食品を介したダイオキシン類等の人体への影響の把握とその治療法の開発等に関する研究

文献情報

文献番号
201924029A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等の人体への影響の把握とその治療法の開発等に関する研究
課題番号
H30-食品-指定-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
古江 増隆(九州大学 大学院医学研究院皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 辻 学(九州大学油症ダイオキシン研究診療センター)
  • 香月 進(福岡県保健環境研究所)
  • 二宮 利治(九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野)
  • 申 敏哲(シン ミンチョル)(熊本保健科学大学 リハビリテーション学科)
  • 園田 康平(九州大学大学院医学研究院 眼科学分野)
  • 津嶋 秀俊(九州大学病院 整形外科)
  • 鳥巣 剛弘(九州大学病院 消化管内科)
  • 古賀 信幸(中村学園大学 栄養科学部)
  • 月森 清巳(福岡市立こども病院 周産期センター)
  • 辻 博(北九州若杉病院 西日本総合医学研究所)
  • 濱田 直樹(九州大学病院 呼吸器科)
  • 山下 謙一郎(九州大学大学院医学研究院 臨床神経生理学分野)
  • 石井 祐次(九州大学大学院医学研究院 )
  • 室田 浩之(長崎大学医歯薬総合研究科 皮膚病態学分野 )
  • 上松 聖典(長崎大学病院 眼科)
  • 川崎 五郎(長崎大学医歯薬総合研究科 口腔腫瘍治療学分野)
  • 戸高 尊(北九州生活科学センター 水質環境部生体ダイオキシン類分析室)
  • 小野塚 大介(国立循環器病研究センター研究所 予防医学・疫学情報部疫学研究推進室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
183,959,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 赤羽 学 奈良県立医科大学→ 国立保健医療科学院(令和2年1月1日付)

研究報告書(概要版)

研究目的
PCB類・ダイオキシン類の生体への影響、生体内動態を把握し、ダイオキシン類の毒性を緩和する治療法・対処法を見出すことである。
研究方法
1.油症患者の支援と治療研究の推進、2.臨床的追跡調査・疫学調査、3.基礎的研究に分けて行った。1は検診データベースや患者の支援制度の充実、測定機器の精度の維持、2は検診結果をもとに症状や血液中ダイオキシン類の生体内濃度の追跡調査、死因および継世代の調査、3はダイオキシン類の毒性と代謝を明らかにした。

結果と考察
油症患者の支援と治療研究の推進
検診データベースに新たな情報を加え更新した。油症相談員、相談支援員制度は充実し、検診やアンケート調査、訪問検診などの補助業務に加え、死因調査の基盤が完成した。厚生労働省・各自治体と連係関係を構築し、死因調査を開始した。
九州大学、長崎大学、五島中央病院の油症外来は油症ダイオキシン研究診療センター(油症センター)と連携し、順調に運用された。知識の共有、患者の生活の質の向上のため、運動、栄養、漢方セミナーを実施して好評を得た。今年度のダイオキシン類の測定法に関する研究は、油症患者の血液中ダイオキシン類分析においてナローボアカラムが使用出来ないかを検討したところ、感度では従来法と変わりがなかったが、測定時間が20分短縮出来ることが明らかとなった。

臨床的追跡調査・疫学研究
①全国油症一斉検診の受診者について血液中のPCDF等(ダイオキシン類)の濃度を継続的に測定した。2018年度の油症検診で血液中ダイオキシン類濃度測定を行った認定患者195名と未認定者125名について結果集計を行った。②令和元年度油症患者の眼症状の追跡調査では眼脂過多を訴えるものが多かったが、その程度は軽く、油症の影響とは考えにくかった。③油症認定患者の水晶体落屑物質の有無を判定し、落屑症候群と血中のPCB濃度との関連を調査した。油症検診受診者の4.3%で落屑症候群が認めたが、血中PCB濃度は低値であり、血中PCBが落屑症候群に関与する可能性は低いと考えられた。
④油症患者におけるダイオキシン類の運動器機能における影響を調査した。男性患者において、ファンクショナルリーチテストおよび握力がtotal TEQと負の相関にあることが明らかとなった。⑤平成31年度の油症検診において油症患者における口腔粘膜色素沈着を検討した結果では、上顎前歯部においては残存歯数と歯肉色素沈着の程度との間に相関性が認められた。⑥油症発生後に油症患者より出生した児(油症2世)の口腔内色素沈着に影響する因子について検討し、1)色素沈着が重症化するにつれて、男性と喫煙者の割合が増えること、2)母児血中PeCDF濃度との関連では、重症化するにつれて母親血中PeCDF濃度が高い値を示すこと、3)口腔内色素沈着の重症度は喫煙と母親血中PeCDF濃度と有意な相関を示すことが分かった。⑦福岡県油症一斉検診受診者について末梢血CD4陽性T細胞中の細胞内サイトカインを測定した。血中PCB濃度とTh0細胞およびTh2細胞との間に正の相関を認めた。⑧油症患者の皮膚感覚異常について触覚、温痛覚をそれぞれVon freyフィラメントと温熱計を用いて評価し、触覚については油症患者で健常コントロールと比較して鈍くなっている傾向にあった。

基礎的研究
①ベンゾピレン投与ラットに対するケイヒの効果を検討した。その結果、2000Hzの電気刺激周波数ではベンゾピレン投与群で感覚閾値の有意な上昇がみられ、その閾値上昇はケイヒの投与により有意に抑制された。②肺サーファクタント蛋白(SP-D)は油症肺傷害に対して保護な役割を有することが考えられた。③糖尿病治療薬メトホルミンは、油症のみならずIL-1βが病態形成に関わる炎症性疾患の治療に有用である可能性が示唆された。④Tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)母体曝露による出生時の性未成熟の機構の解明では、AHRは周産期に脳下垂体-精巣系を制御し、性ステロイド合成に関与することで、脳の性分化に重要な働きを果たすこと、AHRが欠損すると思春期特異的なtestosteroneの減少、およびその後の持続的な精子数の減少が引き起こされた。⑦ダイオキシン類曝露によって誘導されるSelenBP1は酸化ストレス軽減に寄与している可能性が示唆された。
結論
今後もダイオキシン類が生体に及ぼす慢性の影響を把握し、油症患者に残存する症状を緩和する方法を開発すべく探求を継続する。なお、研究を通じて明らかになった様々な知見についてはホームページ、油症新聞等で広く公表した。

公開日・更新日

公開日
2020-06-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-06-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201924029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
209,713,000円
(2)補助金確定額
209,713,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 49,851,508円
人件費・謝金 33,506,098円
旅費 3,020,460円
その他 97,584,091円
間接経費 25,754,000円
合計 209,716,157円

備考

備考
自己負担 2,990円
利息 167円

公開日・更新日

公開日
2021-10-13
更新日
-