高齢者脳機能賦活療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
199900166A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者脳機能賦活療法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 英俊(国立療養所中部病院)
研究分担者(所属機関)
  • 宇野正威(国立精神・神経センター武蔵病院)
  • 難波吉雄(東京大学大学院医学研究科)
  • 久保田競(日本福祉大学情報科学部)
  • 酒田英夫(日本大学医学部生理学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者脳機能障害において、特に記憶障害や見当識障害に対して反復法や言語的方法、視覚刺激などの非薬物療法による全く新しい賦活療法の開発を行うことを目的としている。
研究方法
回想法、音楽療法をはじめとして非薬物療法の現状と評価を行った。研究対象は早期の痴呆患者や加齢に伴う記憶障害を示す程度の患者であり、脳機能の賦活を目的とした介入的治療法を開発することを最終目標とした。具体的には記憶障害を認め、ミニメンタルステート検査で19点以上の患者を対象とする。そのためにはまず早期診断法の基準設定を行い、各研究班員の間で診断基準を一定とすること、次に記憶そのものを改善させるための神経生理学的に意味のある訓練方法を検討し開発することとした。遠藤班員はトレーニング用のカードとパソコンのソフトを検討した。宇野班員は物忘れ外来の軽症の痴呆症の患者の分析を行った。難波班員は香りを用いた賦活療法の開発を検討した。久保田班員は前頭葉の機能を賦活する方法をを検討した。さらに酒田班員は頭頂連動野の研究を通じて記憶との関連に関する研究を行った。
結果と考察
遠藤班員は手段的ADLの訓練療法の開発をめざし、4枚のカードにより手続きの順番を設定する訓練療法を開発した。さらに室内の風景を暗記してもらい直後に再生のテストを行う記憶のトレーニングを目的としたパソコンを用いたプログラムの開発を行った。宇野班員は物忘れ外来で痴呆疑い群(MMSEで24-30点)、軽症痴呆群(MMSEで19-23点)を縦断的に経過を追ったところ、痴呆疑い群は進行が緩やかであり、年平均低下率は1.1であった。一方軽症痴呆群は進行が早く年平均低下率は2.0であった。ただし健康は配偶者は介護をしている場合は進行がゆっくりであるという結果を得た。難波班員は香りを用いた脳機能賦活療法の検討を行い、香りは大脳の血流の増加作用があること、マウスでも香りによる学習行動の改善作用があることを報告した。久保田班員は前頭葉性の記憶の賦活をめざしてペルマックスを利用したところ反応時間の短縮、運動時間の延長をきたし、ある程度の効果を示した。酒田班員は頭頂連合野の運動制御の役割を調べる目的で、失行症と区間記憶との関係について研究した。その結果操作する目標が対象物のどこにあるのかという相対的位置に選択性を示すニューロンを確認した。
結論
以上の成果により脳賦活療法に必要な要素、因子について検討し、今後の研究の基礎となる研究を行った。すなわち高齢者脳機能賦活療法は初期の軽症において、よい環境でよい刺激を与えることでよい結果が得られる可能性があることを示唆した。

公開日・更新日

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