生検材料による神経・筋疾患等の成因解明と治療に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900398A
報告書区分
総括
研究課題名
生検材料による神経・筋疾患等の成因解明と治療に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
埜中 征哉(国立精神・神経センター武蔵病院)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本和季(国立療養所道北病院)
  • 石川幸達(国立療養所八雲病院)
  • 木村格(国立療養所山形病院)
  • 石原傳幸(国立療養所東埼玉病院)
  • 宮内潤(国立小児病院)
  • 斎田孝彦(国立療養所宇多野病院)
  • 高橋桂一(国立療養所兵庫中央病院)
  • 澁谷統壽(国立療養所川棚病院)
  • 岩崎祐三(国立療養所宮城病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 脳科学研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経・筋疾患の原因・病態解明には研究対象となる組織、培養細胞、DNAなど患者からの検体が不可欠である。筋疾患では診断のために筋生検が行われる。また末梢神経、皮膚生検も行われる。これらの検体を上記の研究目的に使用するため全国規模の生検材料のバンクシステムを作ることを計画した。最終年度はまず診断、検体保存、その使用のルールにそって、倫理面をクリアした検体を使っての研究を開始した。
研究方法
①検体供与:バンク入りした検体を研究用に供与を開始した。供与に関しては今回様式を作成し使用のルール化をはかった。様式に記入してある研究内容と検体の保存料を検討し、供与を開始した。②供与された検体が使用され、いくつかの研究を進めた。
結果と考察
①筋ジストロフィーに関する研究:他施設共同で筋ジストロフィーの診断に関する研究が進展した。特に今まで実体が不明であった肢帯型筋ジストロフィーの解明が進みつつあることの意義は大きい。埜中班員らは常染色体劣性遺伝をとる肢帯型筋ジストロフィー80例についてカルパイン3遺伝子変異を調べ21名(28%)に変異を認めた。その中で4種類の変異が日本人の変異の72%を占めることを明らかにした。石原班員らは欠失、重複を認めないデュシェンヌ型筋ジストロフィーでジストロフィン遺伝子のシーケンスを行い、微小欠失や点変異を見いだし、遺伝相談に役立てることができた。石川班員らはジストロフィン遺伝子研究のためのmRNAバンクを樹立した。宮内班員らは小児の特に先天性ミオパチー、先天性筋ジストロフィーの病理学的研究をまとめた。高橋班員らは本邦できわめてまれなサルコグリカノパチーの症例をバンクの中から見いだし、その遺伝子解析を進めている。②筋疾患とアポトーシス:岩崎班員らはRRNに登録されている検体の中から各種疾患の病態についてアポトーシスの観点から検討を進めた。生検組織にin situ nick translation法を応用してSingle Strand Breaks (SSB)の検出を試み、DNA障害の病態への関与について検討した。筋疾患では筋炎、眼咽頭型筋ジストロフィーでSSB増加が認められた。埜中班員らはRimmed vacuoleを伴う遠位型ミオパチーにおいて核の変性を高率に電子顕微鏡的に証明し、またTunel法でもそれらが陽性に出て、アポトーシスの関与を証明した。③その他:橋本班員らは末梢神経における神経周膜の基底膜異常について研究し、ラミニン、メロシンの発現について検討した。糖尿病や多発性神経炎ではラミニンの減少があることを見いだした。木村班員は東北地方のRRNの拠点となるべく大学などとも共同し検体の収集に当たった。多施設との共同研究の基盤を作ったことの意義は大きい。渋谷班員らはRRNの構築や運用面について努力した。その基盤を作り、登録が容易となるようにした。過去3年間でRRN(Research Resource Network:研究資源バンクネットワーク)研究では、研究に使用する検体の保存、使用について十分な論議を尽くし、倫理面をクリアしたことが大きい。さらに全国規模での患者生検材料の登録がHOSPnetを通じて可能になったことで、全国レベルでの共同研究が進んだことの意義も大きい。最終年度はすでにRRNに登録されている検体が使用され、種々の研究がスタートしたことは特筆すべきことである。特に国立精神・神経センターを中心としたRRNの共同研究が進んだ。研究成果は幾つかの国際
誌にすでに掲載された。
結論
本RRN研究により、検体を利用しての研究がスタートした。筋ジストロフィー、特に肢帯型の分子生物学的研究が進んだ意義は大きい。また診断面でもジストロフィン遺伝子の微細変異をみつける試みがなされたことは、遺伝相談に不可欠であり、本RRN研究がなければできなかったことであろう。今後、バンクの材料を利用しての研究が進行するよう、さらにサポートしたい。

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