災害対策における地域保健活動推進のための実務担当保健師の能力向上に係わる研修ガイドラインの作成と検証

文献情報

文献番号
201927006A
報告書区分
総括
研究課題名
災害対策における地域保健活動推進のための実務担当保健師の能力向上に係わる研修ガイドラインの作成と検証
課題番号
H30-健危-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 美砂子(国立大学法人 千葉大学 大学院看護学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 奥田 博子(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
  • 石川 麻衣(群馬大学大学院 保健学研究科)
  • 金 吉晴(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 植村 直子(東京家政大学 健康科学部 看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,864,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、災害時において発災直後から復旧復興に至るまで、地域住民の健康回復に対して第一線で持続的に支援役割を担う自治体の実務保健師の能力向上に係わる研修ガイドラインを作成し、実地検証することを通して、実務保健師の実践能力の向上に役立てることである。2か年計画の2年目にあたる本年度の目標は、昨年度の調査の知見を踏まえ、実務保健師の災害時の対応能力育成のための研修ガイドライン(案)を作成し、現場適用によりその効果と実用性を検証すること、それにより全国の参照標準に資する研修ガイドラインを作成することである。
研究方法
1)実務保健師の災害時の研修ガイドライン(案)の作成と実地検証及び研修ガイドライン及び付帯するツールの作成:前年度の調査を踏まえ、実務保健師の災害時の対応能力育成のための研修ガイドライン(案)を作成し(分担研究1)、実務保健師を対象とした災害時研修を企画する実施主体(都道府県本庁、保健所設置市本庁、保健所等)の人材育成担当保健師に研修ガイドライン(案)を活用してもらい、研修を企画・実施・評価し、研修ガイドライン(案)の現場適用による実地検証を行った(分担研究2~5)。その結果に基づき研修ガイドライン(案)を精錬させて、研修の企画・評価のためのツールを付帯させた研修ガイドラインを作成した(分担研究6~8)。
2)実務保健師の災害時の対応能力育成の方法に関連する検討:復旧復興期における被災者のこころのケアに関する支援プログラムの実施と検証、公衆衛生従事者を対象とした災害研修方法に関する国内外文献のシステマティックレビューを行った。
3)保健師の災害時の応援派遣及び受援のためのオリエンテーションガイドの作成:昨年度実施した、災害時における保健師の応援派遣及び受援の調査に基づき、応援派遣による支援及び受援の体制面及び人材育成面の課題及び機能強化すべき事項を検討した。その結果から保健師の災害時の応援派遣及び受援のためのオリエンテーションガイドに掲載する内容を精査しガイドを作成した(分担研究9)。
結果と考察
研修ガイドライン(案)は、11機関(都道府県本庁、保健所設置市本庁、保健所等)において人材育成担当者に活用してもらい、企画実施した研修を対象に検証した。研修受講者は456人であった。その結果、研修ガイドライン(案)の効果として、研修直後においては受講者の満足及び災害時の役割遂行に対する自覚、知識の習得、自身の問題点の明確化、自身の問題点の改善を図るために必要な知識の理解、において達成度が高く、受講後においては職場に戻り遂行した役割として17の内容、それによる職場の環境の変化として7の内容が確認できた。研修ガイドライン(案)の実用性については、研修目的の明確化、研修プログラムの系統的な作成、研修評価の明示、コンピテンシーの活用の意義、リフレクションの活用の意義等が人材育成担当者の聴取から確認できた。一方でコンピテンシーやリフレクション等の馴染みのない用語の理解への苦慮、研修プログラム作成におけるコンピテンシーの活用方法の困難性等が示された。これらのことから研修ガイドライン(案)の改善点として、用語の解説、コンピテンシーの活用方法の例示等を反映させた。本研修ガイドラインの社会実装における汎用性を高めるために、効果と実用性を持続的に確認することは意義がある。また関連知見として、復旧復興期の被災者のこころのケアの短期的支援プログラム、公衆衛生従事者を対象とした災害時の研修方法に関する知見を得た。また保健師の災害時の応援派遣及び受援のためのオリエンテーションガイドを昨年度の調査結果を踏まえ作成した。応援派遣及び受援の体制づくり及び人材育成に役立つことが期待される。
結論
実務保健師の災害時のコンピテンシーを踏まえた「実務保健師の災害時の対応能力育成のための研修ガイドライン」を作成し、現場への実地検証を通して災害時の実践能力の修得の効果及び現場での研修企画の実用性を確認した。また災害時の応援派遣及び受援の実際に関する調査に基づき、体制面及び人材育成面において機能強化すべき点を検討し「保健師の災害時の応援派遣及び受援のためのオリエンテーションガイド」を作成した。これらが、全国規模で参照標準として活用されることにより、災害時の活動と体制づくり及び人材育成の推進に貢献できる。

公開日・更新日

公開日
2020-12-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201927006B
報告書区分
総合
研究課題名
災害対策における地域保健活動推進のための実務担当保健師の能力向上に係わる研修ガイドラインの作成と検証
課題番号
H30-健危-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 美砂子(国立大学法人 千葉大学 大学院看護学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 奥田 博子(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
  • 石川 麻衣(群馬大学大学院 保健学研究科)
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 金 吉晴(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 植村  直子(東京家政大学健康科学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、災害時において発災直後から復旧復興に至るまで、地域住民の健康回復に対して第一線で持続的に支援役割を担う自治体の実務保健師の能力向上に係わる研修ガイドラインを作成し、実地検証することを通して、実務保健師の実践能力の向上に役立てることである。研究目標として、研修ガイドラインに記載する内容と研修方法の体系的整理、それらの整理の妥当性を確認するための調査、研修ガイドライン(案)の作成と実地検証、研修ガイドライン及び付帯するツールの作成、を設定した。
研究方法
研修ガイドライン作成にあたり災害時の実務保健師の役割とその遂行に必要な能力(Competency)を検討の中核に置いた。本研究は2か年の計画であり、1年目は、研修ガイドラインに記載する内容と研修方法の体系的整理及びその妥当性を確認するための調査を実施した。過去の災害対応事例の記録調査、関係者への聴取、既存の知見の検討を踏まえ、災害時に実務保健師が担う役割、必要とされるコンピテンシー、修得すべき知識・技術・態度について整理を行った(分担研究1~7)。次いでそれらの整理の妥当性を確認するために、災害対応経験をもつ実務保健師及び統括役割を担う保健師へデルファイ調査を行った(分担研究8)。また災害時の保健師の応援派遣及び受援のあり方を機能強化するため、平成30年に発生した災害を対象に、応援派遣及び受援の実際を調査し、体制面及び人材育成面における課題及び機能強化すべき事項を検討した(分担研究9)。2年目は、実務保健師の災害時の研修ガイドライン(案)の作成と実地検証及び研修ガイドライン及び付帯するツールの作成を実施した。前年度の調査を踏まえ、実務保健師の災害時の対応能力育成のための研修ガイドライン(案)を作成し(分担研究1)、実務保健師を対象とした災害時研修を企画する実施主体(都道府県本庁、保健所設置市本庁、保健所等)の人材育成担当保健師に研修ガイドライン(案)を活用してもらい、研修を企画・実施・評価し、研修ガイドライン(案)の現場適用による検証を行った(分担研究2~5)。その結果に基づき研修ガイドライン(案)を精錬させて、研修の企画・評価のためのツールを付帯させた研修ガイドラインを作成した(分担研究6~8)。また昨年度実施した、災害時における保健師の応援派遣及び受援の調査の結果から、保健師の災害時の応援派遣及び受援の体制面及び人材育成面を強化するためのオリエンテーションガイドに掲載すべき事項を検討した(分担研究9)。
結果と考察
研修ガイドラインに記載する内容として、災害時に実務保健師に求められる81のコンピテンシー、その基となる100の知識・技術・態度を導出した。これらの内容は、災害対応経験をもつ実務保健師及び統括役割を担う保健師を対象に、3回のデルファイ法による意見調査を行い、同意の程度を確認した。その結果を踏まえ、実務保健師の災害時の対応能力育成のための研修ガイドライン(案)を作成し、11機関(都道府県本庁、保健所設置市本庁、保健所等)における実務保健師の災害時研修の企画に活用し、効果と実用性を検証した。実務保健師の役割遂行の自覚と知識、行動の促しに対して効果が確認でき、さらに研修目的の明確化、一貫性のある研修プログラムづくり等に対して実用性のあることが確認できた。一方で用語の説明の加筆、研修企画の事例の明示の必要性について意見があり改善に反映させた。また応援派遣による支援及び受援の体制面及び人材育成において機能強化すべき点の検討を踏まえ、災害時の保健師の応援派遣及び受援を強化するためのオリエンテーションガイドを作成した。これにより災害時における応援派遣及び受援の相互理解の促進及び連携協働の体制づくり、人材育成に役立つことが期待できる。
結論
本研究の成果として「実務保健師の災害時の対応能力育成のための研修ガイドライン」と「保健師の災害時の応援派遣及び受援のためのオリエンテーションガイド」の2つのガイドを、先行調査の結果をふまえて記載すべき事項を精査し、作成した。これらは、自治体保健師の災害時の対応能力の育成とその体制づくり、また災害時の応援派遣・受援における自治体間の連携と協働を推進させるうえで、参照標準となるガイドとして役立てることができる。

公開日・更新日

公開日
2024-10-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-10-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201927006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
災害対応の先行知見、関係者へのヒアリング調査、災害対応経験のある実務保健師・統括保健師へのデルファイ調査から、実務保健師に求められる災害時のコンピテンシーとして81の内容、その基となる知識・技術・態度として100の内容を明らかにした。また災害時の保健師の応援派遣及び受援に対して機能強化すべき事項を平成30年の発災事例(豪雨水害及び地震)において応援派遣及び受援の調整に携わった統括保健師への紙面及びヒアリング調査から明らかにした。
臨床的観点からの成果
実務保健師が災害時の役割を自覚し、実践能力を高めていく指標として、災害時における実務保健師の81のコンピテンシー、100の知識・技術・態度を役立てることができる。また災害時に必要な組織体制の整備に向けて役立てることができる。災害時における保健師の応援派遣及び受援に対して機能強化すべき事項は、自治体における災害時の応援派遣及び受援の体制整備と活動推進において参照標準とする内容として役立てることができる。
ガイドライン等の開発
「実務保健師の災害時の対応能力育成のための研修ガイドライン」及び「保健師の災害時の応援派遣及び受援のためのオリエンテーションガイド」を開発した。都道府県(保健所設置市)本庁、保健所、市区町村において、災害対応の研修の企画・実施・評価、組織体制の整備、活動推進の指針として役立つものとした。なお上記オリエンテーションガイドに掲載の「別紙 応援派遣保健師のみなさまへ」は大規模災害における保健師活動推進会議(主催:厚生労働省健康局健康課、令和2年1月27日開催)にて周知され活用が促された。
その他行政的観点からの成果
本研究が開発した「実務保健師の災害時の対応能力育成のための研修ガイドライン」及び「保健師の災害時の応援派遣及び受援のためのオリエンテーションガイド」は、令和元年度作成の「災害時の保健活動推進マニュアル(日本公衆衛生協会/全国保健師長会)」に引用され活用された。これにより都道府県等における、災害対策及び保健師の人材育成体系と関連づけた研究成果の活用がさらに期待できる。
その他のインパクト
「実務保健師の災害時の対応能力育成のための研修ガイドライン」及び「保健師の災害時の応援派遣及び受援のためのオリエンテーションガイド」は、令和 2-3 年度厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)「市町村保健師の災害時保健活動遂行能力の向上のための教育教材及びその活用マニュアルの作成と検証」(研究代表者 春山早苗)において基礎資料として活用され、「新型コロナウイルス感染症対策における応援派遣及び受援の手引き」及び研修プログラム例の開発に貢献した。 

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
5件
保健師ジャーナル74(12)、公衆衛生情報48(3)、保健の科学61(3)等
その他論文(英文等)
1件
JBI evidence synthesis, 19(1), 208–214.
学会発表(国内学会)
4件
第79回日本公衆衛生学会、第78回日本公衆衛生学会、第77回日本公衆衛生学会
学会発表(国際学会等)
3件
The Asia Pacific Emergency and Disaster Nursing Network、NCT ASIA PACIFIC 等
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
ガイドライン作成1件、マニュアル作成1件
その他成果(普及・啓発活動)
8件
講演7件、ホームページの作成1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-06-10
更新日
2023-06-22

収支報告書

文献番号
201927006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,622,000円
(2)補助金確定額
7,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
622,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,149,485円
人件費・謝金 1,616,656円
旅費 1,661,652円
その他 814,276円
間接経費 1,758,000円
合計 7,000,069円

備考

備考
差額の69円は自己資金で充当した。

公開日・更新日

公開日
2021-05-07
更新日
-