特定疾患の微生物学的原因究明に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900586A
報告書区分
総括
研究課題名
特定疾患の微生物学的原因究明に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
倉田 毅(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 生田和良(大阪大学微生物病研究所)
  • 山西弘一(大阪大学医学部)
  • 岩崎琢也(国立感染症研究所)
  • 荒川宜親(国立感染症研究所)
  • 高橋和郎(福島県立医科大学医学部)
  • 高昌星(信州大学医学部)
  • 田代眞人(国立感染症研究所)
  • 山谷睦雄(東北大学医学部付属病院)
  • 渡辺邦友(岐阜大学医学部附属嫌気性菌実験施設)
  • 村田幸作(京都大学食糧科学研究所)
  • 結城伸泰(独協医科大学神経内科)
  • 永武毅(長崎大学熱帯医学研究所)
  • 江石義信(東京医科歯科大学付属病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 特定疾患対策研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
32,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定疾患(いわゆる“難病")と定義される疾患の大部分は原因が不明である。それ故原因療法ができないでいる。特定疾患の原因としてウイルスや細菌あるいはそれらの産物が引き金となり自己免疫疾患が惹起されたり、微生物の潜伏・持続感染、あるいはそれらの再活性化により、さらには未知の病原体の関与が示唆される。当研究班では特定疾患を引き起こす病原体、その発症機序を臨床研究班と密接に連携をとり、明らかにすることにより原因究明を行ない、その結果として発症の予防あるいは効果的な治療法の開発に結び付けることを目標とする。
研究方法
特定疾患は、ウイルスあるいは細菌等の感染が引き金となって自己免疫機序が惹起されたり、あるいは微生物の潜伏・持続感染が疾患と密接な関係があることが示唆されている。そこで、当班としては、各臨床班と密接に連絡し患者の血液、髄液、血清、体液その他病理材料を用いて、あるいは動物モデルを作成し;1.起因微生物の分離を試みる、2.微生物関連蛋白、遺伝子を検索する、3.病期と既知病原体に対する抗体の動態及び各種サイトカイン産生等の関連を経時的に測定する、4.既知病原体の再活性化の機序をPCR法により把握し、病巣悪化との関連、病因性について明らかにする、5.動物モデル等で起因病原体と発症機序を明らかにする。
結果と考察
1.神経変性疾患においてはボルナ病ウイルスやインフルエンザウイルスとパーキンソン病との関連について検索した。
2.ギランバレー患者の先行感染について検討した。
3.サルコイトーシス患者例でP. acnes由来の組換え蛋白を用い患者リンパ球の反応性について検討した。またP. acnesを特異的に培養しうるシステムを開発した。
4.特発性造血器障害患者でのウイルス関与についてヘルペス群ウイルスを検出しうる系を開発した。また複数の疾患の骨髄や末梢血中にEBV DNA等の存在を認めた。
5.慢性呼吸器不全をきたしている患者咽頭等からライノウイルスを検出した。さらに細菌の病原性発現と発症に重要な要因となる細菌の生体への付着に関わる細胞例レセプターを解析した。難治性疾患でしばしば見られるバイオフィルム溶解させる酵素等の検討を行った。
6.IgA腎症とマイコプラズマとの関連性について検討した。
これらの疾患の病原体との関連については現在の科学レベルで陽性あるいは陰性をきちっと提示することが重要である。特に発症早期の患者材料を用いての詳細な検索が最も重要である。
結論
パーキンソン病ヒト脳材料を用いスナネズミにボルナ病ウイルス遺伝子が伝播された事実は特筆に値するが因果関係を含めさらに多数の例での実証が必要である。サルコイドーシスとP. acnesでは因果関係はかなり濃厚であるが、発症早期での解析はより重要と考えられる。慢性呼吸器不全に関与すると考えられる細菌とその付着に関するレセプターの考え方とその実証は病態解明に一層の展開をきたすと思われる。今後さらに密接に臨床例について基礎的な追究が必要である。

公開日・更新日

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更新日
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