文献情報
文献番号
201924012A
報告書区分
総括
研究課題名
食品由来薬剤耐性菌のサーベイランスのための研究
課題番号
H30-食品-一般-006
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 治雄(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
- 小澤 真名緒(農林水産省動物医薬品検査所 上席主任研究官)
- 小西 典子(東京都健康安全研究センター 主任研究員)
- 四宮 博人(愛媛県立衛生環境研究所 所長)
- 菅井 基行(国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター長)
- 大西 真(国立感染症研究所 副所長)
- 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部・部長)
- 富田 治芳(群馬大学 大学院医学系研究科 教授)
- 浅井 鉄夫(岐阜大学 大学院連合獣医学研究科 教授)
- 石井 良和(東邦大学 医学部微生物 感染症学講座 教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
31,666,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食品由来細菌の耐性状況を恒常的に把握する体制を構築する。全国地方衛生研究所のネットワークを利用する。各都道府県の地方衛生研究所に協力を求め、市販されている食品中の汚染菌の同定およびその菌の耐性状況を調査する。大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター等を中心に、食品由来細菌の薬剤耐性に関するデータを集計、解析して、国の「ワンヘルスAMR年次報告書」に挙げる。また、WHOのサーベイランスGLASSに定期的に報告する。家畜、食品、ヒトから分離された薬剤耐性菌(大腸菌を対象にする)/耐性遺伝子の解析を行い、それらの伝播様式を解明する。菌の伝播に関しては家畜、食品、ヒトから分離される菌のWhole genome sequencing(WGS)のデータの比較解析することにより推測する。
研究方法
①地方衛生研究所(地研)を主とする食品由来菌耐性サーベイランス:サルモネラ、病原大腸菌、カンピロバクターについて、これまでに確立したプロトコールにしたがって、CLSIディスク拡散法による薬剤感受性検査を行う。
②家畜―食品―人由来耐性菌のデータの比較:上記によって分離された全食品由来菌株の耐性率データを、既に作成している相互変換ソフトを用いて、JANIS(臨床由来株)およびJVARM(家畜由来株)とのデータベースと相互比較し、生態系における耐性菌・耐性遺伝子の流れについて考察する。
③遺伝子レベルの解析:研究班内のサーベイランス間で共通している薬剤や同系統の薬剤の耐性率の比較、および研究班内で得られた耐性菌(人、家畜、食品由来株)の薬剤耐性菌/耐性遺伝子の詳細解析を行い、どのように伝播しているのかを総合的に解析する。
②家畜―食品―人由来耐性菌のデータの比較:上記によって分離された全食品由来菌株の耐性率データを、既に作成している相互変換ソフトを用いて、JANIS(臨床由来株)およびJVARM(家畜由来株)とのデータベースと相互比較し、生態系における耐性菌・耐性遺伝子の流れについて考察する。
③遺伝子レベルの解析:研究班内のサーベイランス間で共通している薬剤や同系統の薬剤の耐性率の比較、および研究班内で得られた耐性菌(人、家畜、食品由来株)の薬剤耐性菌/耐性遺伝子の詳細解析を行い、どのように伝播しているのかを総合的に解析する。
結果と考察
①地方衛生研究所(地研、全国23の地研が参加)を中心にした食品由来株の耐性菌情報を国の「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2019」に提供した。WHOのGLASSにも報告した。
②ヒト、食品及び家畜由来サルモネラ属菌の血清型割合と血清型毎の薬剤耐性率を比較した。その結果、食鳥処理場由来のサルモネラの血清型は、食品由来のサルモネラと同じ傾向が認められた一方、ヒト由来のサルモネラの血清型は食鳥処理場由来及び食品由来に比べて多様であり、鶏又は食品を介したものの他に多様な原因がある関連性が示唆された。
③2018年~2019年分離のC. jejuniとC. coliはともにヒト由来株と食品由来株の耐性傾向に強い類似性があり、食品由来耐性菌とヒト由来耐性菌との関連が強く示唆された。
④動物由来株のコリスチン耐性について調査を行った。その結果、大腸菌では、mcr-1及びmcr-5遺伝子が確認された。mcr-1は牛由来株の0.4%、豚由来株の3.6%、鶏由来株の3.3%であった。また、mcr-5遺伝子は鶏由来株の0.7%であった。
⑤ヒトでは2018年に分離された全大腸菌の中でフルオロキノロン耐性は40.9%、セフォタキシム耐性は27.5%であったが、一方で家畜では2015年時点で鶏、豚、牛などではいずれも10%未満と比較的低かった。大腸菌では家畜分野とヒト分野での耐性菌の直接的な伝播は限定的と考えられた。
⑥2019年の健康者糞便大腸菌のうちフルオロキノロン系薬剤に対する耐性率は約10%,CTX耐性率は約5%であった。IPM,MEPM耐性株はなかったが、mcr-1コリスチン耐性株2株が確認された。
②ヒト、食品及び家畜由来サルモネラ属菌の血清型割合と血清型毎の薬剤耐性率を比較した。その結果、食鳥処理場由来のサルモネラの血清型は、食品由来のサルモネラと同じ傾向が認められた一方、ヒト由来のサルモネラの血清型は食鳥処理場由来及び食品由来に比べて多様であり、鶏又は食品を介したものの他に多様な原因がある関連性が示唆された。
③2018年~2019年分離のC. jejuniとC. coliはともにヒト由来株と食品由来株の耐性傾向に強い類似性があり、食品由来耐性菌とヒト由来耐性菌との関連が強く示唆された。
④動物由来株のコリスチン耐性について調査を行った。その結果、大腸菌では、mcr-1及びmcr-5遺伝子が確認された。mcr-1は牛由来株の0.4%、豚由来株の3.6%、鶏由来株の3.3%であった。また、mcr-5遺伝子は鶏由来株の0.7%であった。
⑤ヒトでは2018年に分離された全大腸菌の中でフルオロキノロン耐性は40.9%、セフォタキシム耐性は27.5%であったが、一方で家畜では2015年時点で鶏、豚、牛などではいずれも10%未満と比較的低かった。大腸菌では家畜分野とヒト分野での耐性菌の直接的な伝播は限定的と考えられた。
⑥2019年の健康者糞便大腸菌のうちフルオロキノロン系薬剤に対する耐性率は約10%,CTX耐性率は約5%であった。IPM,MEPM耐性株はなかったが、mcr-1コリスチン耐性株2株が確認された。
結論
食品由来耐性菌の耐性動向調査体制として地方衛生研究所を中心としたネットワークを利用した。その結果、サルモネラ、カンピロバクターの耐性菌の状況を把握できるようになった。また、食鳥処理場における解体時の交差汚染による食肉への耐性菌伝播状況が食品由来株の耐性状況と相関していることが明らかになった。
公開日・更新日
公開日
2020-06-02
更新日
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