身体障害者手帳に関する調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900265A
報告書区分
総括
研究課題名
身体障害者手帳に関する調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 紘士(立教大学)
研究分担者(所属機関)
  • 赤塚光子(立教大学)
  • 植村英晴(日本社会事業大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昭和24年に身体障害者福祉法が公布され身体障害者手帳が規定されて以来、手帳の基本的な様式は変更されていない。しかし、当初は、福祉サービスの利用においてのみ活用することが想定されたが、その利便性から、鉄道運賃割引等広範なサービス利用の証票として広く活用されている。このような状況を受け、プライバシー保護や、携帯のしやすさ等を配慮すると、近年の電子技術の発展をふまえて、カード化等の新しい方式の導入が検討する時期が熟したと考えられる。これらの検討の基礎資料を収集することを目的に本研究が実施された。
研究方法
①身体障害者手帳にかかる実態調査について 本年度は身体障害者関係団体の協力を得て、1850人の調査客体に調査を行い1417人の回答を得ることができた。その結果を集計して障害当事者の身体障害者手帳についての意識を明らかにすることができた。そして、この要望をふまえてカード化のありかたについて技術的検討を行うことができた。
②外国の状況調査 各国の身体障害者にかかわる手帳制度の概要、手帳の様式について各国に居住する 身体障害者またはその関係者に依頼し詳細な調査を実施した、調査したのはアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、デンマークの6カ国である。これまでほとんどあきらかにされなかった外国での手帳類似制度の実態をあきらかにすることができた。
③技術的な可能性について調査 ICカード等電子カードの技術は現在急速に進歩しつつあり、磁気カードからICカードへそして、接触型のカードから非接触型のカードが今後主流になろうとしている。また、光カード等も活用されはじめている。これらのアプリケーションの実態を調査するとともに、身体障害者手帳の特性をふまえて、どのような形態がカード化として望ましいかの検討をおこなった。カード化するとカード表面に記載する情報と電子化する情報の振り分け、また、発行方式、書き込み、読みとりの必要性、サービスカードとしての活用と本人確認の手段等のあり方など検討をおこなった。
結果と考察
身体障害者手帳の変遷について検討し、そのうえで、身体障害者手帳のカード化について技術的検討をおこなった。その結果、障害者手帳のカード化は本人確認の簡易な手段としてプライバシー保護を両立させるために、カード化の検討を行う必要があり、近年のカード技術の進展と、カードシステムのアプリケーションの普及をふまえて、その適切のありかたを検討する必要があるという結論に達した。
また、外国の手帳制度の検討によれば、身体障害者手帳は、障害の種類と程度を予め認定し、これを証明することで福祉サービスの対象者をその都度認定する必要がない、このために手帳を根拠としたさまざまな福祉施策の拡大が可能となったなど有効な面がある。したがって、ドイツやフランスなどは、我が国の身体障害者手帳と類似した制度を採用していると思われる。しかし、障害者のニードは、年齢や環境によって変化するものであり、この変化に対応できるのか。差別や偏見の温床とならないか。一度認定されたサービス受給資格が既得権化しないかなどの問題があり、この手帳を採用していない国もある。特に、パーソナル・ナンバーの制度を採用しているスウェーデン、自治体が障害者に対する福祉サービスを公的に提供しているイギリスやデンマークでは手帳の必要性は低くなっているものと考えられる。
調査からの結論としては、身体障害者手帳は身体障害者福祉サービス以外のサービス利用にも多く使用されている。福祉関係者以外の目に触れる機会も多くなっている。昭和20年代に定められて以 来大きな変更のない身体障害者手帳については、紙製のための破損、古い写真がそのま ま使用されている、点字が必要、体裁の問題などが指摘されている。カード化には半数 以上が賛成している。わからないとした回答もあり、カードのイメージを明確に示す必要がある。内部情報とした方がよい内容、新たに組み込む内容などの検討も必要である。
なお、この研究の過程でアンケート調査を実施した。その際、回答者のプライバシーを配慮し、アンケート調査は無記名で実施し、個人が特定できないような調査結果の処理をおこなった。
結論
今後身体障害者手帳の位置づけは障害保健福祉制度の動向と不可分ではないが、さしあたり、現行の身体障害者手帳の体系を維持しつつ、カード化への移行することもプライバシーの保護とサービス給付を両立させるうえで有効と考えられる。

公開日・更新日

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