自己免疫疾患の病因・病態解析と新たな治療法の開発

文献情報

文献番号
199900553A
報告書区分
総括
研究課題名
自己免疫疾患の病因・病態解析と新たな治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
小池 隆夫(北海道大学 医学部内科学第二講座)
研究分担者(所属機関)
  • 宮坂 信之(東京医科歯科大学内科学第一講座)
  • 竹内 勤(埼玉医科大学総合医療センター)
  • 鍔田 武史(東京医科歯科大学難治疾患研究所ウィルス・免疫疾患研究部門)
  • 吉崎 和幸(大阪大学健康体育部健康医学第一部門)
  • 広瀬 幸子(順天堂大学医学部病理学第二講座)
  • 松下 祥(熊本大学大学院医学研究科脳免疫統合科学系・免疫識別学講座)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 特定疾患対策研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は各々の自己免疫疾患における免疫系の異常の特徴を明らかにし、疾患特異的治療戦略を構築し、患者のQOLの向上を計り、さらには病気の治癒を目指す事である。
研究方法
・全身性エリテマトーデス(SLE)および抗リン脂質抗体症候群(APS)の病因、病態および治療に関して以下の検討を行った。・患者T細胞シグナル伝達異常に関する分子の検討。・患者血中の可溶性CTLA-4の検出と解析。・抗リンパ球抗体の特異性の解析。・SLE患者リンパ球のステロイド抵抗性獲得の機序の解明。・SLEにおける病態の規定因子に関する研究・SLE感受性遺伝子としてのFc_RIIB制御領域多型の役割の検討。・自己免疫疾患発症におけるPDー1の役割の検討。・全身性自己免疫疾患発症におけるCD40リガンド過剰発現の役割の検討。・抗リン脂質抗体症候群(APS)におけるT細胞応答の解析。・抗リン脂質抗体症候群における自己抗体の関与した動脈硬化の発症機序の解明。
・新たな免疫血栓症の指標としての抗血管内皮五糖体(VPS)自己抗体の解析。
・多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)およびシェーグレン症候群(SS)の病因、病態および治療に関して以下の検討を行った。・多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)合併した間質性肺炎に対するシクロスポリン療法に関する全国調査。・PM/DMにおけるIL-15の発現とその役割に関する検討。・炎症性筋疾患におけるARC(apoptosis repressor with caspase recriutment domain)の発現異常の解明。・プリスタン(pristane)投与による正常マウスにおける筋炎特異自己抗体産生誘導の解析。・間質性肺炎繊維るIL-6の関与の解析。・シェーグレン症候群(SS)における唾液腺組織障害関連分子に関する検討。・シェーグレン症候群(SS)唾液腺障害、特に唾液腺腺房および導管上皮細胞アポトーシスの制御機構の検討。・
新しい免疫抑制剤FTY720経口投与による自己免疫モデルマウスの治療の試み。
結果と考察
SLE患者T細胞に見いだされる異常分子の特定を試みた。その結果、60%以上のSLE患者において、T細胞リセプター (TCR)からのシグナル伝達に関与するzeta ___ 鎖の蛋白発現が著明に低下していることを明らかにした。一部の症例では、エクソンスキッピングを含めたメッセージ異常が見い出された。この分子異常に伴って、サイトカイン産生、接着分子発現の二次的異常が惹起される可能性をTCR_鎖ノックアウト細胞を用いた検討で明らかにした。
T細胞活性化を特徴とするSLEにおいてCTLA-4の発現異常の有無を調べるために、末梢血単核細胞によるCTLA-4遺伝子の発現をRT-PCR解析した。SLE症例よりCTLA-4遺伝子変異体をクローニングし、塩基配列と蛋白発現解析から、それが可溶性CTLA-4遺伝子であることを明らかにした。また、可溶性CTLA-4分子に新たに付加されたアミノ酸配列を特異的に認識するモノクローナル抗体を作製して、可溶性CTLA-4測定サンドイッチELISAを確立した。SLE群では血清可溶性CTLA-4レベルはむしろ健常者群よりも低下していた。
T細胞活性化に関係するT細胞共刺激分子であるCTLA-4(CD152)、CD28、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)に対する自己抗体、また、T細胞の活性化に関わると考えられるCD69に対する自己抗体の検索を行った。その結果、前者の分子群ではCTLA-4に対する自己抗体が存在し、しかもこのCTLA-4自己抗体はリンパ球増殖を増強することを見出した。また、CD69に対する自己抗体も20%以上の頻度で検出された。
SLE患者における多剤抵抗性遺伝子(MDR-1)とステロイド抵抗性の関係について検討した。長期ステロイドを服用したSLE患者末梢血CD4、CD8、CD19リンパ球では、P-糖蛋白質とMDR-1遺伝子転写調節因子YB-1の発現が有意に増加し、また、細胞内ステロイド濃度は減少した。代表的な免疫抑制薬シクロスポリン(CyA)は、P-糖蛋白質と拮抗的に結合して薬剤耐性を改善する作用も有する。SLE患者リンパ球をin vitroでCyA処理すると、細胞内ステロイド濃度を15分以内に有意に上昇させた。これらの結果を基に、ステロイドを長用量使用し減量が困難なSLE患者18症例にCyAの併用投与を行った結果、15例で臨床症状・所見、免疫学的検査所見等の改善を認め、ステロイドの減量を可能にした。
SLEの初期の病態の長期予後に対する影響と病態の規定因子の1つの候補としてTh1/Th2バランスを調べた。WHO・型やネフローゼを伴う腎症、Organic brain syndromeを伴うCNSループス、間質性肺炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)等の重篤または難治性の病態が初回診断時に主病変の症例は予後が不良で、ADLの障害も多かった。Th1/Th2バランスとの関連では、血中でTh2関連サイトカインのみが増加する群では腎症が多いのに対して、Th2・Th1両方のサイトカインが増加する群では非腎症特に肺病変が多く、IL-12の増加も認めた。産生細胞の1つとしてT細胞を細胞内染色検索するとIL-4産生(Th2)細胞の減少に伴うTh1/Th2の増加が認められた。
PD-1遺伝子は免疫グロブリンファミリーに属する膜蛋白質をコードし、その細胞質領域に免疫反応を負に制御するITIMモチーフをもつ。PD-1欠損マウスの作成、解析を行い、PD-1が自己免疫病発症の制御に関与することを証明し、特にPD-1が末梢における自己免疫寛容の制御を行っていることを示した。また、胸腺細胞の分化においても、β選択に影響を与えることで正の選択における自己反応性T細胞の産出を制御している可能性を示した。PD-1の分子レベル、細胞レベル、個体レベルの解析、ヒト自己免疫病疾患との関連を研究することは、今後、自己免疫病の病因の解明に、また、病状の予後、治療法の確立に関しても貢献することが期待される。
SLE自然発症系モデルマウスを用いたゲノムワイドな遺伝学的解析で、B細胞の異常活性化に伴う高IgG血症の素因遺伝子の候補として、第1染色体テロメアにマップされるFc__RIIB遺伝子が推定された。
Fc__RIIB遺伝子の塩基配列の解析の結果、プロモーター領域の転写制御部位を含む一部欠損を伴う遺伝子多型が存在すること、この多型がリンパ濾胞胚中心の活性化B細胞におけるFc_RIIB1の発現低下をきたすこと、この低下によりIgG抗体応答が亢進することが明らかとなった。本研究によって、SLE素因遺伝子の一つとして、Fc__RIIB遺伝子プロモーター領域多型が関与していることが初めて明らかにされた。
CD40シグナルは自己抗原と反応したB細胞のクローン除去を阻害することが示唆され、SLE患者やSLEモデルマウスBXSBではCD40Lの過剰および異所性の発現が示されている。CD40シグナルの過剰が全身性自己免疫疾患をひきおこすか検索する目的で、CD40Lを過剰発現するCD40Lトランスジェニックマウスの解析を行なった。このトランスジェニックマウスでは、液性免疫応答の亢進、自己抗体の産生、SLE様の全身性自己免疫疾患の発症がおこる。したがって、SLEの発症においてCD40Lが重要な役割を果していることが強く示唆される。また、CD40存在下ではCD40Lの発現が減弱するため、強い免疫促進作用があってもその検出が困難となる。SLE患者などでCD40Lの発現を検索する際には、十分注意する必要がある。
抗リン脂質抗体症候群(APS)患者に認められる抗カルジオリオピン抗体はアポ蛋白である_2-GPI を認識する。_2-GPIの全長をカバーするペプチドライブラリーを合成し、この混合物でAPS患者の末梢リンパ球を刺激することによりT細胞株を樹立した。これを用いて、患者T細胞は主に_2-GPI 蛋白のp244-264(第5ドメインのSCKLPVKKATVVYQGERVKIQ)を認識していること、拘束HLA分子は多様であること、一部の健康人からも同じ特異性を有するT細胞株が樹立できること、_2-GPI蛋白は血清中に存在するが、高濃度の_2-GPI蛋白でT細胞株を刺激しても増殖反応を誘導できないこと、しかし、患者_2-GPI反応性T細胞は健康人のそれと比較して、特異的刺激で誘導されるIFNγ産生能が明らかに低く、Th2寄りのフェノタイプを示すことを明らかにした。さらに、T細胞抗原認識における分子擬態(molecular mimicry)を解析するための基礎的方法論の確立を目的として、コンビナトリアルペプチドライブラリーと質量分析装置を組み合わせることにより、スーパーアゴニストを効率良く同定する方法を開発した。
_2-GPIが特異的に認識するリガンドを酸化LDLより精製し同定したところ、cholesteryl-linoleateの酸化物であった。本リガンド含有リポソームのマクロファージへの結合は、_2-GPIおよびAPS由来の抗_2-GPI I抗体存在下で有意に増加した。一方、APS患者血清中の_2-GPI・リガンド複合体に対する自己抗体の陽性例および血清中酸化LDLの異常高値例が動脈血栓症の既往例と有意に相関した。以上の結果より酸化LDLに対する自己抗体の反応がAPSにおける動脈血栓の発症に深く関与している可能性が考えられた。
動脈硬化症を有しない例での血栓症の原因はAPS等を除き、ほとんどの例で不明である。これまで自己免疫疾患患者の血中に血管内皮細胞上のヘパラン硫酸のATIII結合部位(vascular pentasaccharide, VPS)を認識する自己抗体が存在することを報告してきた。本研究ではこの抗体がAPS を含む血栓症診断の指標となりうるか否かを追求した。その結果、抗VPS抗体は抗リン脂質抗体症候群陰性例においても検出可能な、新たな血栓症の標識抗体となり得ると推定された。 PM/DMに伴う急速進行性間質性肺炎に対してシクロスポリン(CyA)が有効であるとする報告が散発的にみられていることから、CyA療法の有効性の検討及び標準的治療指針を全国アンケート調査をもとに作成することにした。アンケート調査は全国13施設より40症例の解答を得た(PM11例、DM29例)。全例がステロイド剤を内服しており、17例がステロイドパルス療法を併用していた。自覚症状、理学所見、画像所見、動脈血ガス分析の4項目についてCyA投与開始時および28日後の比較検討を行ったところ、著効27%、有効17%、やや有効23%、不変13%、増悪20%であった。疾患別にみると、PMでは著効45%、有効22%、やや有効33%、不変および増悪は0%であるのに対して、DMでは著効19%、有効14%、やや有効19%、不変19%、増悪29%であった。
これまで、筋芽細胞cell lineを用い、CD40架橋刺激にて筋芽細胞からのIL-6、8、15及びMCP-1の産生亢進が起こることを示してきた。今回筋生検より得られた患者由来の筋芽細胞を用いてCD40架橋刺激を加え、これらサイトカインの産生を検討した。また、特にIL-15についてその産生制御機構等につき検討した。CD40架橋刺激を加えたところ、IL-6,8,15及びMCP-1の産生亢進が起こった。また免疫染色にてPM/DM患者の筋細胞は正常例に比べて強くIL-6、IL-15、MCP-1を発現していた。培養筋芽細胞に各種 cytokine、LPS刺激を加え、48時間後の培養上清、細胞溶解液を回収し、IL-15の濃度をELISAにて測定した。IL-15産生はIFN-γ、IL-1α、 LPS刺激にて濃度依存的に亢進した。また、刺激後6時間にてRNAを抽出し、IL-15mRNA発現量を定量的に測定したところ、IFN-γ、IL-1α刺激はmRNAレベルにてIL-15の発現亢進をおこすことが明らかとなった。
ARC(apoptosis repressor with caspase recriutment domain)は筋組織で特異的に発現し、caspase-8に結合しその作用を抑制することで筋細胞のアポトーシスを抑制する分子である。多発性筋炎や皮膚筋炎の筋生検での ARC分子の発現をRT-PCR法により検討したところ、完全長のARCの発現は認められず、代わりにshort formsの発現が認められた。一方、末梢神経障害患者や強皮症に伴う筋炎患者では完全長のARCの発現を認めた。完全長ARCの発現消失が筋細胞のアポトーシス誘導を介して、多発性筋炎や皮膚筋炎の病態形成に関与する可能性が考えられた。 抗SRP抗体、抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体などの筋炎特異自己抗体は特徴的臨床像と密接に関連し、診断、病型分類、症状発現の推測など臨床的に有用なばかりでなく、病因・病態を考える上でも大切である。本研究は、SLE特異自己抗体などを誘導することが明らかとなったプリスタンを14種の正常マウス系(B6, B10, BALB/c, C3H, CBA系など)に投与し、免疫沈降法により筋炎特異自己抗体産生を追究した。抗SRP抗体、抗OJ抗体を含む抗tRNA関連自己抗体がプリスタン投与後のB6,BALB/cなどの正常マウス血清に検出された。この結果は、ある環境要因に曝露された正常マウスにおける筋炎特異自己抗体の産生が示している。本動物モデルは筋炎特異自己抗体産生に対する、遺伝、環境因子の役割を追究する上で有用と考えられた。
膠原病疾患における間質性肺炎において繊維化を起こすといわれている代表的なサイトカインであるTGF-βの作用とIL-6の作用は異なると考えられる。そこで、実際の間質性肺炎の臨床病態におけるTGF-_, IL-6の役割を明らかにするため、肺繊維化型間質性肺炎を合併した慢性関節リウマチ、多発性筋炎/皮膚筋炎、強皮症、混合性結合病とLIPを合併したキャッスルマン病患者血清中TGF-βおよびIL-6、また間質性肺炎活動性のマーカーとしてKL-6を測定した。両群ともにTGF-_に有意な上昇は認めなかった。しかし、繊維化を伴わない間質性肺病変合併患者ではIL-6は有意に高いがKL-6は正常域にあり、一方、繊維化を伴う間質性肺炎ではKL-6は高値を示したがIL-6は前者に比べ低値を示した。したがってIL-6は肺の繊維化に対し抑制的に働くか、直接的な関与をしない可能性があると考えられた。
シェーグレン症候群(SS)における唾液腺組織障害に関与する分子を同定した。SS唾液腺では正常唾液腺と比較し、IP-10は12.3±8.6倍、MIGは6.8±2.6倍と有意にmRNA発現が増強していた。SS唾液腺ではIL-2、IL-6、IL-10など様々なサイトカインの発現が認められた。TGFβは導管上皮細胞に発現が認められ、Focus scoreの高い症例にて発現が減少していた。SS唾液腺において導管上皮、腺房細胞ともにアポトーシスに陥っている細胞が認められた。Fasは導管上皮および浸潤細胞に発現しており、FasLは一部の導管上皮、腺房細胞、導管周囲の少数の浸潤細胞に発現が認められた。また腺房にBax陽性細胞を数多く認めた。唾液腺浸潤細胞はBcl-2を発現しており、アポトーシス細胞は少なかった。
NZB/W F1マウスに抗CD40L抗体を投与し、組織学的な変化を検討したところ、唾液腺、肺、腎においてリンパ球浸潤の著明な抑制が認められた。
唾液腺腺房および導管上皮細胞のアポトーシスによる細胞死はSSの口腔乾燥症状を引き起こす一要因と考えられており、その機序の解明は特異的な治療法の開発につながると思われる。そこでヒト唾液腺細胞株を用いて検討したが、同細胞株はTNF-_ およびIFN-_ によりアポトーシスが誘導され、この細胞株のFas依存性アポトーシスもTNF-_ およびIFN-_ により増強された。 TNF-_ およびIFN-_ は唾液腺細胞株の抗アポトーシス分子の発現を抑制しこれら細胞株のアポトーシスを誘導することが示唆され、今後はアポトーシス制御分子をターゲットとしたSSの治療法の開発が期待される。自己免疫疾患の代表的な治療薬である副腎皮質ステロイド薬はその免疫抑制機序の一つとしてアポトーシス誘導作用を有する。リンパ球のアポトーシス誘導作用を有し、グルココルチコイド作用のない物質はSLEの治療に有望であると考えられる。そのような物質として、アポトーシスを引き起こす細胞表面抗原Fasの細胞内シグナル伝達物質の一つであるセラミドとセラミド様作用を有する新しい免疫抑制剤FTY720に着目し既に自己免疫病を発症している生後8ヶ月齢のNZB/WF1マウスに週3回経口投与した。FTY720投与群では生存率の上昇(13ヵ月齢66.7% vsコントロール群25.0%)、腹腔内CD5+ B細胞数の減少(0.2×107 vs コントロール群1.0×107)、経時的な血清抗ds-DNA抗体価の低下とさらに蛍光免疫組織学的検査で腎糸球体へのIgG沈着の減少とが観察された。FTY720はNZB/WF1ループスマウスに対しても治療効果を有し、SLEに対する新しい治療法となりうることが示された。
結論
本研究班の当該年度の研究から以下の結論が得られた。
・SLEの免疫異常としてのT細胞シグナル伝達異常を解析し、T細胞リセプター (TCR)からのシグナル伝達に関与するzeta (_) 鎖の蛋白発現が著明に低下していることを示した。また、SLE患者血中には免疫制御分子であるCTLA-4のsoluble formやそれに対する自己抗体が存在する事を明らかにした。・ステロイド抵抗性獲得の機序の一つとして、多剤抵抗性遺伝子(MDR-1)発現によるステロイドの細胞外への能動輸送に伴う細胞内ステロイド濃度の減少が想定される。ステロイド抵抗性SLE患者末梢血リンパ球において、MDR-1遺伝子産物であるP-糖蛋白質が発現し、ステロイド抵抗性を来す事が明らかになった。・SLEにおける病態の規定因子を初回診断時の病態と免疫異常の点から考察し、長期予後に及ぼす影響を明らかにした。・SLE自然発症系モデルマウスを用いたゲノムワイドな遺伝学的解析で、B細胞の異常活性化に伴う高IgG血症の素因遺伝子の候補として、第1染色体テロメアにマップされるFc_RIIB遺伝子が推定され、SLE素因遺伝子の一つとして、Fc_RIIB遺伝子プロモーター領域多型が関与していることが初めて明らかにされた。・PD-1遺伝子は免疫グロブリンファミリーに属する膜蛋白質をコードし、その細胞質領域に免疫反応を負に制御するITIMモチーフをもつ。その欠損マウスの作成、解析を行い、PD-1が自己免疫病発症の制御に関与することを証明し、特にPD-1が末梢における自己免疫寛容の制御を行っていることを示した。・動物モデルでの実験からSLEの発症においてCD40Lが重要な役割を果していることが強く示唆された。・抗リン脂質抗体症候群(APS)では免疫系のみならず動脈硬化や血栓形成傾向の制御が重要であり、血栓形成メカニズムの解析が必須である。今回の研究でAPS患者T細胞が認識するエピトープペプチドが同定された。また_2-GPI の結合する酸化LDL上のリガンドも同定され、APSと動脈硬化との接点が明らかになってきた。さらに抗リン脂質抗体とは別の血栓症診断のマーカーとなりうる自己抗体の存在も明らかになった。 ・多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)は、間質性肺炎をしばしば併発し、本症の予後規定因子となっている。本症に対するシクロスポリン(CyA)の投与に関して、 全国にアンケート調査を実施し、CyA療法の有効性の検討及び標準的治療指針をこの調査結果をもとに作成した。・筋生検より得られたPM/DM患者由来の筋芽細胞を用いてCD40架橋刺激を加え、これらサイトカインの産生、特にIL-15についてその産生制御機構等につき検討したところIL-6,8,15及びMCP-1の産生亢進を認めた。・多発性筋炎や皮膚筋炎の筋生検での ARC分子の発現をRT-PCR法により検討したところ、完全長のARC(apoptosis repressor with caspase recriutment domain)の発現は認められず、代わりにshort formsの発現が認められた。一方、末梢神経障害患者や強皮症に伴う筋炎患者では完全長のARCの発現を認めた。・プリステン投与による正常マウス系における筋炎特異自己抗体産生を追究した結果、抗SRP抗体は種々のマウス系に広く認めた。また、 抗7-2 RNP抗体は抗SRP抗体を産生するマウス系に共通して見出された。しかし抗tRNA関連抗体はB6/B10や CBA/CaJマウスの一部に検出されたが、 他の系には認められなかった。・間質性肺炎の臨床病態におけるTGF-_, IL-6の役割を明らかにするため、肺繊維化型間質性肺炎を合併した各種自己免疫疾患とLIPを合併したキャッスルマン病患者血清中TGF-βおよびIL-6、また間質性肺炎活動性のマーカーとしてKL-6を測定した。両群ともにTGF-_に有意な上昇は認めなかった。しかし、繊維化を伴わない間質性肺病変合併患者ではIL-6は有意に高いがKL-6は正常域にあり、一方、繊維化を伴う間質性肺炎ではKL-6は高値を示したがIL-6は前者に比べ低値を示した。・シェーグレン症候群(SS)における唾液腺組織障害に関与する分子を同定した。またヒト唾液腺細胞株を用いたアポトーシス検討したが、同細胞株はTNF-_ およびIFN-_ によりアポトーシスが誘導され、この細胞株のFas依存性アポトーシスもTNF-_ およびIFN-_ により増強された。・セラミド様作用を有する新しい
免疫抑制剤FTY720に着目し、ループスモデルマウスに対する経口投与実験を遂行した。その結果、腎炎の軽減、自己抗体の産生低下、寿命の延長など治療効果を認めた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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