食品用器具・容器包装等の安全性確保に資する研究

文献情報

文献番号
201924019A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用器具・容器包装等の安全性確保に資する研究
課題番号
19KA1003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
六鹿 元雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 裕(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品用器具・容器包装、おもちゃ及び洗浄剤(以下、「器具・容器包装等」)の安全性は、食品衛生法の規格基準により担保されているが、製品の多様化、新規材質の開発、再生材料の使用、諸外国からの輸入品の増加等により多くの課題が生じている。さらに近年では、食品の安全性に関する関心が高まり、その試験及び分析に求められる信頼性の確保も重要な課題となっている。そこで本研究では、器具・容器包装等の安全性に対する信頼性確保及び向上を目的として、規格試験法の性能に関する研究では、ビスフェノールA溶出試験法の性能評価、並びにビスフェノールA試験法の改良に関する研究、市販製品に残存する化学物質に関する研究では、窒素をキャリヤーガスに用いたGC-MSによるジブチルスズ化合物試験法の妥当性確認、窒素をキャリヤーガスに用いたGC-MSのフタル酸エステル試験法への適用及び食品衛生法における酸性食品の食品区分とその擬似溶媒に関する検討を実施した。
研究方法
規格試験の性能に関する研究では、食品衛生法における試験法について、試験室間共同実験による性能評価及び試験法の改良を行った。市販製品に残存する化学物質に関する研究では、協力研究者より研究課題を募り、市販製品に残存する化学物質の実態等を調査するための分析法等に関する研究を行った。
結果と考察
ビスフェノールA溶出試験法について、23試験所が参加する室間共同実験を実施した。その結果、浸出用液が水、4%酢酸、20%エタノールの場合は、Codex委員会が分析法承認のために設定している性能規準の指標値を満たしており、告示試験法の妥当性が確認された。しかし、浸出用液がヘプタンの場合は、性能規準の指標値を満たさない場合があり、告示試験法の妥当性は確認されなかった。また、クロマトグラムにおける各分析対象物質のピーク形状の対称性も悪いことが確認された。以上の結果から、浸出用液がヘプタンの場合の告示試験法については、改良の必要性が考えられた。
ビスフェノールA溶出試験法へのLC-MS法またはLC-MS/MS法の適用性を23試験所が参加する共同実験により検証した。その結果、現状では規格試験への適用が難しいことが示唆され、さらなる検討が必要であった。また、浸出用液がヘプタンの場合について改良法を作成した。本改良法は規格の適否判定を行うための分析法として妥当な水準にある可能性が期待された。さらに、紫外吸光度検出器に代わる検出器として蛍光検出器の適用を検討した結果、4種すべての浸出用液について、分析と定量が可能であることが確認され、代替法として活用可能であることが示唆された。
ジブチルスズ化合物試験法において、キャリヤーガスをヘリウムから窒素へ変更した結果、保持時間及びマススペクトルは大きく変わらなかった。一方、ヘリウムと比べて窒素では感度は約25%の減少となり、バックグラウンドのノイズが増加した。そのため、S/Nは1/10以下に低下した。しかし、限度分析法及び定量分析法のいずれにおいても規格試験として適用可能と考えられる性能を有していた。
GC-MSを用いたフタル酸エステル試験において、キャリヤーガスをヘリウムから窒素へ変更した結果、保持時間及びマススペクトルは大きく変わらなかったが、ピーク面積値は10~50%減少した。そこで、カラムサイズを細く短いものに変更し、流速を下げて測定した。その結果、S/Nは10~20倍に改善した。一方、DNOP、DINP及びDIDPについては感度が不十分だったため、大量に含有されている場合は適否判定を行う事は出来ると推測されたが、規格値相当含有されている場合は適否判定を行うことができる水準ではなかった。しかしながら他の可塑剤が共存していてもこれらのPAEsを含有している可能性のある試料を選別することは可能であると考えられた。
器具・容器包装の規格基準における酸性食品の区分と溶出試験で用いる食品擬似溶媒の検討を行った。その結果、食品の製造基準ではボツリヌス食中毒の発生防止という観点からpH 4.6を指標としており、器具・容器包装の規格においても酸性食品の指標となるpH値を現行の5から4.6へ変更することが望ましいと考えられた。さらに、各種飲料への溶出量を対照として3%酢酸及び4%酢酸の食品擬似溶媒としての妥当性を検証したところ、保守的な管理という観点では、大部分の物質に対して実際よりも多い溶出量が得られる4%酢酸が酸性食品の食品擬似溶媒として妥当と考えられた。一方、国際整合性及び現実的な溶出量による管理という観点では、3%酢酸を食品擬似溶媒とすることも可能と考えられた。
結論
以上の研究成果は、我が国の器具・容器包装等に使用される化学物質の安全性確保と食品衛生行政の発展に大きく貢献するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2020-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201924019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,165,720円
人件費・謝金 2,564,224円
旅費 2,145,790円
その他 4,124,266円
間接経費 0円
合計 15,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-10-15
更新日
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