健康食品による健康被害情報を踏まえた安全性評価系の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201924036A
報告書区分
総括
研究課題名
健康食品による健康被害情報を踏まえた安全性評価系の開発に関する研究
課題番号
19KA3002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 位旨(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 一平(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部 )
  • 東泉 裕子(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
2,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 2018年6月に食品衛生法が改正され、「特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集」が定められた。しかし、健康食品に関する被害情報の収集、並びにその被害事象と健康食品との因果関係の評価を含めた安全性を確保する国の仕組みは整っていない。そのため、健康食品による健康被害情報を踏まえた安全性評価系の開発は、行政上、早急に対応すべき課題であると考えられる。申請者が所属する医薬基盤・健康・栄養研究所では、健康食品の安全性確保に関する研究を行っており、健康食品の安全性・有効性情報データベースを中心とした情報の収集と蓄積、並びに被害情報収集体制の構築に取り組んでいる。これまでの調査・研究において、健康食品の重篤な被害事例として肝機能指標の悪化が最も多く、それを惹起した健康食品の多くは抽出物を主成分とする製品であることが報告されている。また、永田らも健康食品と医薬品の併用は肝臓薬物代謝を介した医薬品の重篤な副作用を引き起こす可能性を示唆している。これらのことから、肝臓機能、並びに肝臓薬物代謝に着目した健康食品の安全性評価は急務と言える。そこで、本研究では健康食品による肝臓への影響を有害性情報も含めた被害情報をもとに細胞実験ならびに動物実験から検証し、健康食品と被害情報の因果関係を科学的に解析する。この研究の最終目的は、一連の研究から健康食品による健康被害情報を踏まえた安全性評価系の開発することである。
研究方法
 本研究は健康食品による健康被害情報を踏まえた安全性評価系の開発を目的とし、「健康被害(肝機能指標および肝臓薬物代謝に関する)の情報収集」→「原因の科学的解明」→「情報発信」の一連の体系の構築を目的としている。
 本年度は、健康食品に関するデータベースとして現在利用可能な機能性食品便覧、「健康食品」の安全性・有効性情報データベースおよびナチュラルメディシン・データベースから肝機能指標および肝臓薬物代謝への影響が報告されている健康食品および健康食品中成分について調査を行った。抽出された成分を含む健康食品および健康食品素材の数をカウントし、成分のランク付けを行い、化学的に同定できる成分を試験対象成分とした。この調査から抽出された成分のいずれかを含み、単一素材から製造され、市販されていることを条件に、先のデータベース調査から抽出された健康食品および健康食品素材を買い上げ、対象成分の分析を行った。分析は液体クロマトグラフィー質量分析計(LCMS)を用いて、LCMSで同時分析が可能な10成分を対象とした(カフェ酸、クロロゲン酸、クマリン、クルクミン、エモジン、ケンフェロール、ルテオリン、ケルセチン、ロスマリン酸、ルチン)。
結果と考察
 健康食品に関するデータベース(機能性食品便覧、「健康食品」の安全性・有効性情報データベース、ナチュラルメディシン・データベース)から1316の健康食品および健康食品素材が抽出された。これら1316素材のうち211素材で肝機能への影響が報告されており、これら211素材には302種類の成分が含まれていた。これら成分の集計結果から健康食品の肝機能指標および肝臓薬物代謝に影響をおよぼす原因物質として18成分を選定した(アントラキノン、カフェ酸、β-カロテン、クロロゲン酸、クマリン、クルクミン、エモジン、ケンフェロール、リナロール、リモネン、ルテオリン、ケルセチン、ロスマリン酸、ルチン、α-ピネン、β-シトステロール、シネオール、セスキテルペン)。本研究では食品成分であり毒性が知られていない物を試験対象としているが、データベースの成分情報から、健康食品にはカフェイン以外のアルカロイドが含まれていることが明らかとなった。本研究は肝臓への毒性にのみ着目しているが、データベースには基本的な毒性(臓器重量への影響や致死量LD50など)が欠落しており、これらについても検討が必要であることを示す結果であった。
 買い上げを行った健康食品の成分分析を行った結果、カフェ酸、クロロゲン酸、ケルセチン、ロスマリン酸およびルチンが種類に関係なく検出頻度が高いことが明らかとなった。一方、検出された成分の含量は1%(10mg/g)以下が多く、すべて成分の含量を合わせた場合でも健康食品として摂取する量は少ないことが明らかとなった。

結論
 データベース調査から、肝機能指標ならびに肝臓薬物代謝に影響をおよぼす可能性のある健康食品および健康食品素材中成分として18成分が抽出された。そのうち10成分を対象に、上市されている健康食品の成分分析を行ったところ、いずれかの成分を含んでいることが明らかとなった。今後は、選定された成分の肝臓への影響を細胞および動物実験から検討し、一連の成果から、健康食品による健康被害情報を踏まえた安全性評価系を開発する予定である。

公開日・更新日

公開日
2020-10-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201924036Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,912,000円
(2)補助金確定額
2,912,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,127,924円
人件費・謝金 0円
旅費 93,860円
その他 18,216円
間接経費 672,000円
合計 2,912,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-08-27
更新日
-