スモン

文献情報

文献番号
199800875A
報告書区分
総括
研究課題名
スモン
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
岩下 宏(国療筑後病院)
研究分担者(所属機関)
  • 小長谷正明(国療鈴鹿病院)
  • 小西哲郎(国療宇多野病院)
  • 千田光一(日本大神経)
  • 早原敏之(国療南岡山病院)
  • 松本昭久(市立札幌病院)
  • 伊藤久雄(国療岩手病院)
  • 中江公裕(獨協医大公衆衛生)
  • 西條一止(筑波技術短大鍼灸)
  • 宮田和明(日本福祉大社会福祉)
  • 飯田光男(国療鈴鹿病院)
  • 明石謙(川崎医大リハ)
  • 安藤徳彦(横浜市立大病院)
  • 池田修一(信州大三内)
  • 乾俊夫(国療徳島病院)
  • 上田進彦(大阪市立総合医療センター)
  • 内野誠(熊本大病院)
  • 岡本幸市(群馬大神内)
  • 岡山健次(大宮赤十字病院)
  • 片桐忠(山形県立河北病院)
  • 加知輝彦(国療中部病院)
  • 加藤佐敏(石川県健康推進課)
  • 加藤昌弘(愛知県保健予防課)
  • 北川達也(国療西鳥取病院)
  • 姜進(国療刀根山病院)
  • 吉良潤一(九州大神内)
  • 黒田康夫(佐賀医大内)
  • 小寺良成(岡山県健康対策課)
  • 佐藤正久(新潟大神内)
  • 三宮邦裕(大分医大三内)
  • 塩澤全司(山梨医大神内)
  • 渋谷統寿(国療川棚病院)
  • 島功二(国療札幌南病院)
  • 庄司進一(筑波大臨床内)
  • 杉野成(京都府健康対策課)
  • 杉村公也(名古屋大保健)
  • 祖父江元(名古屋大神内)
  • 高瀬貞夫(広南病院)
  • 高橋桂一(国療兵庫中央病院)
  • 高橋光雄(近畿大神内)
  • 高柳哲也(奈良県立医大神内)
  • 高山佳洋(大阪府保健予防課)
  • 竹内博明(香川医大看護)
  • 田島康敬(釧路労災病院)
  • 田村正秀(北海道保健福祉部)
  • 千田富義(秋田県立リハセンター)
  • 千野直一(慶応義塾大リハ)
  • 寺澤捷年(富山医薬大和漢)
  • 中瀬浩史(虎の門病院)
  • 中野今治(自治医大神内)
  • 西郡光昭(宮城教育大教育)
  • 長谷川一子(北里大内)
  • 蜂須賀研二(産業医大リハ)
  • 服部孝道(千葉大神内)
  • 花籠良一(南昌病院)
  • 林理之(大津市民病院)
  • 平山幹生(福井医大二内)
  • 廣瀬和彦(東京都府中療育センター)
  • 福永秀敏(国療南九州病院)
  • 松永宗雄(弘前大脳研)
  • 丸尾泰則(市立函館病院)
  • 丸山征郎(鹿児島大臨検)
  • 三浦英男(福島県立リハ飯坂温泉病院)
  • 溝口功一(国立静岡病院)
  • 森松光紀(山口大神内)
  • 森若文雄(北海道大神内)
  • 山下元司(高知県立芸陽病院)
  • 山下順章(松山赤十字病院)
  • 山田淳夫(国立呉病院)
  • 山中克己(名古屋市立中央看護専)
  • 吉田宗平(和歌山県立医大神経)
  • 渡辺幸夫(大垣市民病院)
研究区分
特定疾患調査研究補助金 臨床調査研究グループ スモン調査研究班
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
0円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
A.スモンの医療と福祉の連携 B.スモン患者のQOLの向上
研究方法
平成8、9年度同様、「医療システム委員会」所属メンバーによる全国スモン患者検診・現状調査を続行するとともに、9年度新たに実施した「介護に関するスモン現状調査」もこれに連動して継続した。これらスモン患者の介護を含む現状調査を基礎として、全国スモン患者、各ブロック、各地区の現状、若年発症スモン、QOL、合併症、病態、自律神経、剖検例などを調査研究した。
結果と考察
1. スモン検診結果・現状調査 ; 8年度1042名、9年度1142名に比し、10年度は全国スモン患者1040名(健康管理手当受給者の33.3% )の現状が個人調査票を使用して検診報告された。男女比1:2.7、60歳以上87.0%、年齢のピークは65-80歳にあった。障害度は極めて重度4.8%、重度17.9%、中等度44.4%、軽度25.5%、極めて軽度2.6%、障害要因はスモン43.6%、スモン+合併症43.9%、下肢筋力低下・感覚障害ともに90%、自律神経障害75%以上、白内障・高血圧・脊椎疾患が主な合併症であると報告された。
北海道地区では、15名の重症在宅患者訪問検診を含む13名について、75名(61%)は保健婦訪問を受け、常時要介護者は13名であったが、106名が将来の不安を訴えていたと報告された。東北地区では、109名が検診され、64歳以下の群で65-74歳、75歳以上の群より錐体路障害が強かったが、感覚障害に年齢の差はなかったと報告された。関東・甲越地区では、インターネット、スモン検診ニュース発行で検診の案内を行い、新患10名、在宅検診36名含む240名を検診し、この11年間で健康管理手当受給者の77.0%に相当する595名を検診したと報告された。中部地区では、148名が検診され、60歳以上84.2%、75歳以上35.6%、若年発症者5.4%(8名)、介護に対する不安65%(若年者では87.5%)であり、今後公的介護支援システム、福祉サービス充実が必要と報告された。近畿地区では、136名が検診されたが、平均年齢は前年より2.6歳高い74歳、81歳以上の超高齢者36名(26.5%)、合併症のうち、白内障と整形外科領域疾患が高齢化とともに高頻度であり、急速な高齢化対策が必要と報告された。中国・四国地区では、198名が検診され、障害度や痴呆は高齢化によって悪化しているが、老年後期になると不安と焦燥が減少し、満足感は高まったと報告された。九州地区地区では、90名が検診され、白内障と高血圧は高齢者と女により高頻度であるが、腎・泌尿器疾患は男に多かったと報告された。その他函館・釧路地区、福島県、長野県、新潟県、福井県、静岡県、兵庫県、島根県などにおけるスモン患者の現状が報告された。
2. 介護に関するスモン現状調査 ; 平成9年度同様、「介護に関するスモン現状調査個人票」を用い、検診と同時に調査した。回収された調査票は、1030名分で、749名(72.7%)は9年度も調査されていた。男273名(26.5%)、女757名(73.5%)、50歳未満3.7%、50-64歳25.0%、65-74歳37.6%、75-84歳26.5%、85歳以上7.2% 、「毎日介護してもらっている」18.4%、「必要なときに」36.2%、「必要ない」42.8%で9年度と同様であった。全面介助必要者は少なく、部分的介助がほとんどであった。主な介護者は「配偶者」28.9%、「息子・娘」16.4%、「嫁」9.6%など現状では家族によって担われていた。「ホームヘルパー」5.1%で9年度2.5% より増えており、福祉サービス需要漸増を示した。現在および将来の介護について「不安に思う」62.8%、「不安に思うことはない」17.1%であった。
3. 若年発症スモン ; 松永らは、3 歳時発病、5歳時全盲、ほぼ完全下半身麻痺、18歳時神経性食欲不振症を併発した37歳女性例について、医学的・社会的に抱えている諸問題は成人発症例と視点を変えて扱う必要があることを報告した。
4. QOL ; 中江らは、平成5年と10年の検診受診者602名についての検討で、スモン患者の主観的な満足度は精神的問題や社会的活動に関与する問題が重要であることが示唆されたと報告した。西郡らは、平成9年度検診受診者24名について、10年度における生活満足度とADLおよび介護状況との関連を検討した結果、生活満足度は5名で低下、9名で上昇したが、ADLと介護必要度の変化との関連はなかったと報告した。渡辺らは、スモン患者56名へのアンケート調査で、今の生活の中で一番楽しいことは、友達との談笑23名、趣味21名、家族との団らん18名、一番苦しいことはスモンの症状45名、老後の不安20名などであったと報告した。蜂須賀らは、スモン患者の生活満足度評価は55歳以上の在宅一般住民に比し、低かったと報告した。岩下らは、全盲、歩行不能、長期入院の重症スモン患者(67歳、女)の希望に沿って、高級寿司店と一流ホテルへの外出、外泊を支援し、患者・家族が喜んだ点で、QOL向上になったと報告した。
5. その他 ; 小長谷らは、スモン患者の合併症は過去10年間に、白内障、脊椎疾患、四肢関節疾患が1.5ないし2倍に増加したが、文献での一般住民と対比すると、痴呆は85歳以上でスモン患者での有病率が低いことが推定されたと報告した。その他、スモンに関する種々の臨床的、基礎的研究が実施・報告された。
このように、全国スモン患者の介護含む現状が調査され、今後のスモン恒久対策に生かされる貴重な資料が得られたと考えられる。
結論
平成8、9年度と同様の介護含むスモン患者の現状調査を中心として、1. 医療システム委員による全国スモン患者1040名(男:女=1:2.7、60歳以上87.0%、年齢ピーク男女とも65-80歳)が検診された。健康管理手当受給者の33.3%に当り、昭和63年度以来の新検診は53名(5.1%)であった。下肢筋力低下、感覚障害ともに90%にみられ、白内障、高血圧、脊椎疾患等の合併症が高頻度にみられた。
2. 1と連動して「介護に関するスモン現状調査個人票」にもとづいて全国スモン患者1030名(男273、26.5%、女757、73.5%)の介護の実態を調査した。「毎日介護してもらっている」18.4%、「必要なときに」36.2%、「必要ない」42.8% 、主な介護者は「配偶者」28.9%、「息子・娘」16.4%、「嫁」9.6%、「ヘルパー」5.1%(9年度2.5%)などであった。介護保険制度発足等の新たな動きの中で、介護に関する公的・制度的保障への要求が切実度を増すものと予測された。
3. 北海道、東北、関東・甲越、中部、近畿、中国・四国および九州地区スモン患者の現状が同様に報告された。
4. その他各地区におけるスモン患者の現状、若年発症者、QOL、合併症、病態、自律神経、剖検例等が報告された。
5. このように、全国スモン患者の介護含む現状が調査され、今後のスモン恒久対策に生かされる貴重な資料が得られたと考えられる。

公開日・更新日

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