文献情報
文献番号
201927003A
報告書区分
総括
研究課題名
建築物環境衛生管理基準の検証に関する研究
課題番号
H29-健危-一般-006
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
林 基哉(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
- 開原典子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 欅田尚樹(産業医科大学 産業保健学部看護学科)
- 東賢一(近畿大学 医学部)
- 中野淳太(東海大学 工学部)
- 李時桓(イ シファン)(信州大学 学術研究院工学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、平成26-28「建築物環境衛生管理に係る行政監視等に関する研究」による、空気環境衛生基準、衛生管理体制、新しい健康リスク等に関する提案に基づいて、環境衛生管理基準不適率の上昇が顕著である空気環境を中心に4つの研究を行い、建築物衛生環境の効果的向上を図るための基準改正に資する科学的根拠を示すことを目的とする。
研究方法
本研究「建築物衛生管理基準の検証に関する研究」を以下の4つの研究によって行った。基準案の検証(エビデンス整理)、測定評価法提案(ケーススタディー)、測定評価法の検証(実建物試行)、制度提案(自治体等ヒアリング)。
結果と考察
世界保健機関(WHO)が温度の室内ガイドラインとして低温側で18℃以上を2018年に公表した。特定建築物のホテルや旅館など、用途に応じた室温のガイドラインを今後検討すべきである。WHOはPM2.5、一酸化炭素の室内空気質ガイドラインを公表した。厚生労働省は、新たな化学物質の室内濃度誌指針値を検討中である。特定建築物におけるこれらの物質の実態はこれまで把握されておらず、調査が望まれる。
ASHRAE 55基準に準拠した室内温熱環境に関する測定法を提案し、実際のオフィスを夏季と冬季に分けて調査し、衛生管理基準と最新の温熱環境基準による評価結果を比較した。提案した測定方法により、季節・建物規模・空調方式の特徴を分類できることがわかった。健康影響評価に必要な環境因子の知見と本測定方法をリンクさせることで、時間的・空間的な温熱環境分布評価の解像度を高めることが可能であることを示した。今後の評価法の検証において、個別空調の運用管理手法の情報整備を加える必要がある。
室内環境項目とビル関連症状との関係について解析を行い、夏期では温度が高いほど一般症状と上気道症状が有意に増加した。冬期および夏期ともに、粉じんや化学物質の濃度は管理基準や室内濃度指針値を下回っており、特定建築物の一部の物質でみられたビル関連症状との統計学的に有意な関係は、毒性学的にはほぼ意義はなかった。冬期では細菌濃度が高いほどビル関連症状の増加がみられた。
空気環境測定者に対するアンケート調査の結果、空気環境の測定点、測定時間、測定後の改善に関する課題が抽出された。空気環境の測定状況が適切でない場合があり、その原因は、在室者への配慮、依頼主の依頼、契約上の制限など、が挙げられた。
特定建築物の空気環境不適率の上昇要因を明らかにするために、行政報告例の不適率の実態把握、不適率上昇要因に関する統計解析、外気濃度上昇、省エネルギー等に伴う換気量減少の不適率への影響に関する分析を行った結果、行政報告例の特性と換気量減少の影響が相対的に大きい可能性が高いことを示した。
ASHRAE 55基準に準拠した室内温熱環境に関する測定法を提案し、実際のオフィスを夏季と冬季に分けて調査し、衛生管理基準と最新の温熱環境基準による評価結果を比較した。提案した測定方法により、季節・建物規模・空調方式の特徴を分類できることがわかった。健康影響評価に必要な環境因子の知見と本測定方法をリンクさせることで、時間的・空間的な温熱環境分布評価の解像度を高めることが可能であることを示した。今後の評価法の検証において、個別空調の運用管理手法の情報整備を加える必要がある。
室内環境項目とビル関連症状との関係について解析を行い、夏期では温度が高いほど一般症状と上気道症状が有意に増加した。冬期および夏期ともに、粉じんや化学物質の濃度は管理基準や室内濃度指針値を下回っており、特定建築物の一部の物質でみられたビル関連症状との統計学的に有意な関係は、毒性学的にはほぼ意義はなかった。冬期では細菌濃度が高いほどビル関連症状の増加がみられた。
空気環境測定者に対するアンケート調査の結果、空気環境の測定点、測定時間、測定後の改善に関する課題が抽出された。空気環境の測定状況が適切でない場合があり、その原因は、在室者への配慮、依頼主の依頼、契約上の制限など、が挙げられた。
特定建築物の空気環境不適率の上昇要因を明らかにするために、行政報告例の不適率の実態把握、不適率上昇要因に関する統計解析、外気濃度上昇、省エネルギー等に伴う換気量減少の不適率への影響に関する分析を行った結果、行政報告例の特性と換気量減少の影響が相対的に大きい可能性が高いことを示した。
結論
基準案の検証(エビデンス整理)では、最新知見によって基準改正の対象候補となる項目決定の基礎が得られた。WHOなどの動向に対応した温度、一酸化炭素、PM2.5の基準の検討、厚生労働省が示した新たな化学物質濃度指針値に対する特定建築物における実態調査、SVOCなどの新たな基準への対応の検討が必要である。
測定評価法提案(ケーススタディー)では、主に温熱環境に関する評価方法の進歩が大きい中、温度、湿度、気流等の温熱環境に関する基準の追加、組み換えの提案に資する知見が示された。ASHRAE 55基準に準拠した測定方法を提案し、健康影響評価に必要な環境因子の知見と本測定方法をリンクさせることで、時間的・空間的な温熱環境分布評価の解像度を高めることが可能であることを示した。測定評価法の検証(実建物試行)では、気化式の加湿設備や空調の個別方式が急増している今般の状況に対応する方法として、ASHRAE 55基準に準拠した測定方法等、快適感や温冷感等の指標が考えられる。
制度提案(自治体等ヒアリング)では、適切な測定の運用が難しい状況が、不適率のデータに影響し、行政報告例における報告聴取の増加、省エネ対応、外気条件の変化が、不適率上昇に影響していることを踏まえた測定評価法や制度の構築が必要である。
測定評価法提案(ケーススタディー)では、主に温熱環境に関する評価方法の進歩が大きい中、温度、湿度、気流等の温熱環境に関する基準の追加、組み換えの提案に資する知見が示された。ASHRAE 55基準に準拠した測定方法を提案し、健康影響評価に必要な環境因子の知見と本測定方法をリンクさせることで、時間的・空間的な温熱環境分布評価の解像度を高めることが可能であることを示した。測定評価法の検証(実建物試行)では、気化式の加湿設備や空調の個別方式が急増している今般の状況に対応する方法として、ASHRAE 55基準に準拠した測定方法等、快適感や温冷感等の指標が考えられる。
制度提案(自治体等ヒアリング)では、適切な測定の運用が難しい状況が、不適率のデータに影響し、行政報告例における報告聴取の増加、省エネ対応、外気条件の変化が、不適率上昇に影響していることを踏まえた測定評価法や制度の構築が必要である。
公開日・更新日
公開日
2021-01-04
更新日
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