文献情報
文献番号
201925008A
報告書区分
総括
研究課題名
血漿分画製剤の原料となる血漿の採漿方法及び品質確保のための研究
課題番号
19KC1001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院政策科学分野)
研究分担者(所属機関)
- 津野 寛和(日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センター検査部)
- 木村 洋一(一般社団法人 日本血液製剤機構経営戦略部経営企画課)
- 野島 清子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
- 平安山 知子(九州大学病院 遺伝子・細胞療法部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
究目的
原料血漿の採漿基準、安全対策、製造に伴う問題、医療現場での使用状況等について国内外の状況を調査し、今後の安全で安定供給を視野に入れたわが国の原料血漿採漿方法に関する政策提言を行うことである。
原料血漿の採漿基準、安全対策、製造に伴う問題、医療現場での使用状況等について国内外の状況を調査し、今後の安全で安定供給を視野に入れたわが国の原料血漿採漿方法に関する政策提言を行うことである。
研究方法
日本赤十字社の血液事業年度報や厚生労働省の審議会等の公表資料および公表論文やWebサイト、海外機関に対する質問、海外の血漿分画事業に関する会議に出席するなどして情報を収集して分析した。
結果と考察
置換血小板を導入した場合は、少なくともネガティブ予測を当面満たすことができる。成分献血の血漿採血の必要性は増大している。血漿採血が増加することからコスト増大するが、それは血漿採血の採漿単価が飛びぬけて高いためである。スクリーニング検査とNATのコストは、日赤のHBs-Agの検査を廃止することで節約されるコストは、約2.7億円であった。
海外の成分献血基準は、スペイン、オーストラリア、フランスでは50kg 以上が条件となっている。採血可能年齢は、スペインでは男女共に18-65歳、オーストラリアでは男女共に18~70歳(初回献血者)または18~80歳(定期、頻回献血者)となっている。採血回数は、スペインでは年間24回まで、かつ上限採血量25リットルであり、オーストラリアでは年間25回まで、かつ1回採血量は循環血液量の 13% で開始し、上限18%まで増量となっている;フランスでは上限855mL(男性)/850mL(女性)となっている。
分画用血漿に対してはHBV,HIV,HCVのNAT検査は求められておらず、HBs抗原、HCV抗体、HIV-1/2抗体実施されていないこと、ボランタリーにシャーガス抗体、HTLV-1/2抗体、サイトメガロウイルス検査が実施されている等の特徴が見られた。輸血用にボランタリーに実施されているHEVとウェルトナイルウイルス(WNV)のNAT検査は分画用には実施されていないことが分かった。
免疫グロブリン製剤の需要増加は国内だけではなく海外においても同様の傾向を示している。米国では平均9%/年と日本より増加のペースが速く、直近10年間で供給量が2倍程度に増加している。米国における使用疾患の内訳では原発性免疫不全症(PID)が最も多く、次いで自己免疫性疾患であるCIDP、MGが続いている。
増加する需要に必要な原料血漿を確保するため、分画事業者は各社とも傘下の採漿業者が運営する採漿センターを増やすなどの対応を図っており、2018年度では米国内で確保された原料血漿の9割以上が分画事業者によるものとなっている。分画事業者による採漿は有償が中心であり、原料血漿必要量の増加を背景に積極的なドナーリクルート活動が展開されている。
九州大学病院での免疫グロブリン製剤の年間総使用量は2010年から2018年までで、平均27,106(22,700 – 32,295)g/年であった。10年前の2010年は29,734gで、最も少ないのは2014年であった。その後の使用量は毎年増大しており、2016年12月のCIDPの運動機能低下の進行抑制の適応承認後は2017年31,124g、2018年32,295gとなり、2019年は半期で19,590gであった。
カナダの免疫グロブリン製剤の自給率は、この10年で急減し、かつては50%程度を維持できていたものの現在は13.5%程度に過ぎない。そこで、2019年から2024年における血液事業5か年計画の一つとしてグロブリン製剤の原料となる血漿の安定的確保が織り込まれた。
オーストラリア赤十字社の目標は、免疫グロブリンの国内自給率を最低でも60%まで引き上げることである。多くの議論がこの目標達成のために行われ、ビジネスモデルもこの目標に到達するために推奨事項を設定している。
海外の成分献血基準は、スペイン、オーストラリア、フランスでは50kg 以上が条件となっている。採血可能年齢は、スペインでは男女共に18-65歳、オーストラリアでは男女共に18~70歳(初回献血者)または18~80歳(定期、頻回献血者)となっている。採血回数は、スペインでは年間24回まで、かつ上限採血量25リットルであり、オーストラリアでは年間25回まで、かつ1回採血量は循環血液量の 13% で開始し、上限18%まで増量となっている;フランスでは上限855mL(男性)/850mL(女性)となっている。
分画用血漿に対してはHBV,HIV,HCVのNAT検査は求められておらず、HBs抗原、HCV抗体、HIV-1/2抗体実施されていないこと、ボランタリーにシャーガス抗体、HTLV-1/2抗体、サイトメガロウイルス検査が実施されている等の特徴が見られた。輸血用にボランタリーに実施されているHEVとウェルトナイルウイルス(WNV)のNAT検査は分画用には実施されていないことが分かった。
免疫グロブリン製剤の需要増加は国内だけではなく海外においても同様の傾向を示している。米国では平均9%/年と日本より増加のペースが速く、直近10年間で供給量が2倍程度に増加している。米国における使用疾患の内訳では原発性免疫不全症(PID)が最も多く、次いで自己免疫性疾患であるCIDP、MGが続いている。
増加する需要に必要な原料血漿を確保するため、分画事業者は各社とも傘下の採漿業者が運営する採漿センターを増やすなどの対応を図っており、2018年度では米国内で確保された原料血漿の9割以上が分画事業者によるものとなっている。分画事業者による採漿は有償が中心であり、原料血漿必要量の増加を背景に積極的なドナーリクルート活動が展開されている。
九州大学病院での免疫グロブリン製剤の年間総使用量は2010年から2018年までで、平均27,106(22,700 – 32,295)g/年であった。10年前の2010年は29,734gで、最も少ないのは2014年であった。その後の使用量は毎年増大しており、2016年12月のCIDPの運動機能低下の進行抑制の適応承認後は2017年31,124g、2018年32,295gとなり、2019年は半期で19,590gであった。
カナダの免疫グロブリン製剤の自給率は、この10年で急減し、かつては50%程度を維持できていたものの現在は13.5%程度に過ぎない。そこで、2019年から2024年における血液事業5か年計画の一つとしてグロブリン製剤の原料となる血漿の安定的確保が織り込まれた。
オーストラリア赤十字社の目標は、免疫グロブリンの国内自給率を最低でも60%まで引き上げることである。多くの議論がこの目標達成のために行われ、ビジネスモデルもこの目標に到達するために推奨事項を設定している。
結論
人口構成から考えて今後の献血者の確保は大きな困難を伴うことが示されている。特に需要が高まる免疫グロブリン製剤をめぐっては、単に需給バランスを議論することなく、維持療法中止の目安や対象となる患者が明確化による使用の適正化が図られる可能性や、今後免疫グロブリン製剤の適応疾患における新規治療法、代替薬の登場による需要減少の可能性についても注視していく必要がある。
公開日・更新日
公開日
2021-01-06
更新日
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