文献情報
文献番号
201925007A
報告書区分
総括
研究課題名
新たなアプローチ方法による献血推進方策と血液製剤の需要予測に資する研究
課題番号
H30-医薬-一般-011
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
研究分担者(所属機関)
- 鹿野 千治(日本赤十字社 血液事業本部経営企画部事務戦略室)
- 秋田 智之(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、3つの研究の柱「血液製剤の医療需要と供給の予測に関する研究」、「若年者の献血推進の方策と教育資材の開発」、「対策の効果と評価,効果測定指標に関する研究」からなり、エビデンスに基づいた献血施策の基盤となる成果の提示を目指す。
研究方法
3つの研究の柱を基に人口動態、社会行動確率論的、情報マネジメント、社会医学的、医歯薬学教育など多岐にわたる研究分野からのアプローチを実施する。
結果と考察
1)前年度比予測を上回る需要があった免疫グロブリン製剤の使用実態の現状把握、需要増加の要因を明らかにすることを目的としJMDC健康保険組合加入者の診療報酬記録(75歳以上が全体の0.1%)およびNDB(全年齢を含む悉皆データ)を解析対象とした。
【JMDC1】疾患別にみた患者数および患者一人当たりの使用量の推移に関する現状把握では、17主傷病別にみた患者一人当たりの年間免疫グロブリン製剤使用量について、年度別に算出した結果、2008年から2015年頃まで一人当たりの使用量は各疾患とも増加傾向であったが、その後の傾向は横ばいであった。
【JMDC2】免疫グロブリン製剤使用本数、使用患者数の将来予測では(1)2019年度のJMDC(対象75歳未満)から算出した免疫グロブリン製剤使用本数実測値を、日本人人口(全人口)当たりに換算すると1,515,320本(国内血漿由来:1,485,996本)と推計された。厚労省血液対策課の作成した2019年度人免疫グロブリン製剤(国内血漿由来)目標値2,353,600本の63.1%を捕捉した結果となった。(2)免疫グロブリン製剤使用本数は2029年まで増加が予測され、なかでも献血ヴェノグロブリンの増加が顕著であった。2029年までの免疫グロブリン製剤使用患者数予測値は、2019年から2029年まで患者数は横ばいないし微減すると推計された
【NDB】NDB解析による免疫グロブリン製剤使用本数実測値は、2012年度では1,519,195本(2.5g換算)であったが、その後一貫して増加し、2018年度には2,137,564本となった。前述したJMDC解析による推計値1,399,221本(2018年度)、1,515,320本(2019年度)との差異は、JMDCの対象者が75歳未満であることが影響していると考えられる。将来推計については、NDBを用いて今後解析を行う予定である。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、今後免疫グロブリン製剤の需要が増加する可能性についても注視していく必要がある。
2)2016-2017年度の全国献血者データ(各年のべ470万人)を用いて、性・年齢・地域別献血行動推移確率を推定した結果、献血種類を問わず年1回献血群は次年度0回に、年2回以上献血群は次年度も年2回以上になりやすい傾向。献血者数将来予測の結果、2016年度495万本から2031年度417万本と推定。安定的な献血者の確保や献血推進の目標設定に利用可能
3)広島大学医療系学部学生731人、広島市・大阪市献血ルーム来訪者1,214人に意識調査を実施した結果、医療系大学生高学年では献血経験率は30.9%と高く、献血に関する知識認知率も高く、大学医療系学部における献血教育の効果が示唆された。献血ルームの調査からは、若年層が家族・友人などから影響を受け献血行動を取りやすいことが示され、家族や友人同士で話題となるような献血環境作りが若年層献血推進に効果的と考えられた。
4)2019年7月‐10月に同大学医療系学部全学生2,322名を対象とし献血推進パンフレットの配布、献血の重要性に関する説明を行った。その後に広島市内献血ルームを訪れた学生は65名。アンケート調査結果より、若年層の献血推進行動は周囲の環境に大きく影響することが示唆され、パンフレット等による知識の普及と合わせて家族・友人同士で献血行動をとりやすい環境作りが重要。また、同大学では学生が献血に協力する学生のネットワーク構築を行うことを目的としてKasumi-Bloodonorsを結成した。2020年2月以降、COV19感染症の影響による外出自粛が続き献血者数の減少が続いている中、同団体は同大学生に対する働きかけの結果、学生30名弱が献血行動に至ったことは意義が大きい
5)医学部を有する全82大学を対象とし、献血教育の現状について全国調査を行った結果、回答は20大学(24.4%)。医学部学生への献血教育を行っていたのは11大学(55.0%)、今後導入したい教育コンテンツは「献血制度を含むわが国の血液事業のあゆみに関する講義」(35%)が最も多い。教育資材(講義用スライドやハンドブックなど)の作成・開発を進めることが医療系大学における献血推進に役立つ可能性が示された
【JMDC1】疾患別にみた患者数および患者一人当たりの使用量の推移に関する現状把握では、17主傷病別にみた患者一人当たりの年間免疫グロブリン製剤使用量について、年度別に算出した結果、2008年から2015年頃まで一人当たりの使用量は各疾患とも増加傾向であったが、その後の傾向は横ばいであった。
【JMDC2】免疫グロブリン製剤使用本数、使用患者数の将来予測では(1)2019年度のJMDC(対象75歳未満)から算出した免疫グロブリン製剤使用本数実測値を、日本人人口(全人口)当たりに換算すると1,515,320本(国内血漿由来:1,485,996本)と推計された。厚労省血液対策課の作成した2019年度人免疫グロブリン製剤(国内血漿由来)目標値2,353,600本の63.1%を捕捉した結果となった。(2)免疫グロブリン製剤使用本数は2029年まで増加が予測され、なかでも献血ヴェノグロブリンの増加が顕著であった。2029年までの免疫グロブリン製剤使用患者数予測値は、2019年から2029年まで患者数は横ばいないし微減すると推計された
【NDB】NDB解析による免疫グロブリン製剤使用本数実測値は、2012年度では1,519,195本(2.5g換算)であったが、その後一貫して増加し、2018年度には2,137,564本となった。前述したJMDC解析による推計値1,399,221本(2018年度)、1,515,320本(2019年度)との差異は、JMDCの対象者が75歳未満であることが影響していると考えられる。将来推計については、NDBを用いて今後解析を行う予定である。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、今後免疫グロブリン製剤の需要が増加する可能性についても注視していく必要がある。
2)2016-2017年度の全国献血者データ(各年のべ470万人)を用いて、性・年齢・地域別献血行動推移確率を推定した結果、献血種類を問わず年1回献血群は次年度0回に、年2回以上献血群は次年度も年2回以上になりやすい傾向。献血者数将来予測の結果、2016年度495万本から2031年度417万本と推定。安定的な献血者の確保や献血推進の目標設定に利用可能
3)広島大学医療系学部学生731人、広島市・大阪市献血ルーム来訪者1,214人に意識調査を実施した結果、医療系大学生高学年では献血経験率は30.9%と高く、献血に関する知識認知率も高く、大学医療系学部における献血教育の効果が示唆された。献血ルームの調査からは、若年層が家族・友人などから影響を受け献血行動を取りやすいことが示され、家族や友人同士で話題となるような献血環境作りが若年層献血推進に効果的と考えられた。
4)2019年7月‐10月に同大学医療系学部全学生2,322名を対象とし献血推進パンフレットの配布、献血の重要性に関する説明を行った。その後に広島市内献血ルームを訪れた学生は65名。アンケート調査結果より、若年層の献血推進行動は周囲の環境に大きく影響することが示唆され、パンフレット等による知識の普及と合わせて家族・友人同士で献血行動をとりやすい環境作りが重要。また、同大学では学生が献血に協力する学生のネットワーク構築を行うことを目的としてKasumi-Bloodonorsを結成した。2020年2月以降、COV19感染症の影響による外出自粛が続き献血者数の減少が続いている中、同団体は同大学生に対する働きかけの結果、学生30名弱が献血行動に至ったことは意義が大きい
5)医学部を有する全82大学を対象とし、献血教育の現状について全国調査を行った結果、回答は20大学(24.4%)。医学部学生への献血教育を行っていたのは11大学(55.0%)、今後導入したい教育コンテンツは「献血制度を含むわが国の血液事業のあゆみに関する講義」(35%)が最も多い。教育資材(講義用スライドやハンドブックなど)の作成・開発を進めることが医療系大学における献血推進に役立つ可能性が示された
結論
上記、得られた知見は研究目的に適う
公開日・更新日
公開日
2021-01-06
更新日
-