文献情報
文献番号
199800861A
報告書区分
総括
研究課題名
びまん性肺疾患
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 翔二(日本医科大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
特定疾患調査研究補助金 臨床調査研究グループ 呼吸器系疾患調査研究班
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
0円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成10年度は最終年度であり、これまでの2年間に着手した特発性間質性肺炎(IIP)、びまん性汎細気管支炎(DPB)、サルコイドーシスに関わる研究計画の総仕上げを意図するとともに、診断基準見直し、重症度分類の策定などの新たな臨床的課題の遂行を目標とした。
研究方法
3疾患について、臨床的研究課題に関しては臨床疫学的方法、臨床病理学的方法によって、病因・病態解明に関しては特に細胞分子生物学的方法によった。
結果と考察
【特発性間質性肺炎】
1)病因・病態研究:
①肺線維症における新生血管に関して
肺線維症における新生血管に関する情報が不十分であることから、間質性肺炎患者の胸腔鏡下生検肺における血管増殖因子、および新生血管の有無に関して検討した。結果、血管増殖因子として知られるVEGF、bFGF、およびIL-8のいずれもが正常肺に比し高い発現を認め、肺胞毛細血管内皮細胞がCD34陽性であることを明らかにした。また、組織形態計測学的手法により肺胞毛細血管の超微形態変化と線維化の程度に統計学的有意差があることを証明した。今後、肺線維症初期病変における新生血管の作用を利用して新しい治療法の確立に役立てたい。
②IIP病因関連遺伝子の解明
differential display法を用いてIIPの病因関連遺伝子の解明を試みたが、IIP患者の気管支肺胞洗浄(BAL)細胞を用いた検討では、IIPに特異的な結果は得られなかった。現在、ブレオマイシン投与によるマウス肺線維症モデルを対象に、遺伝子発現量の差異を検討中である。
③MMP/TIMPの役割に関して
間質性肺炎の中でも予後良好で治癒可能なタイプであるBOOPと予後不良なIIPとに肺胞腔内線維化の違いのあることから、両者におけるMMPとTIMPの発現の差異を検討し、IIPの不可逆的な線維化形成にTIMPsの関与が示唆される成績を得、腔内線維化の型による差のほかに線維化を構成する細胞自体の形質に差のある可能性が示唆された。また、間質性肺炎における MMP の役割を明らかにするため、種々の間質性肺炎患者の BALFおよび組織中の MMP 発現と病勢および病理組織型(DAD, UIP, NSIP, BOOP)との関連について解析するとともに単球系細胞株を用いた in vitro における検討の結果、一連の線維化機構のなかでMMP が重要な役割を担っており、MMP-9 は肺傷害に、MMP-2 は組織修復や線維化に関与することが示唆された。
2)新しい活動性指標としてのKL-6, SP-A, SP-Dについて:
IIP(17例)における経過観察および急性増悪時のステロイドパルス療法に対する反応性の予測にKL-6が有用なマーカーとなりうるか検討した結果、血清KL-6値は本疾患の経過観察およびステロイドパルス療法に対する反応性の予測に有用なマーカーとなりうることが示唆された。また、SP-A、SP-Dについても、疾患活動性との相関が窺われるとともに、濃度測定日から3年以内の死亡例では生存例に比べSP-A、SP-D濃度は有意に高値で、これらが疾患活動性の評価、悪化速度と生命予後の推定に有用な臨床検査であると思われた。
3)新しい治療法開発(重点班研究部門参照):
N-acetylcysteine吸入療法の有用性に関する研究、HGFを用いた治療の可能性についての検討、肺線維症抑制のためのHVJ-リポゾーム法による遺伝子導入法に関する研究(今年度は特にIL-10)等を行った。また、新しい薬剤の臨床治験を行うより効果的で客観的な共通プロトコールの骨格を検討、策定した。
4)肺線維症合併肺癌への対応と線維化進行例への肺移植:
特発性間質性肺炎における肺癌合併率は15~20%であり、また、線維化進行例は肺移植の対象となる。これらの対策は、臨床的に重要な課題である。
①肺癌発生基盤に関する気道上皮細胞の分子遺伝学的解明に関して
IIP合併肺癌6例についてIIPの前癌病変としての性質を検討するため、肺癌病変部および間質性肺炎病変部のFHIT遺伝子を中心とした第3染色体短腕領域の染色体異常を検討した結果、肺癌病変部では 6例中 4例のヘテロ接合性の消失を認め、IIP病変部では 6例中 5例でヘテロ接合性の消失を認めた。以上よりIIP病変中に癌化へ向かう遺伝子異常の一部が存在することが予想され、IIP病変が前癌病変である可能性が示唆された。
②肺癌の化学療法の及ぼす肺傷害と急性増悪に関して
IIP合併肺癌の化学療法による増悪に対処するため、抗がん剤による肺傷害の臨床的特徴を明らかにする必要があり、新規抗がん剤の単剤投与により肺傷害を発症した肺癌13例(特発性間質性肺炎( IIP )合併4例)を対象に臨床的特徴を検討した。結果、病型として慢性型、急性型(AIP及びBOOPパターン)、好酸球肺炎型があり、しかも同一薬剤でも異なる病型の肺傷害を呈する場合のあることが確認された。また、既存にIIPを合併する場合の急性増悪頻度は高く、IIP合併肺癌における化学療法はきわめて慎重に行うべきこと、新規抗ガン剤の治験対象としてはこれらの症例を避けるべきことを喚起した。
③肺移植の新しい保存法に関して
すでに進行した特発性間質性肺炎は肺移植の適応であり、ドナー肺不足の軽減のための肺の有効な保存法開発を目指して、新たに開発した肺保存液new ET-Kyoto液中の成分であるジブチリルサイクリックAMP(db-cAMP)の肺保存における有効性を検討した。その成果、肺シャント率、最高気道内圧、再潅流後の実験肺湿乾重量比は、いずれもdb-cAMP添加群ではcontrol群に比べ有意に低値であり、透過電子顕微鏡を用いた検討でも血管内皮細胞に対するdb-cAMPの保護効果が認められ、db-cAMPは肺冷保存・虚血再潅流に伴う障害を軽減することが示された。
5)NSIPの現時点の位置づけ:
NSIP(分類不能型間質性肺炎)は、1994年 Katzensteinにより報告された病理組織学上の概念であり、わが国の特発性間質性肺炎(IIP)の疾患概念との関連で混乱を招いている。この点に関して全国規模のセミナーを開催し、わが国におけるNSIP症例について臨床像、CT所見等を検討するとともに、IIPを含む一連の間質性肺炎群の今日における位置づけを明らかにした。すなわち、NSIP は臨床的には亜急性の経過で、呼吸困難、乾性咳、時に発熱を認め、胸部X線およびCTではconsolidation、ground-glass opacityを示す例が多いが、軽度の蜂巣肺を認めることがあり、一般にUIPに比しステロイド感受性が高く、予後も良好であった。現時点では、独立疾患ではなく、肺の臓器病理診断名として、基本的な同意を得た。
6)重症度分類の策定:
現行の4段階分類と整合性をもたせたIIPの新しい重症度分類の策定を行った。班員施設の症例検討を通じて、現行分類の基礎となる安静時PaO2のみならず、運動時のSpO2の低下が本疾患に特徴的でった。そのため、現行分類に、運動負荷後のSpO2低下、肺活量、画像上の病変の広がり、および肺胞上皮由来マーカー(LDH、KL-6、SP-A、SP-D)を評価項目に加えた。また、1年ごとの再評価を必須項目とし、併記項目を設けた。
【びまん性汎細気管支炎】
1)人種依存性と遺伝性要因の解明:
本疾患が東アジアに集積する人種依存性疾患であることを明確にするとともに、日韓協力による研究を通じて疾患感受性遺伝子が、第6染色体上のHLA-A、B座間の特定マイクロサテライト近傍にある可能性を指摘し得た。これらは本研究班の特筆すべき成果である。
2)EM療法の作用機序の解明:
末梢病変については病態とEMによる反応が明らかとなったが、作用機序については未だ不明な点が残されている。また、14員環マクロライドの構造と活性の相関については、従来の抗菌活性とモチライド作用に対し、気道分泌抑制作用、単球・マクロファージ分化誘導作用ならびにリンパ球増殖抑制作用など抗炎症作用が独立した活性を持つことが明らかにされた。細胞内シグナル伝達系への作用についても遺伝転写・発現調節作用を有するNFκB、AP-1などの活性について、初期的な成果が得られた。
3)DPBにおける末梢気道浸潤細胞の免疫組織学的検討:
呼吸細気管支に限局したリンパ球サブセットは特定されなかったが、高IgA血症に関与するサイトカインが、細気管支壁浸潤Th細胞で確認された。また、肺胞マクロファージ、細気管支上皮、平滑筋等にMCP-1が陽性であり、炎症細胞動員の役割が示唆された。
4)DPB重症度分類の策定
分類の指標として動脈血酸素分圧(PaO2)を用い、1級から5級に分類した。また、咳、痰、労作時息切れなどの主要症状と日常生活における障害の程度を、補助指標として級別に併記した。
5)治療指針の策定及び副作用調査
14員環マクロライド療法について、投与量、投与期間、副作用などを過去の報告と全国アンケート調査によって分析し、重症度別の治療指針を策定した。
6)DPB診断基準の改訂(第3次改訂)
①主要臨床所見を診断上の重要度によって、必須・参考項目に区別し、診断の判定を「確実」、「ほぼ確実」、「可能性有り」の3段階に分けた。また、鑑別を要する疾患のうち、気管支喘息と肺気腫を除外し、線毛不動症候群、閉塞性細気管支炎、嚢胞性線維症を新たに記載した。
②「概念」に、病理組織所見として「泡沫細胞の集簇」を記載した。
③韓国人症例ではHLA-A11の保有率が高いことから、HLAに関する記述を修正した。
【サルコイドーシス】
1)病因としてのP. acnes の役割の明確化について:
①病変部のDNA定量解析に関して、昨年度研究報告時点でP acnes が検出されない症例(20%: 3/15〕が存在したことから、本年度新たにQPCR検出系を確立して検討を行った。その結果、P. acnes陰性の3症例ではP. grnulosum DNAが高濃度に検出された。従って、サ症病変部リンパ節ではP. acnes あるいはP. grnulosum が全症例にて高濃度に検出され、結核菌DNAは全く認めなかった。
②患者血清によるP. acnes遺伝子ライブラリーのスクリーニングに関して、もっとも有望と考えられるRP35蛋白抗原に関して集中的に検索を進めた。 その結果、RP35蛋白抗原はP. acnes菌体中に存在する79kDaの蛋白質のC未端側領域に相当すること判明し、現在79kDa 蛋白遺伝子の上流側遺伝子の塩基配列を解読中である。また、 RP35のアミノ酸配列から特に抗原性の高い3種の合成ペプチド抗原を作製して、末梢血リンパ球との細胞性免疫反応を検討した結果、健常人やリウマチ患者はこれらのペプチド抗原に対してほとんど反応性を示さず、サ症および結核患者で高い反応性が検出された。
2)重症度分類の策定:
本疾患は多臓器疾患であり、呼吸器病変、心病変、眼病変のそれぞれに関して、現行の身体障害(内部障害)の等級に準じて点数化し、その総和によって分類する新たな重症度分類を策定した。
1)病因・病態研究:
①肺線維症における新生血管に関して
肺線維症における新生血管に関する情報が不十分であることから、間質性肺炎患者の胸腔鏡下生検肺における血管増殖因子、および新生血管の有無に関して検討した。結果、血管増殖因子として知られるVEGF、bFGF、およびIL-8のいずれもが正常肺に比し高い発現を認め、肺胞毛細血管内皮細胞がCD34陽性であることを明らかにした。また、組織形態計測学的手法により肺胞毛細血管の超微形態変化と線維化の程度に統計学的有意差があることを証明した。今後、肺線維症初期病変における新生血管の作用を利用して新しい治療法の確立に役立てたい。
②IIP病因関連遺伝子の解明
differential display法を用いてIIPの病因関連遺伝子の解明を試みたが、IIP患者の気管支肺胞洗浄(BAL)細胞を用いた検討では、IIPに特異的な結果は得られなかった。現在、ブレオマイシン投与によるマウス肺線維症モデルを対象に、遺伝子発現量の差異を検討中である。
③MMP/TIMPの役割に関して
間質性肺炎の中でも予後良好で治癒可能なタイプであるBOOPと予後不良なIIPとに肺胞腔内線維化の違いのあることから、両者におけるMMPとTIMPの発現の差異を検討し、IIPの不可逆的な線維化形成にTIMPsの関与が示唆される成績を得、腔内線維化の型による差のほかに線維化を構成する細胞自体の形質に差のある可能性が示唆された。また、間質性肺炎における MMP の役割を明らかにするため、種々の間質性肺炎患者の BALFおよび組織中の MMP 発現と病勢および病理組織型(DAD, UIP, NSIP, BOOP)との関連について解析するとともに単球系細胞株を用いた in vitro における検討の結果、一連の線維化機構のなかでMMP が重要な役割を担っており、MMP-9 は肺傷害に、MMP-2 は組織修復や線維化に関与することが示唆された。
2)新しい活動性指標としてのKL-6, SP-A, SP-Dについて:
IIP(17例)における経過観察および急性増悪時のステロイドパルス療法に対する反応性の予測にKL-6が有用なマーカーとなりうるか検討した結果、血清KL-6値は本疾患の経過観察およびステロイドパルス療法に対する反応性の予測に有用なマーカーとなりうることが示唆された。また、SP-A、SP-Dについても、疾患活動性との相関が窺われるとともに、濃度測定日から3年以内の死亡例では生存例に比べSP-A、SP-D濃度は有意に高値で、これらが疾患活動性の評価、悪化速度と生命予後の推定に有用な臨床検査であると思われた。
3)新しい治療法開発(重点班研究部門参照):
N-acetylcysteine吸入療法の有用性に関する研究、HGFを用いた治療の可能性についての検討、肺線維症抑制のためのHVJ-リポゾーム法による遺伝子導入法に関する研究(今年度は特にIL-10)等を行った。また、新しい薬剤の臨床治験を行うより効果的で客観的な共通プロトコールの骨格を検討、策定した。
4)肺線維症合併肺癌への対応と線維化進行例への肺移植:
特発性間質性肺炎における肺癌合併率は15~20%であり、また、線維化進行例は肺移植の対象となる。これらの対策は、臨床的に重要な課題である。
①肺癌発生基盤に関する気道上皮細胞の分子遺伝学的解明に関して
IIP合併肺癌6例についてIIPの前癌病変としての性質を検討するため、肺癌病変部および間質性肺炎病変部のFHIT遺伝子を中心とした第3染色体短腕領域の染色体異常を検討した結果、肺癌病変部では 6例中 4例のヘテロ接合性の消失を認め、IIP病変部では 6例中 5例でヘテロ接合性の消失を認めた。以上よりIIP病変中に癌化へ向かう遺伝子異常の一部が存在することが予想され、IIP病変が前癌病変である可能性が示唆された。
②肺癌の化学療法の及ぼす肺傷害と急性増悪に関して
IIP合併肺癌の化学療法による増悪に対処するため、抗がん剤による肺傷害の臨床的特徴を明らかにする必要があり、新規抗がん剤の単剤投与により肺傷害を発症した肺癌13例(特発性間質性肺炎( IIP )合併4例)を対象に臨床的特徴を検討した。結果、病型として慢性型、急性型(AIP及びBOOPパターン)、好酸球肺炎型があり、しかも同一薬剤でも異なる病型の肺傷害を呈する場合のあることが確認された。また、既存にIIPを合併する場合の急性増悪頻度は高く、IIP合併肺癌における化学療法はきわめて慎重に行うべきこと、新規抗ガン剤の治験対象としてはこれらの症例を避けるべきことを喚起した。
③肺移植の新しい保存法に関して
すでに進行した特発性間質性肺炎は肺移植の適応であり、ドナー肺不足の軽減のための肺の有効な保存法開発を目指して、新たに開発した肺保存液new ET-Kyoto液中の成分であるジブチリルサイクリックAMP(db-cAMP)の肺保存における有効性を検討した。その成果、肺シャント率、最高気道内圧、再潅流後の実験肺湿乾重量比は、いずれもdb-cAMP添加群ではcontrol群に比べ有意に低値であり、透過電子顕微鏡を用いた検討でも血管内皮細胞に対するdb-cAMPの保護効果が認められ、db-cAMPは肺冷保存・虚血再潅流に伴う障害を軽減することが示された。
5)NSIPの現時点の位置づけ:
NSIP(分類不能型間質性肺炎)は、1994年 Katzensteinにより報告された病理組織学上の概念であり、わが国の特発性間質性肺炎(IIP)の疾患概念との関連で混乱を招いている。この点に関して全国規模のセミナーを開催し、わが国におけるNSIP症例について臨床像、CT所見等を検討するとともに、IIPを含む一連の間質性肺炎群の今日における位置づけを明らかにした。すなわち、NSIP は臨床的には亜急性の経過で、呼吸困難、乾性咳、時に発熱を認め、胸部X線およびCTではconsolidation、ground-glass opacityを示す例が多いが、軽度の蜂巣肺を認めることがあり、一般にUIPに比しステロイド感受性が高く、予後も良好であった。現時点では、独立疾患ではなく、肺の臓器病理診断名として、基本的な同意を得た。
6)重症度分類の策定:
現行の4段階分類と整合性をもたせたIIPの新しい重症度分類の策定を行った。班員施設の症例検討を通じて、現行分類の基礎となる安静時PaO2のみならず、運動時のSpO2の低下が本疾患に特徴的でった。そのため、現行分類に、運動負荷後のSpO2低下、肺活量、画像上の病変の広がり、および肺胞上皮由来マーカー(LDH、KL-6、SP-A、SP-D)を評価項目に加えた。また、1年ごとの再評価を必須項目とし、併記項目を設けた。
【びまん性汎細気管支炎】
1)人種依存性と遺伝性要因の解明:
本疾患が東アジアに集積する人種依存性疾患であることを明確にするとともに、日韓協力による研究を通じて疾患感受性遺伝子が、第6染色体上のHLA-A、B座間の特定マイクロサテライト近傍にある可能性を指摘し得た。これらは本研究班の特筆すべき成果である。
2)EM療法の作用機序の解明:
末梢病変については病態とEMによる反応が明らかとなったが、作用機序については未だ不明な点が残されている。また、14員環マクロライドの構造と活性の相関については、従来の抗菌活性とモチライド作用に対し、気道分泌抑制作用、単球・マクロファージ分化誘導作用ならびにリンパ球増殖抑制作用など抗炎症作用が独立した活性を持つことが明らかにされた。細胞内シグナル伝達系への作用についても遺伝転写・発現調節作用を有するNFκB、AP-1などの活性について、初期的な成果が得られた。
3)DPBにおける末梢気道浸潤細胞の免疫組織学的検討:
呼吸細気管支に限局したリンパ球サブセットは特定されなかったが、高IgA血症に関与するサイトカインが、細気管支壁浸潤Th細胞で確認された。また、肺胞マクロファージ、細気管支上皮、平滑筋等にMCP-1が陽性であり、炎症細胞動員の役割が示唆された。
4)DPB重症度分類の策定
分類の指標として動脈血酸素分圧(PaO2)を用い、1級から5級に分類した。また、咳、痰、労作時息切れなどの主要症状と日常生活における障害の程度を、補助指標として級別に併記した。
5)治療指針の策定及び副作用調査
14員環マクロライド療法について、投与量、投与期間、副作用などを過去の報告と全国アンケート調査によって分析し、重症度別の治療指針を策定した。
6)DPB診断基準の改訂(第3次改訂)
①主要臨床所見を診断上の重要度によって、必須・参考項目に区別し、診断の判定を「確実」、「ほぼ確実」、「可能性有り」の3段階に分けた。また、鑑別を要する疾患のうち、気管支喘息と肺気腫を除外し、線毛不動症候群、閉塞性細気管支炎、嚢胞性線維症を新たに記載した。
②「概念」に、病理組織所見として「泡沫細胞の集簇」を記載した。
③韓国人症例ではHLA-A11の保有率が高いことから、HLAに関する記述を修正した。
【サルコイドーシス】
1)病因としてのP. acnes の役割の明確化について:
①病変部のDNA定量解析に関して、昨年度研究報告時点でP acnes が検出されない症例(20%: 3/15〕が存在したことから、本年度新たにQPCR検出系を確立して検討を行った。その結果、P. acnes陰性の3症例ではP. grnulosum DNAが高濃度に検出された。従って、サ症病変部リンパ節ではP. acnes あるいはP. grnulosum が全症例にて高濃度に検出され、結核菌DNAは全く認めなかった。
②患者血清によるP. acnes遺伝子ライブラリーのスクリーニングに関して、もっとも有望と考えられるRP35蛋白抗原に関して集中的に検索を進めた。 その結果、RP35蛋白抗原はP. acnes菌体中に存在する79kDaの蛋白質のC未端側領域に相当すること判明し、現在79kDa 蛋白遺伝子の上流側遺伝子の塩基配列を解読中である。また、 RP35のアミノ酸配列から特に抗原性の高い3種の合成ペプチド抗原を作製して、末梢血リンパ球との細胞性免疫反応を検討した結果、健常人やリウマチ患者はこれらのペプチド抗原に対してほとんど反応性を示さず、サ症および結核患者で高い反応性が検出された。
2)重症度分類の策定:
本疾患は多臓器疾患であり、呼吸器病変、心病変、眼病変のそれぞれに関して、現行の身体障害(内部障害)の等級に準じて点数化し、その総和によって分類する新たな重症度分類を策定した。
結論
【特発性間質性肺炎】
病態研究、新たな臨床診断指標の開発、新しい治療法の開発研究(重点班研究に継続)、臨床上の重要課題(肺癌合併、化学療法の副作用対策)など、複数の視点につき研究を進め、全般に進展が望めた。しかし、IIPの病因解明には迫れていないのが現状で、今後は病因解明に総力を注ぐと共に、患者のQOL改善のための方策を研究する。
【びまん性汎細気管支炎】
EM療法の機序がモチライド作用や抗菌作用とは独立した作用であることが解明され、DPBのHLAハプロタイプと遺伝背景との詳細がより解明された。いずれも結論を導くために、更なる研究・検討が必要であると考えられた。また、韓国症例の検討を考慮し、診断基準の改定が行われた。
【サルコイドーシス】
P. acnesのサ症病因論としての位置づけが、より明確化した。さらに原因抗原の同定が進められ、P. acnesのどの様な抗原が病態形成を引き起こすか、明らかにされるのも近いと思われる。今後は宿主の発症要因につき、解明する必要がある。
病態研究、新たな臨床診断指標の開発、新しい治療法の開発研究(重点班研究に継続)、臨床上の重要課題(肺癌合併、化学療法の副作用対策)など、複数の視点につき研究を進め、全般に進展が望めた。しかし、IIPの病因解明には迫れていないのが現状で、今後は病因解明に総力を注ぐと共に、患者のQOL改善のための方策を研究する。
【びまん性汎細気管支炎】
EM療法の機序がモチライド作用や抗菌作用とは独立した作用であることが解明され、DPBのHLAハプロタイプと遺伝背景との詳細がより解明された。いずれも結論を導くために、更なる研究・検討が必要であると考えられた。また、韓国症例の検討を考慮し、診断基準の改定が行われた。
【サルコイドーシス】
P. acnesのサ症病因論としての位置づけが、より明確化した。さらに原因抗原の同定が進められ、P. acnesのどの様な抗原が病態形成を引き起こすか、明らかにされるのも近いと思われる。今後は宿主の発症要因につき、解明する必要がある。
公開日・更新日
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-
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