ワクチン等の品質確保を目的とした新たな国家検定システムの構築のための研究

文献情報

文献番号
201925004A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチン等の品質確保を目的とした新たな国家検定システムの構築のための研究
課題番号
H30-医薬-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
脇田 隆字(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 高橋 宜聖(国立感染症研究所 免疫部)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 石井 孝司(国立感染症研究所 品質保証・管理部)
  • 花木 賢一(国立感染症研究所 動物管理室)
  • 染谷 雄一(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 森 茂太郎(国立感染症研究所 細菌第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,880,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国家検定は、ワクチン、血液製剤等の特に注意を要する医薬品に設けられている制度である。この制度は、WHOにおいても各国の規制当局が実施しなければならない必須要件と定めており、ワクチン、血液製剤等の品質確保において重要な役割を担っている。この一方で、ワクチン、血液製剤等の品質は向上しており、品質向上に合わせた柔軟な国家検定制度のあり方の検討は急務となってきている。本研究では、国家検定をより有効な制度に向上させるために必要な調査、研究を行う。
研究方法
本研究では、1)ワクチンの国家検定において既に導入されている製造・試験記録等要約書(SLP)審査制度の血液製剤、抗毒素製剤等への拡大、2)国家検定に用いられている動物実験について、試験精度、再現性等の改善及び動物愛護の観点からの3Rs対応、3)ワクチン等の品質に係るリスクを客観的に評価し、品質リスクに応じて試験頻度及び試験項目を変更可能な国家検定の仕組みの提案、を主として検討した。
結果と考察
1)血液製剤については、ワクチン製剤とは別に血液製剤に特化したSLP様式作成指針を作成し、今年度は各社各工場で定めた優先7品目のグロブリン製剤の様式通知を先行し試行を開始した。今後は順次、他の品目の様式作成と通知を行い、全品目同時に施行を開始する。問題点は試行の間に解決し、血液製剤のSLP審査制度を滞りなく導入することができるよう進めている。蛇毒抗毒素製剤については、乾燥まむしウマ抗毒素についてSLP審査の試行を行い、その他の抗毒素製剤については試行を省略する形で進めることになった。2)異常毒性否定試験の今後のあり方について、ワクチン製剤も含め幅広く検証し,生物学的製剤基準への省略規定導入による試験の廃止を検討した。また、ヒトの血清中には、はぶ毒素(出血II)に対する十分な抗出血II価が含まれているという科学的根拠に基づき、生物学的製剤基準の改正案では、はぶ毒素(出血II)関係の記載が削除された。マウスの致死性動物試験については、ヒト用赤外線体温計を用いてマウス体温測定を簡易に行うことができ、新たな指標として体温に基づく人道的エンドポイント設定が可能と考えられた。また、各種ワクチンの実験動物を用いて評価するin vivo力価試験については、抗原量を測定するin vitro試験に移行するための検討を進めた。インフルエンザHAワクチンの力価試験については、現在実施されているSRD試験の再現性について解析を行い、事前に充分な試験条件の検討や測定基準を確立することにより、全ロット検定試験から一部ロット検定試験の実施も可能と考えられた。3)ワクチンに対する品質リスク評価手法の改善を図るため、これまでに実施した品質リスク評価(試行)に対するアンケート調査を行った。その結果、これまでのリスク評価の試行では、製剤ごとの特性を考慮して各評価項目の重要度が設定できるよう、「各評価者が設定した重要度」を用いて主に総合的リスクスコアを算出してきたが、「共通の重要度」を用いることで評価者ごとのバラつきや偏りを避けることができると考えられた。さらに、リスク評価に基づいて国家検定における試験実施頻度を設定する際の基本的な方針及び考え方等の草案を作成した。また、ワクチンの安定供給を確保するため並行検定の常時実施を導入した場合に生じ得る問題点を抽出し、その対策について検討したところ、並行検定の対象となる製剤や試験の選択を考慮するなど、制度上の工夫により克服できると考えられた。

結論
血液製剤、抗毒素製剤等へのSLP審査制度の導入については、メーカー、行政と協議し、令和元年度7月にSLP審査の試行を開始した。動物試験の検討では、ワクチン4製剤において生物学的製剤基準の異常毒性否定試験に省略規定が導入され、乾燥はぶウマ抗毒素では生物学的製剤基準からはぶ毒素(出血II)関係の記載が削除される予定である。国家検定に用いられる試験法については、主に動物試験の改良及び開発を行うことにより、試験精度及び再現性等の改善並びに3Rs対応を進めた。国家検定の試験実施には多くのリソースと時間を要することから、全製品一律の検定試験の実施から製品の品質リスクに応じて試験頻度を可変させる仕組みの導入を検討した。このようなシステムは既に多くの国で採用されていることから、それらの実施例を参考にしつつ、リスク評価に基づいて国家検定における試験実施頻度を設定する際の基本的な方針及び考え方等の草案作成等を行い、国家検定にリスク評価を導入する検討を進めた。また、並行検定の常時実施は、国家検定の質的低下や信頼性の低下を招くことなく、医薬品の製造後、市場への出荷までの期間を短縮できることから、導入に向けて具体的に検討を進めるべき課題である。

公開日・更新日

公開日
2020-07-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-07-08
更新日
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研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201925004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,880,000円
(2)補助金確定額
2,880,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,648,586円
人件費・謝金 0円
旅費 220,046円
その他 11,368円
間接経費 0円
合計 2,880,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-07-08
更新日
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