シックハウス症候群の診断基準及び具体的対応方策に関する「シックハウス症候群マニュアル」の検証と改正のための研究

文献情報

文献番号
201927010A
報告書区分
総括
研究課題名
シックハウス症候群の診断基準及び具体的対応方策に関する「シックハウス症候群マニュアル」の検証と改正のための研究
課題番号
H30-健危-一般-007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
坂部 貢(東海大学 医学部医学科)
研究分担者(所属機関)
  • 田辺 新一(早稲田大学 創造理工学部建築学科)
  • 高野 裕久(京都大学大学院 工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シックハウス症候群(SHS: Sick House Syndrome)は広義には環境に問題のある住宅での健康障害の総称とされ、狭義には特に気密性の高い建物内で新築や改装等の後に発症しその症状は特定の建物内に限られる健康障害とされる。本研究では、室内環境要因が疑われる健康障害患者の現在の割合や特徴を調査し、予防的対策を新しいマニュアルに反映させるための基本情報を得ることを目的とした。
研究方法
シックハウス症候群(SHS)と化学物質過敏症(MCS)との重複が知られている。SHSの発症には、潜在的な化学物質不耐性が強く影響していることが示唆され、それらを的確に評価できる問診票の整備は、ガイドライン作成上極めて重要である。MillerらやHojoらの基準に加えて、SHSの診断に資する症状に関する質問紙票の候補として、AnderssonによるMM040質問紙票がある。SHS有訴者に対してMM040質問紙票の症状がどの程度あるかを検討した。対象はSHSの疑いで臨床環境医学専門医療機関を受診した60人。同意を得て自記式の質問紙票を配布回収した。質問紙票には以下の項目を含んでいた。性別、年齢、QEESI質問項目、MM040の症状13項目、過去の化学物質曝露、のSHSの定義に関わる項目、アレルギーの有無。回答を集計し、またQEESI質問項目からMillerの化学物質不耐性の強い基準を満たす者の頻度、Hojoの基準に該当する者の頻度を集計した。(角田、宮島他)

室内のSVOC汚染物質に対する指針値の方向性及び今後注目すべき室内のSVOC汚染物質を検討した。(田邉)
結果と考察
各基準該当者について、SHSの定義該当の有無、MM040の症状13項目の症状数を集計した。過去の化学物質曝露に関しては、無回答6人を除き54人中47人(87.0%)がありと回答した。Millerの基準該当者は60人中37人(61.7%)、Hojoらの基準該当者は60人中44人(73.3%)であった。Millerの基準該当者のうちSHS該当は20人、Hojoらの基準該当者では25人がSHS該当であった。MCS基準該当者においてはMM040の症状は4つ以上、更にSHSの基準に該当しないMCS基準単独該当者においては、MM040の症状は5つ以上となった。(角田、宮島他)

高濃度、高頻度で検出される化学物質はSHS発症に関するリスク要因、即ち新たな室内汚染物質として、採用を検討すべきである。住宅の高気密・高断熱化はエネルギー消費量と住み心地と大きな関係がある。シックハウス問題の対策として有害物質の放散が少ない低放散建材を選ぶこと、機械換気システムを挿入することによって定量的な換気量を確保することが大事である。一方で、シックハウス問題を解決するためには24時間換気が必要であるが、居住者によって運転を止める場合もある。(田邉)
結論
SHSの診断には過去の化学物質の曝露を確認し、症状が多く発生している場合を重視することが必要と考えられた。(角田、宮島他)

シックハウス症候群におけるアレルギー疾患の再燃、悪化について、考察、診断するにあたっては、「ある種の化学物質やいわゆる‘シックハウス’の状態は、実験的にも臨床的にも、アレルギー疾患を悪化しうる。」という考え方を基本とし、検討、討議を進め、コンセンサスを得る必要があると考えられる。また、アレルギー疾患に関連する症状の悪化をシックハウス症候群と関連付けて考えることにより、シックハウス症候群を早期に診断できる可能性があることは、極めて重要と考えられる。と結論づけた。(高野)

シックハウス症候群においては、室内空気の質が重要であり、シックハウス症候群の症状改善や発症防止のためには、室内空気質が生体に対して有害とならないようにしなければならない。室内空気質に影響を及ぼす有害因子は多数存在する。化学的因子、生物的因子、物理的因子が主な有害因子となる。これらの因子の発生源は、建築材料、設備機器類、家具など多数存在する。これらの有害因子と居住者の個体因子などが相まって、喘息やアレルギー疾患など、建物内でさまざまな健康障害を引き起こす。室内空気質に対しては、建物だけでなく、私たちの住まい方や暮らし方も強く影響している。と結論づけた。(東)

健康住宅の室内環境を造るためには政府と住宅業者の役割も大切であるが、居住者の生活習慣も関係がある。と結論づけた。(田邉)

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201927010B
報告書区分
総合
研究課題名
シックハウス症候群の診断基準及び具体的対応方策に関する「シックハウス症候群マニュアル」の検証と改正のための研究
課題番号
H30-健危-一般-007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
坂部 貢(東海大学 医学部医学科)
研究分担者(所属機関)
  • 田辺 新一(早稲田大学 創造理工学部建築学科)
  • 高野 裕久(京都大学大学院 工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シックハウス症候群(SHS: Sick House Syndrome)は広義には環境に問題のある住宅での健康障害の総称とされ、狭義には特に気密性の高い建物内で新築や改装等の後に発症しその症状は特定の建物内に限られる健康障害とされる。本研究では、室内環境要因が疑われる健康障害患者の現在の割合や特徴を調査し、予防的対策を新しいマニュアルに反映させるための基本情報を得ることを目的とした。
研究方法
シックハウス症候群(SHS)と化学物質過敏症(MCS)との重複が知られている。SHSの発症には、潜在的な化学物質不耐性が強く影響していることが示唆され、それらを的確に評価できる問診票の整備は、ガイドライン作成上極めて重要である。MillerらやHojoらの基準に加えて、SHSの診断に資する症状に関する質問紙票の候補として、AnderssonによるMM040質問紙票がある。SHS有訴者に対してMM040質問紙票の症状がどの程度あるかを検討した。対象はSHSの疑いで臨床環境医学専門医療機関を受診した60人。同意を得て自記式の質問紙票を配布回収した。質問紙票には以下の項目を含んでいた。性別、年齢、QEESI質問項目、MM040の症状13項目、過去の化学物質曝露、のSHSの定義に関わる項目、アレルギーの有無。回答を集計し、またQEESI質問項目からMillerの化学物質不耐性の強い基準を満たす者の頻度、Hojoの基準に該当する者の頻度を集計した。(角田、宮島他)

室内のSVOC汚染物質に対する指針値の方向性及び今後注目すべき室内のSVOC汚染物質を検討した。(田邉)
結果と考察
各基準該当者について、SHSの定義該当の有無、MM040の症状13項目の症状数を集計した。過去の化学物質曝露に関しては、無回答6人を除き54人中47人(87.0%)がありと回答した。Millerの基準該当者は60人中37人(61.7%)、Hojoらの基準該当者は60人中44人(73.3%)であった。Millerの基準該当者のうちSHS該当は20人、Hojoらの基準該当者では25人がSHS該当であった。MCS基準該当者においてはMM040の症状は4つ以上、更にSHSの基準に該当しないMCS基準単独該当者においては、MM040の症状は5つ以上となった。(角田、宮島他)

高濃度、高頻度で検出される化学物質はSHS発症に関するリスク要因、即ち新たな室内汚染物質として、採用を検討すべきである。住宅の高気密・高断熱化はエネルギー消費量と住み心地と大きな関係がある。シックハウス問題の対策として有害物質の放散が少ない低放散建材を選ぶこと、機械換気システムを挿入することによって定量的な換気量を確保することが大事である。一方で、シックハウス問題を解決するためには24時間換気が必要であるが、居住者によって運転を止める場合もある。(田邉)
結論
SHSの診断には過去の化学物質の曝露を確認し、症状が多く発生している場合を重視することが必要と考えられた。(角田、宮島他)

シックハウス症候群におけるアレルギー疾患の再燃、悪化について、考察、診断するにあたっては、「ある種の化学物質やいわゆる‘シックハウス’の状態は、実験的にも臨床的にも、アレルギー疾患を悪化しうる。」という考え方を基本とし、検討、討議を進め、コンセンサスを得る必要があると考えられる。また、アレルギー疾患に関連する症状の悪化をシックハウス症候群と関連付けて考えることにより、シックハウス症候群を早期に診断できる可能性があることは、極めて重要と考えられる。と結論づけた。(高野)

シックハウス症候群においては、室内空気の質が重要であり、シックハウス症候群の症状改善や発症防止のためには、室内空気質が生体に対して有害とならないようにしなければならない。室内空気質に影響を及ぼす有害因子は多数存在する。化学的因子、生物的因子、物理的因子が主な有害因子となる。これらの因子の発生源は、建築材料、設備機器類、家具など多数存在する。これらの有害因子と居住者の個体因子などが相まって、喘息やアレルギー疾患など、建物内でさまざまな健康障害を引き起こす。室内空気質に対しては、建物だけでなく、私たちの住まい方や暮らし方も強く影響している。と結論づけた。(東)

健康住宅の室内環境を造るためには政府と住宅業者の役割も大切であるが、居住者の生活習慣も関係がある。と結論づけた。(田邉)

公開日・更新日

公開日
2024-10-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201927010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
SHSの症状改善や発症防止のためには、室内空気質が生体に対して有害とならないようにしなければならない。室内空気質に影響を及ぼす有害因子は化学的、生物的、物理的因子が主となる。これらの因子の発生源は多数存在し、これらの有害因子と居住者の個体因子などが相まって、建物内でさまざまな健康障害を引き起こしている。と結論づけた。
臨床的観点からの成果
SHSの発症には、潜在的な化学物質不耐性が強く影響していることが示唆されているので、SHS有訴者に対してAnderssonによるMM040質問紙票を検討した。MCS基準該当者においてはMM040の症状は4つ以上、更にSHSの基準に該当しないMCS基準単独該当者においては、MM040の症状は5つ以上となった。SHSの診断において、MCS合併の有無を評価する際、MM040質問紙票を用いて症状が多いことを確認することが判断材料になる可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
シックハウス症候群(SHS: Sick House Syndrome)は広義には環境に問題のある住宅での健康障害の総称とされ、狭義には特に気密性の高い建物内で新築や改装等の後に発症しその症状は特定の建物内に限られる健康障害とされる。本研究では、室内環境要因が疑われる健康障害患者の現在の割合や特徴を調査し、予防的対策を新しいマニュアルに反映させるための基本情報を得た。
その他行政的観点からの成果
住宅の高気密・高断熱化はエネルギー消費量と住み心地と大きな関係がある。SHS問題の対策として有害物質の放散が少ない低放散建材を選ぶこと、機械換気システムを挿入することによって定量的な換気量を確保することが大事である。一方で、SHS問題を解決するためには24時間換気が必要である。そのため、健康住宅の室内環境を造るためには政府と住宅業者の役割も大切であるが、居住者の生活習慣も関係がある。と結論づけた。
その他のインパクト
SHSにおけるアレルギー疾患の再燃、悪化について、考察、診断するにあたっては、「ある種の化学物質やいわゆる‘シックハウス’の状態は、実験的にも臨床的にも、アレルギー疾患を悪化しうる。」という考え方を基本とし、検討、討議を進め、コンセンサスを得る必要があると考えられた。と結論づけた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-05-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
201927010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,500,000円
(2)補助金確定額
7,349,000円
差引額 [(1)-(2)]
151,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,562,344円
人件費・謝金 0円
旅費 149,700円
その他 137,541円
間接経費 1,500,000円
合計 7,349,585円

備考

備考
自己資金585円

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-