらすが、吸入12時間後ではむしろ内因性タキキニンによる気道反応を増強し、それ以降、この増強効果は消滅した。
(2) ホルムアルデヒド暴露のアレルギー反応に対する影響に関する研究
(五十嵐良明、鹿庭 正昭、鎌田 栄一(国立医薬品食品衛生研究所)
ホルムアルデヒド(HCHO)の連続吸入暴露による一般毒性とアレルギー反応性に対する効果について、BALB/c系マウスを用いて検討した。マウスにHCHO混合空気を1日6時間、28日間連続暴露を行った。体重及び摂餌量は対照群とHCHO暴露群で差は見られなかった。臓器重量、血液学的検査及び血清生化学的検査においても暴露の効果は認めなかった。HCHOの吸入暴露によって、HCHOに対して感作は成立しなかった。また、総IgE抗体価も変化しなかった。Trimellitic anhydride (TMA)の感作誘導期における耳介リンパ節細胞(LNC)増殖反応は、HCHO暴露によって著しく増強され、2,4-dinitrochlorobenzene (DNCB)によるLNC反応も増加した。一方、HCHO暴露群におけるTMA誘導血清IgE抗体価及びDNCBで惹起した耳腫脹反応は対照群とほとんど差はなかった。したがって、マウスに対してのHCHOの吸入暴露は、一般毒性を示さず、アレルギーの惹起反応を増悪させることはないものの、アレルゲンによる感作誘導については増強作用を示すことが示唆された。
Ⅱ.室内空気中化学物質が起因とされる疾病の臨床病理学的研究
平成11年度は北里研究所病院臨床環境センターのみでなく、を含め少なくとも3年以上「化学物質過敏症」「シックハウス症候群」に臨床と基礎的面から取り組んでいる全国の7名の研究者との共同研究の下で研究を遂行した。
(1) 化学物質過敏症の臨床的プロフィールとその定量的方法
石川 哲(北里研究所病院)
1998-1999年に診察したMCSと診断した患者群の臨床的プロフィール、とくに症状、他覚的検査所見、自律神経の異常の存在とその確認方法、さらにはmotorfunctionの異常の存在とその確認のための定量的方法について検討した結果を報告した。
(2) 化学物質過敏症と花粉症における化学物質のかかわりに関する動物実験学的研究
宮田 幹夫(北里大学医学部眼科学)
化学物質過敏症とアレルギーとの関係をスギ花粉プラスアルファ(化学物質)という重要な見地から花粉モルモットにホルムアルデヒドならびに有機燐殺虫剤であるトリクロロフォン微量投与にて研究を行い、極微量接触でも明らかに結膜血管のアレルギー反応を悪化させる点について報告した。さらに患者治療の上でも必要なクリーンルームで動物を飼育すると花粉症の増悪因子と考えられる化学物質に対して抵抗力が強くなることが明らかにされた。患者治療とも関係する報告である。
(3)化学物質過敏症候群患者の精神神経科学因子の診断・治療ならびにこれら因子の他疾患との疫学的考察               相澤 好治(北里大学医学部公衆衛生学)
本研究は化学物質過敏症候群患者の不安・抑うつの検討を中心に行った。眼科通院中の患者を対象群において比較したところ、化学物質過敏症候群患者は対象群に比べ、不安、抑うつともに強いことが認められた。不安検査間やSDSと他の質問紙間での相関も高く、化学物質過敏症候群患者では、不安と抑うつが関連して惹起されている可能性が示唆された。再診群は初診群に比べ、不安・抑うつともに有意に低く、化学物質過敏症候群患者の通院を継続させることにより、精神症状の改善に一定の効果が期待できると考えられた。(4) 化学物質過敏症において惹起される化学物質の検討
柳沢 幸雄(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
active sampling法とpassive sampling法を併用することによって、化学物質過敏症患者に過敏症状を惹起させる化学物質の同定と定量を行う方法を開発した。開発した方法を用いて実測を行った結果、過敏症患者は非常に低濃度のアルデヒド類への暴露で症状を惹起することが分かった。
(5) 健康に関する問診における微量化学物質の拘わりの評価に関する研究
吉野 博(東北大学大学院工学研究科)
Millerらの研究を基に石川らが作成した「微量化学物質による健康に関する問診票」を用いて、大学学生及び専門学校生とを対象としたアンケート調査を実施し、Millerらの調査結果と比較した。その結果、わが国におけるコントロールとしての集団の健康状態を把握することができた。次に、微量化学物質による障害患者の居住する住宅5件を対象として室内空気質を詳細に測定すると共に問診票を用いたアンケート調査を実施した。その結果、化学物質による汚染の程度は大きくばらついていること、WHOの許容値以下でも症状が現れることなどが明らかとなった。
(6) 化学物質過敏症における酸化ストレスの関与に関する研究
土本 寛二(北里研究所病院)鈴木 幸雄(北里研究所病院)
化学物質過敏症は室内空気中の化学物質による酸化的ストレスの一つである。自律神経障害、神経障害、末梢神経障害などの神経障害以外に気道障害、消化器障害、循環障害、免疫障害などの広範な全身的症状が知られており、化学物質過敏症の発症原因として何らかの免疫学的機序の関与が強く示唆される。そこで化学物質過敏症の原因を解明する基礎的研究として、環境因子の一つである酸素の血管内皮への影響を検討した。その結果、高濃度の酸素により接着分子であるICAM-1発現が増加し、これは抗炎症薬であるステロイドにより抑制された。以上より酸化的ストレスに対する治療の一つとして、ステロイド薬の可能性が示唆された。
(7) 大阪地区におけるシックハウス症候群と診断される患者の疫学・臨床に関する研究
圓藤 陽子(関西医科大学公衆衛生学)
大阪地区におけるシックハウス症候群と診断される患者の疫学・臨床に関する研究をホルムアルデヒド、ダニ等との関連性を検討した。現在の段階では、ダニ等の増悪因子とシックハウス症候群との関連性は薄いことがみられたが、臨床的には呼吸器症状の重要性が指摘された。
(8) 環境ホルモンの生体に及ぼす影響、とくにプラスチック可塑剤のリンパ球に及ぼす免疫学的影響に関する研究
坂部 貢(東海大学医学部)
MCS患者の中に時に所謂プラスチック製の食器その他に反応を示す症例が見られビスフェノールAやフタル酸エステルとの関係が推定される症状がある。我々の未発表データで、可塑剤とくに有機燐と関係する可塑剤が極めて高い気中濃度を示す家があり、その家族で不定愁訴を示す例がある。今回それらの物質が免疫系とくに末梢リンパ球のサイトカイン反応性に影響が如何に発現し得るか、各種の内分泌撹乱物質が如何に影響を与えるかについて研究した。その結果ビスフェノールAやフタル酸エステルは明らかにpositiveな影響をリンパ球に対しサイトカイン反応に影響を示すことが明らかとなった。
Ⅲ.室内空気中化学物質が起因とされる疾病と化学物質の関連性に関する研究
安藤正典(国立医薬品食品衛生研究所)
本研究は、第一に居住環境内の化学物質の存在状況を把握する観点から、東京都及び神奈川県からボランティアを募り、各自治体が調整に当たり、ボランティアに対して化学物質過敏症を中心とした診断と血液中揮発性化学物質量の測定と室内中化学物質の測定を実施した。
空気中の揮発性化学物質の捕集方法及びその測定方法は、対象化学物質、各研究機関における機器の整備状況、技術の練達度、試料採取及び測定時期や時間,参加協力の家族や家屋等の制約から原則的な方法を設定した。また、捕集効率及び回収率はほぼ一定に確認できた状況で調査を開始した。
試料採取方法及びアンケートの作成については、研究機関との複数回の検討によって居住環境及び周辺環境を把握することを目的として設定した。
ボランティアに対するインフォームドコンセントから測定までの経過は以下のような経過に従って実施した。
①ボランティアに対して今回の調査研究の趣旨を説明する機会を設けた。
②この機会によってボランティアから同意書によって同意の旨を確認した。
③ボランティア、病院、測定機関のスケジュールのスケジュールの調整の手順について検討した。
④各ボランティアにおける詳細のスケジュールは、病院での採血と診断には担当する自治体が、室内化学物質の測定には分析機関が対応して実施した。
⑤各ボランティアは設定した日時に診断及び採血を行った。
⑥別に、診断及び採血した日時に近い日に室内空気の採取を行った。
⑦これらのデータは、国立医薬品食品衛生研究所に集め詳細な検討を行った。
現在、これらデータについて解析を実施している。
Ⅳ.室内空気中の化学物質に関する研究
空気中化学物質の存在状況とその発生機構に関する研究として、居住環境およびオフィスビルにおける室内化学物質や最近注目される防蟻剤について検討した。
(1) オフィスビルにおける空気環境中化学物質の存在状況
原邦夫 (財)労働科学研究所)
本年度は,1)VOCs捕集に用いられる固体捕集剤の捕集率・脱着率の比較検討,2)一つの新築ビルでの発生源推定方法の検討,3)携帯型のVOCs測定器の現場適用の予備的検討,を行った。その結果,発生源特定も簡単なシステムで行える可能性があること,また測定方法間の相違を踏まえれば携帯型の測定機器の現場適用の可能性が示唆された。今後,携帯型の測定機器を用いて様々なVOCsが存在する職場やかなり高濃度になりうる作業現場・オフィスでの室内空気を対象とした測定を行い,携帯型の測定機器の現場応用について検討することが求められた。
(2) 防蟻、防虫剤による室内化学物質汚染の現状と対策に関する調査研究
池田 耕一、村山留美子(国立公衆衛生院)(国立公衆衛生院)
本研究においては、1)住宅において防蟻・防虫剤由来の室内有機リン系化学物質濃度の実態を明らかにし、2)チェンバー実験により、同汚染物質の発生やVOCの発生を求めるものである。3県で行われた実態調査においては、18戸の住戸につき、床下と居間のサンプルを得た。分析の結果、対象住戸が近年施工されたためか、散布薬剤の検討が行われており、有機リン系化学物質の発生は希にしか観測されなかった。このような傾向が、更に古い住宅で認められるかどうかは、不明である。実験室実験においては、2種類の防蟻剤について同様の測定を行い、温度、湿度と換気回数が制御された実験室内でMEP(Fenitrothion),CP(Chlorpyrifos)濃度を測定し、同時に20数種のVOCの発生を定量的に把握した。(p-ジククロロベンゼン+防かび剤)による防虫剤に関しては、90%のp-ジククロロベンゼンとその他10%のVOC(デカン類、キシレン類等)を検出した。
Ⅴ.室内空気中の化学物質の測定方法の開発に関する研究
松村 年郎(国立医薬品食品衛生研究所)
厚生省は1997年6月(平成9年)にヒトの健康保護を目的として、居住環境内におけるホルムアルデヒド(HCHO)のガイドライン値を公表した(30分平均値で0.1mg/m3, 20℃換算で0.08ppm)。しかし、このガイドライン値を評価する際のサンプリング法や測定法については提示されていない。そこで、居住環境内のHCHO濃度を評価するための標準的なサンプリング法及び測定法の確立を目的として、ISO原案及び我が国における既往研究等を参考に実験を行い、居住環境内におけるHCHOの標準的なサンプリング法及び測定法(2,4-ジニトロフェニルヒドラジン-カートリッジ捕集-高速液体クロマトグラフ法)を提案した。 更に、化学物質過敏症やシックハウス症候群等の原因物質として指摘されている室内空気中の有機リン化合物について、大量試料導入濃縮装置を装着したGC/FPDを用いた高感度分析法の開発を行った。
Ⅵ.公衆衛生学的立場から見た化学物質過敏症について
内山 巌雄(国立公衆衛生院)
化学物質過敏症(Multiple Chemical Sensitivity以下MCSと略)は現在のところ定義や病態について議論が多く、未だ明確な疾患単位とは捉えられていないが、化学物質が原因と疑われる症状を訴え、苦しんでいる患者が存在することも事実である。我々のこれまでの調査では、全国の消費生活センターや保健所等への訴えに対して適切な対応が取られているとは言い難かった。某病院で化学物質過敏症と診断されている患者へのアンケートや化学製品PL相談センターへの相談事例をを分析した結果では、症状の発現から適切な診断あるいは対応が取られるまでには多くの時間を要していることが判明した。さらに全国の無作為に抽出した4,000人への面接調査により、化学物質過敏症様症状の出現頻度の全国調査を実施したが、結果は現在分析中である。
結論
本研究では、昨年度の研究結果をさらに発展させ以下に示すより具体的な項目について検討した。
Ⅰ.室内空気中化学物質の免疫系に対する影響評価に関する基礎的研究(1)室内空気中のトルエン及びリポ多糖(LPS)が気道の自律神経系に及ぼす影響に関する基礎研究では、トルエンは気道のC線維を刺激し、遊離したタキキニンによりNK1受容体を刺激して血漿漏出を引き起すことが明らかとなった。また、リポ多糖(LPS)の吸入は、それ自体で軽度の気道血管透過性亢進を惹起した。(2)ホルムアルデヒド暴露のアレルギー反応に対する影響に関する研究では、28日間連続暴露を行った結果、 マウスへのHCHOの吸入暴露は、一般毒性を示さず、アレルギーの惹起反応を増悪させることはないものの、アレルゲンによる感作誘導については増強作用を示すことが示唆された。
Ⅱ.室内空気中化学物質が起因とされる疾病の臨床病理学的研究では、 (1)化学物質過敏症の臨床的プロフィールとその定量的方法、(2)化学物質過敏症と花粉症における化学物質のかかわりに関する動物実験学的研究、(3)化学物質過敏症候群患者の精神神経科学因子の診断・治療ならびにこれら因子の他疾患との疫学的考察、(4)化学物質過敏症において惹起される化学物質の検討、 (5)健康に関する問診における微量化学物質の拘わりの評価に関する研究、 (6)化学物質過敏症における酸化ストレスの関与に関する研究、(7)大阪地区におけるシックハウス症候群と診断される患者の疫学・臨床に関する研究、(8)環境ホルモンの生体に及ぼす影響、とくにプラスチック可塑剤のリンパ球に及ぼす免疫学的影響に関する研究について検討し、化学物質過敏症に対する研究が一段と強化、拡大して横断的研究体制での推進がなされた。
Ⅲ.室内空気中化学物質が起因とされる疾病と化学物質の関連性に関する研究 では、(1)室内空気中化学物質が起因とされる疾患と化学物質の関連性に関する研究を実施し、室内空気中化学物質と疾病との拘わりあるいは血液中濃度について検討し、現在そのデータの解析中である。
Ⅳ.室内空気中の化学物質に関する研究(1)オフィスビルにおける空気環境中化学物質の存在状況では、1)VOCs捕集に用いられる固体捕集剤の捕集率・脱着率の比較検討,2)一つの新築ビルでの発生源推定方法の検討,3)携帯型のVOCs測定器の現場適用の予備的検討を行った。(2)防蟻、防虫剤による室内化学物質汚染の現状と対策に関する調査研究では、住宅において防蟻・防虫剤由来の室内有機リン系化学物質濃度の実態を明らかにし
Ⅴ.室内空気中化学物質の測定方法に関する研究では、ホルムアルデヒドのサンプリング方法と分析方法について基礎情報を検討し、標準測定方法の確立を可能にした。
Ⅵ.公衆衛生学的立場から見た化学物質過敏症についての研究では、化学物質過敏症の訴えに対して、全国の消費生活センターや保健所等では適切な対応が取られているとは言い難かった。化学物質過敏症患者は、症状の発現から適切な診断あるいは対応が取られるまでには多くの時間を要していることが判明した。さらに全国の無作為に抽出した4,000人への面接調査により、化学物質過敏症様症状の出現頻度の全国調査を実施し、現在解析中である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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