ナノマテリアル曝露による慢性影響の効率的評価手法開発に関する研究

文献情報

文献番号
201926017A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアル曝露による慢性影響の効率的評価手法開発に関する研究
課題番号
H30-化学-指定-004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 祐次(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 津田 洋幸(名古屋市立大学 津田特任教授研究室)
  • 堀端 克良(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 変異遺伝部)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部 )
  • 渡辺 渡(九州保健福祉大学大学院 保健科学研究科)
  • 石丸 直澄(徳島大学大学院 医歯薬学研究部)
  • 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 小林 憲弘(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 北條 幹(東京都健康安全研究センター 薬事環境科学部 生体影響研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
36,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は未だにナノマテリアル曝露により最も懸念されている体内蓄積に伴う慢性影響を検討した慢性実験が殆どない上に、定量的リスク評価に必要な慢性吸入曝露は多層カーボンナノチューブ(MWCNT)のうちのMWNT-7による報告のみである現状を鑑み、2年間の慢性吸入試験と同レベルの評価が可能な代替慢性試験法の開発を行うことを目的としている。また、これまでに他のナノマテリアルで検討してきた遺伝毒性や免疫影響に関する指標についても今回開発する慢性試験プロトコルへの適用性を検証すると共に、本研究班の研究成果をもって本代替試験法の有用性を国際的に発信していくことを目的としている
研究方法
R1年度は、慢性影響に関する研究として2年間の慢性吸入毒性試験と同レベルの肺内負荷量を達成するための2年間の間欠投与による慢性試験を開始した。また、短期間気管内噴霧(TIPS)法によるチタン酸カリウムの曝露を行うと共に、長さの異なる二層ナノチューブ曝露による慢性実験を行った。慢性影響指標に関する研究としては、in vivo遺伝毒性試験系の開発、吸入曝露による免疫ネットワークへの慢性影響評価と感染性免疫系への影響解析、in vitro系を用いた細胞内異物処理メカニズムに関する研究を行った。海外動向調査としては、OECDナノマテテリアル作業グループの最新動向を調査した。
結果と考察
慢性影響に関する研究に関して、2年間の慢性吸入毒性試験と同レベルの肺内負荷量を達成するために短期間曝露の慢性観察試験のプロトコルを確立し、2年間のMWNT-7間欠曝露試験(4週毎に1回曝露)を開始した。Taquann全身曝露吸入装置を用いた吸入曝露実験については、現在まで12ヵ月の中間定期解剖を終えた。気管内投与については、1年間の反復曝露により肉芽腫性炎症やII型肺胞上皮細胞の反応性過形成が広範囲に認められ、投与群の2例で細気管支肺胞上皮過形成が認められた。現時点で曝露後1年を経過しており肺負荷量は現在分析中である。短期間気管内噴霧(2週8回投与)+慢性観察(TIPS)法によるチタン酸カリウムの曝露(104週後)で肺胞上皮過形成・腺腫・腺がんの合計および胸膜中皮過形成と悪性中皮腫の合計頻度において有意な増加が見られた。長さの異なる二層ナノチューブ曝露による慢性影響は現在解析中である。慢性影響指標に関する研究では、遺伝毒性指標としてマウスでのin vivo肺小核試験遺伝毒性試験における陽性対照の適用性および採材時期の最適化を検証し、in vivo-in vitro法を用いる肺小核試験において最終投与24時間後の採材が最適であることが示された。免疫ネットワークへの影響では、MWCNT-7の吸入曝露の慢性影響として肺胞マクロファージの分化、成熟が大きく変化することが示された。一方、感染性に対する影響としては、Taquann法によるMWNT-7の複数回の吸入曝露後のRSV感染マウスへの影響を検討した。前年度実施の単回曝露では見出せなかった肺炎マーカーCCL5の有意な上昇が認められた。また、カーボン貪食マクロファージの集束など特徴的な肺病変が観察された。In vitroメカニズム解析研究では、様々なナノマテリアルによるNLRP3インフラマソームを介する炎症応答が、酸化チタンやMWCNT等の物性の違いにより薬物Xによる抑制効果が異なることを見いだした。海外動向調査では、本研究班で検証している短期曝露による慢性観察試験法の有用性の周知を目的として、OECDのナノマテテリアル作業グループ(WPMN)において、慢性吸入曝露ガイドライン試験との相同性に関する比較研究として紹介を行った。また、OECDでは新規の先端材料(Advanced Materials)に関するリスク評価の問題もWPMNで取り扱う方針となった。今後もナノ材料のリスク評価法などのバリデーション試験に関する情報収集を継続する予定である。
結論
R1年度は、間欠曝露型の吸入及び気管内投与の慢性実験について、ほぼ順調に一年を経過しようとしていることであるとともに。チタン酸カリウムや二層ナノチューブの慢性影響を確認した。免疫系における慢性マーカーの確認や感染性への複数回吸入曝露の影響とマクロファージ細胞を用いた炎症応答の抑制効果の解析を行うことができた

公開日・更新日

公開日
2020-12-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-12-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201926017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
36,500,000円
(2)補助金確定額
36,434,000円
差引額 [(1)-(2)]
66,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 18,695,643円
人件費・謝金 2,147,244円
旅費 4,974,902円
その他 10,616,882円
間接経費 0円
合計 36,434,671円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-09-07
更新日
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