文献情報
文献番号
199900045A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質による緊急健康危害対応のための情報に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
山本 都(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
- 高井貴子(国立医薬品食品衛生研究所)
- 後藤京子((財)日本中毒情報センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
-
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
化学災害、毒物中毒事件、化学テロなど化学物質による緊急の健康危害発生時の対応に必要な各種情報の整備はまだ不十分な点も多い。また情報がたとえ存在していても所在等が明らかでないため、必要な時に有用な情報を迅速に入手できない場合も見られている。こうしたことから、緊急時対応のための情報整備を目的に、わが国では情報量の少ない化学剤に関する情報調査および国内外の健康危機管理に関する有用な情報の調査を行った。また各分野の専門家会合を開き緊急時対応のための情報について議論した。Web上の膨大な情報の中から危機管理関連の目的の情報を効率よく検索するための検索エンジンを開発した。また、中毒発生時に既存のデータから原因物質候補を絞り込むためのデータベースを開発した。
研究方法
各種データベース検索、Webサイト検索、国外の専門書などの調査により、化学剤の各種情報の調査(物質の種類、物性、毒性、除染法等)、および海外の健康危害対応機関、事故・事件対応マニュアル、対応事例、その他の関連情報の調査・分析を行った。
救急、薬物分析、化学剤等に関する各分野の専門家会合を開催し、危害発生時の対応における留意点や問題点等について討議した。
今回調査した国内外の健康危害対応関連サイトを対象とし、情報収集ロボットプログラムとインデックスサーバを用いて検索エンジンを開発した。
原因物質絞り込みデータベースについては、まず仮対象物質の抽出、キーワードの選定、検索方法の検討を行い、キーワードやデータを作成して、検索システムをサーバー上に構築した。
救急、薬物分析、化学剤等に関する各分野の専門家会合を開催し、危害発生時の対応における留意点や問題点等について討議した。
今回調査した国内外の健康危害対応関連サイトを対象とし、情報収集ロボットプログラムとインデックスサーバを用いて検索エンジンを開発した。
原因物質絞り込みデータベースについては、まず仮対象物質の抽出、キーワードの選定、検索方法の検討を行い、キーワードやデータを作成して、検索システムをサーバー上に構築した。
結果と考察
(1)緊急健康危害対応のための情報に関する研究
化学兵器を含め化学テロ等に使用され得る物質(ここでは化学剤、Chemical Agents と記載する)に関する情報はわが国では非常に少ないが、欧米、特に米国では印刷物、データベース、Webなどからさまざまな情報が提供されている。米国を中心に化学剤に関する有用な情報を調査し、重要な情報をまとめた。また、緊急時に、必要な情報を迅速に探し出せるように、健康危機管理に関する国内外の情報を調査し、印刷物、データベース、Web情報などから有用な情報をリストアップした。Webに「健康危機管理関連情報ホームページ」を構築し、関連情報の調査結果および(2)で開発した検索システムを搭載して危機管理関連情報の検索の迅速・簡便化をはかった。
健康危害対応の先進国である英国や米国では、どのように中毒センターがその役割を果たしているかを調査し、わが国に同様の体制を導入するために必要な要件を探った。英国、米国ともに、中毒治療に適切なアドバイスができるclinical Toxicologistの養成コースが確立しており、わが国においても臨床中毒専門家の養成が急がれる。
関連各分野の専門家による会合を開催し、危機管理対応における問題点や留意点等を検討すると共に、必要に応じて情報や意見を交換できるネットワークを構築した。
(2)健康危害対応のための情報検索システムおよびデータベースの開発
健康危機管理情報検索システム:危機管理関連分野の有用な情報を迅速に検索するため、この分野の情報に特化した検索エンジンを開発し、(1)で調査したWebサイトを組み込んだ。さらに(1)で構築したWebホームページに搭載して一般の活用をはかった。また、検索システム管理者による更新データのウォッチを容易にするため、一般利用者向けと管理者用の2種類の検索エンジンを作成した。
原因物質絞り込みデータベース:中毒患者の初期症状、異常臨床検査値、物質の色やにおい、味などのキーワードを入力して、分析対象候補(原因物質)を絞り込み、絞り込んだ物質名に関する症状データを画面で確認しながら、使用者が分析対象物質を絞り込むデータベースをインターネット用に開発した。対象薬毒物は毒物・劇物、腐食性物質、ガス、自然毒などである。収載物質からの絞り込み的中率を計算したところ、期待よりも低い結果であったが、原因物質数の増加や症状種類別の点数適正化作業により、十分に実用可能であると考えられた。
化学兵器を含め化学テロ等に使用され得る物質(ここでは化学剤、Chemical Agents と記載する)に関する情報はわが国では非常に少ないが、欧米、特に米国では印刷物、データベース、Webなどからさまざまな情報が提供されている。米国を中心に化学剤に関する有用な情報を調査し、重要な情報をまとめた。また、緊急時に、必要な情報を迅速に探し出せるように、健康危機管理に関する国内外の情報を調査し、印刷物、データベース、Web情報などから有用な情報をリストアップした。Webに「健康危機管理関連情報ホームページ」を構築し、関連情報の調査結果および(2)で開発した検索システムを搭載して危機管理関連情報の検索の迅速・簡便化をはかった。
健康危害対応の先進国である英国や米国では、どのように中毒センターがその役割を果たしているかを調査し、わが国に同様の体制を導入するために必要な要件を探った。英国、米国ともに、中毒治療に適切なアドバイスができるclinical Toxicologistの養成コースが確立しており、わが国においても臨床中毒専門家の養成が急がれる。
関連各分野の専門家による会合を開催し、危機管理対応における問題点や留意点等を検討すると共に、必要に応じて情報や意見を交換できるネットワークを構築した。
(2)健康危害対応のための情報検索システムおよびデータベースの開発
健康危機管理情報検索システム:危機管理関連分野の有用な情報を迅速に検索するため、この分野の情報に特化した検索エンジンを開発し、(1)で調査したWebサイトを組み込んだ。さらに(1)で構築したWebホームページに搭載して一般の活用をはかった。また、検索システム管理者による更新データのウォッチを容易にするため、一般利用者向けと管理者用の2種類の検索エンジンを作成した。
原因物質絞り込みデータベース:中毒患者の初期症状、異常臨床検査値、物質の色やにおい、味などのキーワードを入力して、分析対象候補(原因物質)を絞り込み、絞り込んだ物質名に関する症状データを画面で確認しながら、使用者が分析対象物質を絞り込むデータベースをインターネット用に開発した。対象薬毒物は毒物・劇物、腐食性物質、ガス、自然毒などである。収載物質からの絞り込み的中率を計算したところ、期待よりも低い結果であったが、原因物質数の増加や症状種類別の点数適正化作業により、十分に実用可能であると考えられた。
結論
本研究においては、緊急の健康危害対応のための情報整備を目的として、1)化学剤に関する情報の調査、2)健康危機管理に関連する情報源の調査、3)Webホームページの開設および健康危機管理に関連する情報源の提供、4)関連分野の専門家の情報・意見交換、を行った。また、参考書や資料に関しては、必要なものの所在がわかっても入手困難な場合がよくあるので、今回の調査で抽出された有用な情報源(資料、参考書、学術文献等)については、できるだけ入手につとめた。したがって、これらの情報が必要になった場合、迅速に提供することが可能である。今回の化学剤の調査は、全体像をまとめることに主眼をおいたが、今回調査・入手した資料には、個々の化学剤について症状、治療法、保護具などの詳細な情報が収載されている。今後特に重要な化学剤に関しては、こうした詳細な情報を日本語資料として用意しておくことも必要と考えられる。今回の研究の一環として開催した専門家会合により、分野横断的な専門家のつながりができたので、今後もこのつながりを維持し情報や意見を交換して、緊急時の対応に生かしていくことが重要である。
Web上の膨大な情報の中から健康危機管理に関連する目的の情報を検索するのは、情報の専門家にとっても容易な作業ではない。本研究では健康危機管理関連分野の情報に特化した検索エンジンの開発およびWebページへの搭載により、目的の情報を効率よく探索することが可能になった。また、インターネット上で利用できる、症状からの原因物質絞り込みデータベースを構築した。本システムはキーワードだけでなく、抽出された物質の詳細なデータを表示するため、臨床知識があまりなくても利用可能である。
Web上の膨大な情報の中から健康危機管理に関連する目的の情報を検索するのは、情報の専門家にとっても容易な作業ではない。本研究では健康危機管理関連分野の情報に特化した検索エンジンの開発およびWebページへの搭載により、目的の情報を効率よく探索することが可能になった。また、インターネット上で利用できる、症状からの原因物質絞り込みデータベースを構築した。本システムはキーワードだけでなく、抽出された物質の詳細なデータを表示するため、臨床知識があまりなくても利用可能である。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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