肥満、糖尿病、胆石症の新しい関連遺伝子、コレシストキニン-A受容体遺伝子

文献情報

文献番号
199900191A
報告書区分
総括
研究課題名
肥満、糖尿病、胆石症の新しい関連遺伝子、コレシストキニン-A受容体遺伝子
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
宮坂 京子(東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 船越顕博(国立病院九州がんセンター)
  • 大久保賢治(東京都老人医療センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活習慣病は、遺伝的要素と生活習慣の相乗または相加効果によって発症し増悪する。また、生活習慣病は、単一遺伝子異常によって生じる遺伝子病ではない。今回我々が提起したCCK-A受容体遺伝子異常という病態も、単一の原因とはなりえないと思われるが、運動不足、過食などが重なった場合、または、別の遺伝子異常が存在した場合、生活習慣病の発症頻度が増加する可能性が高い。ハイリスクの個体を早期に発見し、適切な指導をおこなうことにより、疾患の発生を予防することができれば、本人、家族、社会にとって、非常に有意義である。さらに遺伝子ターゲッティングマウスの作成に成功したので、病因、病態の追及の手段としても用いている。
研究方法
Capsite hunting法によりCCKAR遺伝子のプロモーター領域を決定する。さらに、プロモーター領域2ヵ所に塩基配列置換を認めていることから、大規模疫学調査を行うために、より簡便なミスマッチプライマーを用いるPCR-RFLP法を開発し、住民検診(長寿医療センター、長期縦断疫学研究=NILS-LSA)について肥満度(BMI)、体脂肪量、血清レプチン濃度、胆石症、糖尿病、高脂血症のチェックを行う。さらに、β3アドレナリン受容体(β3AR)遺伝子異常との比較、および年齢別発生頻度を確認する。また、CCK-A受容体遺伝子ノックアウトマウスの食餌内容を変化させ、病態の発現をしらべる。
結果と考察
Capsite Hunting法により、ヒトCCK-A受容体プロモーター領域の読み始め(ATGより205塩基上流)を決定した。プロモーター領域の塩基置換(G→T:-128, A→G:-81)の有無を検討する簡便なるPCR-RFLP法を確立できた。これをもとに40-70才代約1300人の住民検診の結果、CCKAR遺伝子多型は約40%に認めた。そのうち、ホモ異常(T/T, G/G)は約2%に認められ、肥満(体脂肪増加)、血清レプチン、インスリン濃度上昇との有意関連性が示唆された。β3AR遺伝子多型はホモ(A/A)、ヘテロ(T/A)を約32%に認め、BMI上昇との有意関連を示した。80歳以上の高齢者と比較しても、遺伝子多型発生頻度は年齢による差がなかった。ノックアウトマウスでは、体重の重いホモ欠損マウスで胆石形成がみられた。
結論
CCK-A受容体多型を有する個体は、成人後の肥満を生じる可能性が高く、糖尿病での高脂血症の危険因子である可能性がある。今後モデル動物で機序のさらなる検討が必要である。

公開日・更新日

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