病原微生物検査体制の維持・強化に必要な地方衛生研究所における人材育成及び地域における精度管理に関する協力体制構築に向けた研究

文献情報

文献番号
201927007A
報告書区分
総括
研究課題名
病原微生物検査体制の維持・強化に必要な地方衛生研究所における人材育成及び地域における精度管理に関する協力体制構築に向けた研究
課題番号
H30-健危-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
皆川 洋子(愛知県衛生研究所 生物学部ウイルス研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 四宮 博人(愛媛県衛生環境研究所)
  • 大西 真(国立感染症研究所)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
  • 岡本 貴世子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 松本 昌門(愛知県衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
1,733,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
改正感染症法に基づいて自治体が行う病原微生物検査の主な担い手となっている地方衛生研究所(地衛研)における、ウイルス及び細菌検査専門家の切れ目ない確保と、一定のレベル確保(検査機関間の均てん化)を目的として、病原体情報の専門家人材育成に資する研修プログラム及び到達度の指針となるコンピテンシーリストを作成する。地衛研と地域において感染症にかかわる他機関(保健所、民間衛生検査所、医療機関等)との検査精度維持向上に関する連携について関係者と検討する。結果として地衛研に専門性の高い職員を確保する根拠が提供され、地域の健康危機対応力の強化につなげる。
研究方法
最終年度は研究初年度に引き続き総括・ウイルス・細菌の3小班体制で研究を進める。総括小班が中心となって、地方衛生研究所全国協議会(地全協)関東甲信静支部のウイルス検査初任者研修参加者を対象として調査を実施するとともに、地域の他の検査関連機関(保健所、民間衛生検査所)と地域における検査精度維持強化について検討する。JEEとの関連及び外国の類似機関における人材育成をふまえた考察も試みる。また初年度に全国地衛研の協力を得た「病原体検査の質確保」及び保健所・民間衛生検査所等との連携に関する追跡調査及び研修ニーズ調査結果に基づき、病原体検査担当者の切れ目ない確保に活用可能な提言案をまとめる。
 研修プログラム及びコンピテンシーリストは、ウイルス小班と細菌小班が各々中心となり、ウイルスは平成28-29年度に国により実施されたインフルエンザウイルス検査の外部精度管理調査(EQA)結果をふまえ、感染研及びインフルエンザ検査に関して全国6支部にあるコア地衛研の協力を得て、インフルエンザ検査を例に地衛研ウイルス検査担当部署のコンピテンシーリストを作成し、提言案に付する。
 細菌小班では、29-30年度に国により実施された腸管出血性大腸菌EQAの効果的フィードバックに加え、近年のインバウンド増加や東京オリンピック等マスギャザリング予定を視野に輸入感染症対応力の強化を目的に、地衛研の細菌検査体制を維持強化し専門家を育成・確保する研修プログラムを検討する。先行研究で外部精度管理試行を実施しかつ前年度に作成した赤痢菌検査担当部署のコンピテンシーリストと細菌検査担当者の支部研修試行を実施し、その成果を提言案に付する。
結果と考察
総括小班は関東甲信静支部ウイルス初任者研修参加者を対象に調査を実施し、地衛研検査担当者育成研修の在り方について検討するとともに、地域における微生物検査精度の維持向上について感染研・地衛研に加えて保健所及び民間衛生検査所の関係者をまじえて地域における検査精度の維持向上について検討した。ウイルス小班は、インフルエンザウイルス検査担当部署のコンピテンシーリストを作成した。細菌小班では、東海北陸支部においてEQAフィードバックを含む検査担当者研修及び地衛研検査部署の現地調査を試行した。
上記の2回にわたる研修試行結果を含む研究班全体で研究成果を総括し、コンピテンシーリストと研修プログラムを付した地衛研のウイルス・細菌検査担当職員の確保育成に資する提言案をまとめ、総合研究報告書に付した。
結論
追跡調査の結果、法改正への対応状況の進捗が把握される一方、切れ目ない人材確保の実現には、現行のOJTや国立保健医療科学院が企画(感染研で実施)する研修に加えて、地衛研間(とりわけ地域の類似性や旅費等の制約を考慮すると支部・ブロック等近隣地衛研間)及び感染研等との連携協力して支部単位での研修開催やe-ラーニング等を充実する必要性が明らかになった。
 本研究及び先行研究の調査結果等に基づき人材育成に関する現場の切実なニーズを考慮した検査担当者コンピテンシーリスト及び試行に基づく研修プログラムを付して、地衛研病原体情報専門家の切れ目ない確保に資する育成体制に関する提言案をまとめた。多くの地衛研が令和2年2月に指定感染症とされた新型コロナウイルス感染症の遺伝子検査を連日実施しており、本研究の成果が各地衛研の新興再興感染症対応力強化にむけて活用されることを切望する。

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201927007B
報告書区分
総合
研究課題名
病原微生物検査体制の維持・強化に必要な地方衛生研究所における人材育成及び地域における精度管理に関する協力体制構築に向けた研究
課題番号
H30-健危-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
皆川 洋子(愛知県衛生研究所 生物学部ウイルス研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 四宮 博人(愛媛県衛生環境研究所)
  • 滝澤 剛則(富山県衛生研究所)
  • 佐野 一雄(名古屋市衛生研究所)
  • 脇田 隆字(国立感染症研究所)
  • 大石 和徳(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
  • 木村 博一(群馬パース大学 検査技術学科)
  • 大西 真(国立感染症研究所)
  • 岡本 貴世子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 松本 昌門(愛知県衛生研究所 生物学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
脇田隆字、大石和徳、佐野一雄、木村博一研究分担者は平成31年3月31日に分担者から退き、研究協力者となった。また大石和徳博士は国立感染症研究所から平成31年4月1日付で富山県衛生研究所に所属を変更した。滝澤剛則研究分担者は平成31年3月31日に分担者から退いた。  平成31年4月1日より、大西真 国立感染症研究所副所長及び岡本貴世子国立感染症研究所 感染症疫学センター室長が研究分担者として参画した。

研究報告書(概要版)

研究目的
改正感染症法に基づき自治体が行う病原微生物検査の主な担い手となっている地方衛生研究所(地衛研)における、ウイルス及び細菌検査専門家の切れ目ない確保と一定のレベル確保(検査機関間の均てん化)を目的に、病原体情報の専門家育成に資する研修プログラム及び到達度の指針となるコンピテンシーリストを作成する。地衛研と地域において感染症にかかわる他機関(保健所、民間衛生検査所、医療機関等)との検査精度維持向上に関する連携について関係者と検討する。結果として地衛研に専門性の高い職員を確保する根拠が提供され、地域の健康危機対応力の強化につながる研究成果を得る。
研究方法
総括・ウイルス・細菌の3小班体制で研究を進めた。総括小班は、「病原体検査の質確保」及び保健所・民間衛生検査所等との検査精度管理における連携について、平成28年度に全国地衛研を対象に実施した調査の追跡及び研修ニーズの調査を行い、病原体検査担当者育成の現状と課題を整理した。2018年2月にWHOにより実施されたJoint External Evaluation (JEE)報告書及び外国の類似機関における人材確保取組みをふまえた考察を行った。
 研修プログラム及びコンピテンシーリストは、ウイルス小班と細菌小班が中心となり、先行研究で実施した赤痢菌検査・エンテロウイルス検査の外部精度管理調査(EQA)試行、平成28-30年度に国が実施したインフルエンザウイルス・腸管出血性大腸菌検査のEQA結果を参考に作成した。コンピテンシーリストは、ウイルス小班ではインフルエンザウイルス検査を、細菌小班では赤痢菌検査を念頭に地衛研検査担当部署のリストを作成するとともに、地衛研微生物検査担当部署に共通するコンピテンシーリストを研究班全体で検討した。研修プログラムは、感染研・レファレンスセンター地衛研・東海北陸支部所属機関等の協力を得てウイルス・細菌各1回試行した。ウイルス研修ではインフルエンザEQAフィードバック研修を試行した。細菌小班では、腸管出血性大腸菌EQAの効果的フィードバックに加え、近年のインバウンド増加や東京オリンピック等マスギャザリング予定を視野に輸入感染症対応力が求められる地衛研細菌検査体制の維持強化を目的とする研修プログラムを試行した。
研修と同時にEQA結果及びJEE報告書をふまえ、感染研及び地衛研のウイルス・細菌専門家による地衛研検査室の現地調査を試行した。
結果と考察
平成30年度に総括小班は、全国地衛研を対象とする追跡調査及び研修ニーズ調査を実施し、解析結果を研究報告書にまとめた。ウイルス小班は、2018年9月に愛知県衛生研究所ウイルス検査室の現地調査を試行するとともに、感染研及びコア地衛研の協力を得てウイルス検査担当者に対するEQAフィードバック研修試行を実施した。 細菌小班は、赤痢菌検査担当部署のコンピテンシーリストを作成した。
最終年度に総括小班は、関東甲信静支部ウイルス初任者研修参加者を対象に調査を実施し、地衛研検査担当者育成研修の在り方について検討するとともに、地域における微生物検査精度の維持向上について感染研・地衛研に加えて保健所及び民間衛生検査所の関係者をまじえて地域における検査精度の維持向上について検討した。ウイルス小班は、インフルエンザウイルス検査担当部署のコンピテンシーリストを作成した。細菌小班では、東海北陸支部においてEQAフィードバックを含む検査担当者研修及び地衛研検査部署の現地調査を試行した。
上記の2回にわたる研修試行結果及びコンピテンシーリスト等を研究班全体で総括し、コンピテンシーリストと研修プログラムを付した地衛研のウイルス・細菌検査担当職員の確保育成に資する提言をまとめ、総合研究報告書に付した。
結論
追跡調査の結果、法改正への対応状況の進捗が把握される一方、切れ目ない人材確保の実現には、現行のOJTや国立保健医療科学院が企画(感染研で実施)する研修に加えて、地衛研間(とりわけ地域の類似性や旅費等の制約を考慮すると支部・ブロック等近隣地衛研間)及び感染研等との連携協力して支部単位での研修開催やe-ラーニング等を充実する必要性が明らかになった。
 本研究及び先行研究の調査結果等に基づき人材育成に関する現場の切実なニーズを考慮した検査担当者コンピテンシーリスト及び試行に基づく研修プログラムを付して、地衛研病原体情報専門家の切れ目ない確保に資する育成体制に関する提言をまとめた。多くの地衛研が令和2年2月に指定感染症とされた新型コロナウイルス感染症の遺伝子検査を連日実施している。本研究の成果は当事者である地方衛生研究所全国協議会会員に提供する。各機関の判断で自治体本庁等関係者とも共有されて、各地衛研の新興再興感染症対応力強化にむけて活用されることを切望する。

公開日・更新日

公開日
2023-04-03
更新日
2024-10-15

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2024-10-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201927007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成28年4月施行改正感染症法により知事の事務とされた病原体検査を自治体で主に担っている、地方衛生研究所微生物部門の検査精度維持向上を目的に検査部署のコンピテンシーリスト及び人材育成研修プログラムを開発した。新型コロナウイルス検査体制強化に伴い定員増となった愛知県衛生研究所において、ウイルス検査コンピテンシーリストを検討した。成果を日本公衆衛生学会、日本細菌学会中部支部総会、日本臨床ウイルス学会等で発表し、保健所・県庁等関係者への周知を図っている。
臨床的観点からの成果
 地衛研が実施する行政検査精度の向上は、新型コロナウイルス、鳥インフルエンザウイルス、エムポックスウイルスなど新興・再興感染症の病原体診断精度向上につながる。
ガイドライン等の開発
ウイルス及び細菌検査担当部署のコンピテンシーリスト、及び人材育成と外部精度管理調査フィードバック研修プログラムを付した病原体担当部署人材育成に関する提言をまとめた。
その他行政的観点からの成果
コンピテンシーリストとして提示した、病原体検査技能と知識を担当職員間で切れ目なく継承・向上していく必要性が人事異動等に考慮されれば、自治体検査機関における切れ目のない検査体制の維持・強化が期待できる。
その他のインパクト
特記すべきことなし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
皆川洋子 感染症サーベイランスにおける地方衛生研究所の役割 臨床とウイルス47(3):119-126, 2019.
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
第93回日本細菌学会総会、第79回,第81回,第82回日本公衆衛生学会総会、第61回,第63回日本臨床ウイルス学会総会、平成5年度地全協東海北陸支部微生物部会
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
https://www.pref.aichi.jp/eiseiken/gijyutu/20194301.pdf

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-30
更新日
2024-06-10

収支報告書

文献番号
201927007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,079,000円
(2)補助金確定額
2,079,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 797,615円
人件費・謝金 0円
旅費 918,234円
その他 17,151円
間接経費 346,000円
合計 2,079,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-05-06
更新日
-