文献情報
文献番号
201925012A
報告書区分
総括
研究課題名
国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究
課題番号
H29-医薬-指定-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健学総合研究科 メディ‐クウオリティ セキュリティ講座)
研究分担者(所属機関)
- 前川 京子(同志社女子大学 薬学部)
- 秋本 義雄(金沢大学 医薬保健学総合研究科 メディ‐クウオリティ セキュリティ講座 )
- 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
- 吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
1,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成29年に我が国の正規流通網でハーボニー偽造品事案が発生した。我が国への主要な偽造薬侵入口である個人輸入代行サイトでは、偽造品のほか、不良品、未承認薬、無評価薬、無処方箋販売、誤指示書、無資格販売など重大な保健衛生問題を有することを確認している。諸外国の未承認薬の個人輸入や偽造薬の規制、偽造薬による健康被害発生や、個人輸入医薬品の品質、真正性等の実態解明と真贋判定法の改善を図る。以て、我が国の消費者啓発や対策強化の参考に資する。
研究方法
(1)未承認医薬品の個人輸入規制に関する調査:ウェブによる文献と情報の収集・整理及びそれらを基にした今後の課題を検討する。
(2)国際的な偽造医薬品対策の進展:文献と情報を収集、整理、検討した。
(3)模造医薬品による健康被害に関する調査:PubMedに検索式を適用して2019年3月から2020年2月までに掲載された英語論文から、模造薬による健康被害の論文を抽出した。
(4)インターネットで購入した痩身薬Zenigalの含有成分の同定:表示有効成分オルリスタットを含有しない偽造抗肥満薬Zenigalに含まれる未知成分をHPLCトリプル四重極型MSを用いたQ3スキャンやPDAクロマトグラムにより含有成分を探索した。
(5)個人輸入アモキシシリン/クラブラン酸配合剤の保健衛生調査:インターネット上の日本語個人輸入代行サイトを介して購入したアモキシシリン/クラブラン酸配合剤の真正性調査と品質試験並びに携帯型ラマン散乱分析による製品識別について検討した。
(2)国際的な偽造医薬品対策の進展:文献と情報を収集、整理、検討した。
(3)模造医薬品による健康被害に関する調査:PubMedに検索式を適用して2019年3月から2020年2月までに掲載された英語論文から、模造薬による健康被害の論文を抽出した。
(4)インターネットで購入した痩身薬Zenigalの含有成分の同定:表示有効成分オルリスタットを含有しない偽造抗肥満薬Zenigalに含まれる未知成分をHPLCトリプル四重極型MSを用いたQ3スキャンやPDAクロマトグラムにより含有成分を探索した。
(5)個人輸入アモキシシリン/クラブラン酸配合剤の保健衛生調査:インターネット上の日本語個人輸入代行サイトを介して購入したアモキシシリン/クラブラン酸配合剤の真正性調査と品質試験並びに携帯型ラマン散乱分析による製品識別について検討した。
結果と考察
(1)未承認医薬品の個人輸入規制に関する調査:日本その他11カ国(米国、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、英国、イタリア、オランダ、ニュージーランド、中国、韓国)では原則として個人による医薬品輸入は禁止していたが、各国で定めた条件を満たす場合は携帯または郵送や国際宅急便による医薬品個人輸入を認めていた。米国、オーストラリア、ドイツ及びニュージーランドの4カ国では未承認薬について明記していた。
(2)国際的な偽造医薬品対策の進展:米国では医薬品供給網防衛法による処方箋薬シリアル化指針が卸で施行が1年遅れた。FDAの偽造関連事件は53件、不正流通関連10件など。違法オンライン販売麻薬は、致死量のフェンタニル等を含む偽造薬の可能性があった。
EU安全機能委任規制の施行後、ルーマニアとハンガリーで、多くの企業が医薬品検証システムを導入、スキャン回数の増加、警報数は減少した。オランダでは偽造アバスチンが発見された。インターポールPangea作戦(2020年3月)1週間で34,000点以上の新型コロナウイルス関連偽造薬・医療用具等を押収した。WHOは2019年から5年計画で医療製品の品質適正化を目指す。国連薬物・犯罪事務所は偽造医療製品関連犯罪の法実施指針を公表。
(3)模造薬による健康被害に関する調査:偽造薬による健康被害に関する論文は、ワーファリンを含む偽造栄養補助剤による症例1件であった。
(4)インターネットで購入した痩身薬Zenigalの含有成分の同定:Zenigalに含まれる主要な未知成分について、その部分構造の質量値は取得されたが、同定には至らなかった。今後、本未知物質、及びそのフラグメントイオンの精密質量の取得し、同定を進めていく予定である。シブトラミン同定は報告済み。LC/MSは、偽造が疑われる医薬品中の未知含有成分を同定・定量する有用な手段である。
(5)個人輸入アモキシシリン/クラブラン酸配合剤の保健衛生調査:個人輸入したアモキシシリン/クラブラン酸配合剤には、品質に問題がある製品が混在した。携帯型ラマン散乱分光分析による偽造医薬品鑑別法の確立に向けて、今後、対象を拡大するとともに、解析方法について、さらに検討する必要性が示された。
(2)国際的な偽造医薬品対策の進展:米国では医薬品供給網防衛法による処方箋薬シリアル化指針が卸で施行が1年遅れた。FDAの偽造関連事件は53件、不正流通関連10件など。違法オンライン販売麻薬は、致死量のフェンタニル等を含む偽造薬の可能性があった。
EU安全機能委任規制の施行後、ルーマニアとハンガリーで、多くの企業が医薬品検証システムを導入、スキャン回数の増加、警報数は減少した。オランダでは偽造アバスチンが発見された。インターポールPangea作戦(2020年3月)1週間で34,000点以上の新型コロナウイルス関連偽造薬・医療用具等を押収した。WHOは2019年から5年計画で医療製品の品質適正化を目指す。国連薬物・犯罪事務所は偽造医療製品関連犯罪の法実施指針を公表。
(3)模造薬による健康被害に関する調査:偽造薬による健康被害に関する論文は、ワーファリンを含む偽造栄養補助剤による症例1件であった。
(4)インターネットで購入した痩身薬Zenigalの含有成分の同定:Zenigalに含まれる主要な未知成分について、その部分構造の質量値は取得されたが、同定には至らなかった。今後、本未知物質、及びそのフラグメントイオンの精密質量の取得し、同定を進めていく予定である。シブトラミン同定は報告済み。LC/MSは、偽造が疑われる医薬品中の未知含有成分を同定・定量する有用な手段である。
(5)個人輸入アモキシシリン/クラブラン酸配合剤の保健衛生調査:個人輸入したアモキシシリン/クラブラン酸配合剤には、品質に問題がある製品が混在した。携帯型ラマン散乱分光分析による偽造医薬品鑑別法の確立に向けて、今後、対象を拡大するとともに、解析方法について、さらに検討する必要性が示された。
結論
米国や欧州は強化した偽造薬規制を着々と実施している。COVID-19関連の偽造品がすでに世界で大量に出回っていた。米国のフェンタニル含有偽造麻薬を初め、偽造医薬品による健康被害は続いた。医薬品の個人輸入は未承認薬であっても自らの疾病治療のために少量の携帯や送付が特定の条件下で主要国で認められていた。個人輸入医薬品から品質不良品も検出され、その危険性を認識しなければならない。LC/MSは、偽造が疑われる医薬品中の未知含有成分を同定・定量する有用な手段であった。携帯ラマン散乱分光分析は同種同効薬でも異製品を簡単に識別することが示された。命にかかわる偽造品が世界的に蔓延しており、引き続き蔓延実態や対策を把握し、わが国の施策に資する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2021-01-06
更新日
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