文献情報
文献番号
201926010A
報告書区分
総括
研究課題名
気管内投与による化学物質の有害作用とくに発癌性の効率的評価手法の開発に関する研究:迅速化かつ国際化に向けて
課題番号
19KD1001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
津田 洋幸(公立大学法人 名古屋市立大学 津田特任教授研究室)
研究分担者(所属機関)
- 内木 綾(公立大学法人 名古屋市立大学大学院 医学研究科 実験病態病理学分野)
- 大西 誠(独立行政法人労働者健康安全機構日本バイオアッセイ研究センター 試験管理部)
- 伴野 勧(愛知医科大学 医学部 感染・免疫学講座)
- 魏 民(大阪市立大学大学院医学研究科 環境リスク評価学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
15,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
毒劇法指定化合物やGHS記載物質について、必要であるのに、各事業場において吸入曝露試験を実施しているものは少ない。理由は、吸入曝露試験には高額設備と稼働費用が必要であるためである。申請者はラットにおいて「経気管肺内噴霧投与法(TIPS法)」を開発し、世界に先駆けて5種の異なった形状のカーボンナノチューブと一種のチタン酸カリウムの肺または胸膜中皮における発がん性を見出し、Archives of Toxicology, Particle and Fibre Toxicology(5-Year IFはそれぞれ 6.04および8.40)等に掲載されるようになった。
本研究の目的は、吸入曝露試験に替わって、開発してきた実施容易なTIPS法を、気中の有害物質の簡易試験法として発展させることにある。R1年度では基準物質として日本バイオアッセイ研究センター(JBRC)にて吸入曝露試験が実施されLC50の得られている1,4-dioxane(dxn)を用いた。
本研究の目的は、吸入曝露試験に替わって、開発してきた実施容易なTIPS法を、気中の有害物質の簡易試験法として発展させることにある。R1年度では基準物質として日本バイオアッセイ研究センター(JBRC)にて吸入曝露試験が実施されLC50の得られている1,4-dioxane(dxn)を用いた。
研究方法
1.in vitro 毒性試験:
ヒト肺がん由来A549細胞の培地にdxn100および200mg/mLを加えて、neutral redの細胞内取り込み率を算定して肺毒性の強度を把握した。
2.ラットを用いたin vivo 試験:
1)JBRCにおけるdxnのデータ:吸入曝露試験における6400ppm/6h/day/L/4hの13週試験のLC50値は51.3mg/L/4hの吸入量を350gラットに換算すると481mg/300g(≒1600mg/kg)となり、これを指標として実験を組んだ。
2)dxnを11日間に6回(0、3、5、7、9、11日)投与した。用量は10、25、50、75,100,152,175,200mg/ラットx6回として、LD50値の得られる投与量を探索した(各群2匹)。
3)上記から、1匹あたりの総投与量:200、300または400mg/ラット(=1回投与量はそれぞれ50、75、100mg/ラットx4回投与)と設定して投与終了後最長11日まで観察しLD50値を求めた。
①1時間に1回(計3時間で投与終了)
②3時間に1回(計12時間で投与終了)
③12時間に1回(計48時間で投与終了)
④1日1回(計4日で投与終了)
この結果、①②③④の全モデルにおいて生存率は100%であり、そのうち、①のモデル(1時間に1回、3時間で投与終了)において肺障害が最も軽微で、アポトーシスカウントでみる腎尿細管上皮障害はもっとも顕著であった。
4)これに基づき、以下の①~⑥の方法における結果から投与終了までの致死率(LD)求めて、LD50を得る条件を求めた。
① 溶媒 LD=0
② 240mg/kg×4回 (960mg/kg) LD=0
③ 320mg/kg×4回 (3回計960mgで1匹死亡、4回総投与量1040mg/kg) LD=1/7
④ 400mg/kg×4回 (400mg1回で1匹死亡→残り3匹は300mg/kg×3回 4回総投与量1300mg/kg) LD=4/7
⑤ 480mg/kg×4回 (480mg1回で1匹死亡→残り3匹は360mg/kg×3回、4回総投与量1560mg) LD=4/7
⑥ 560mg/kg×4回 (560mg1回で1匹死亡→残り3匹は420mg/kg×3回 4回総投与量1560mg) LD=5/7
以上の①~⑥のグループのうち、JBRCの吸入曝露実験のLC50に近似のLD50(投与終了時)を得るグループ抽出した。
ヒト肺がん由来A549細胞の培地にdxn100および200mg/mLを加えて、neutral redの細胞内取り込み率を算定して肺毒性の強度を把握した。
2.ラットを用いたin vivo 試験:
1)JBRCにおけるdxnのデータ:吸入曝露試験における6400ppm/6h/day/L/4hの13週試験のLC50値は51.3mg/L/4hの吸入量を350gラットに換算すると481mg/300g(≒1600mg/kg)となり、これを指標として実験を組んだ。
2)dxnを11日間に6回(0、3、5、7、9、11日)投与した。用量は10、25、50、75,100,152,175,200mg/ラットx6回として、LD50値の得られる投与量を探索した(各群2匹)。
3)上記から、1匹あたりの総投与量:200、300または400mg/ラット(=1回投与量はそれぞれ50、75、100mg/ラットx4回投与)と設定して投与終了後最長11日まで観察しLD50値を求めた。
①1時間に1回(計3時間で投与終了)
②3時間に1回(計12時間で投与終了)
③12時間に1回(計48時間で投与終了)
④1日1回(計4日で投与終了)
この結果、①②③④の全モデルにおいて生存率は100%であり、そのうち、①のモデル(1時間に1回、3時間で投与終了)において肺障害が最も軽微で、アポトーシスカウントでみる腎尿細管上皮障害はもっとも顕著であった。
4)これに基づき、以下の①~⑥の方法における結果から投与終了までの致死率(LD)求めて、LD50を得る条件を求めた。
① 溶媒 LD=0
② 240mg/kg×4回 (960mg/kg) LD=0
③ 320mg/kg×4回 (3回計960mgで1匹死亡、4回総投与量1040mg/kg) LD=1/7
④ 400mg/kg×4回 (400mg1回で1匹死亡→残り3匹は300mg/kg×3回 4回総投与量1300mg/kg) LD=4/7
⑤ 480mg/kg×4回 (480mg1回で1匹死亡→残り3匹は360mg/kg×3回、4回総投与量1560mg) LD=4/7
⑥ 560mg/kg×4回 (560mg1回で1匹死亡→残り3匹は420mg/kg×3回 4回総投与量1560mg) LD=5/7
以上の①~⑥のグループのうち、JBRCの吸入曝露実験のLC50に近似のLD50(投与終了時)を得るグループ抽出した。
結果と考察
1. in vitro 毒性試験:
neutral redの取り込み率は、200mg/mLではすべての時間で10%以下、100mg/mLでは1分~30分で70~80%、60分で50%であった。これを体重300gのラットの肺容積を10mLとして単純換算すると1000mg/kgとなり、投与後60分のLD50は1000mg/300以下であることが判った。
2.ラットを用いたin vivo 試験:
総投与量において1040mg/kgでは致死率は14.3%、1300mg/kgでは57.1%、1560mg/kgでは57.1%、2000mg/kgでは71.4%であり、LD50値は1300mg~1560mg/kgであることが示された。これから、1時間に1回(0, 1, 2, 3時間経過時)計4回投与し、さらに1週間経過観察する方法が導き出された。致死しなかった個体について7日後に屠殺して臓器および血清の生化学的変化について検討している。
neutral redの取り込み率は、200mg/mLではすべての時間で10%以下、100mg/mLでは1分~30分で70~80%、60分で50%であった。これを体重300gのラットの肺容積を10mLとして単純換算すると1000mg/kgとなり、投与後60分のLD50は1000mg/300以下であることが判った。
2.ラットを用いたin vivo 試験:
総投与量において1040mg/kgでは致死率は14.3%、1300mg/kgでは57.1%、1560mg/kgでは57.1%、2000mg/kgでは71.4%であり、LD50値は1300mg~1560mg/kgであることが示された。これから、1時間に1回(0, 1, 2, 3時間経過時)計4回投与し、さらに1週間経過観察する方法が導き出された。致死しなかった個体について7日後に屠殺して臓器および血清の生化学的変化について検討している。
結論
比較的毒性の強い物質の吸入毒性LC50値に近い用量にて実施した気管内投与の実験では、意外に短期間投与のほうに短期生存率が高く、この方法においてJBRCの吸入曝露試験によるLC50の近似値とするLD50値を得る条件が明らかとなった
公開日・更新日
公開日
2020-12-14
更新日
-