総合診療が地域医療における専門医や多職種連携等に与える効果についての研究

文献情報

文献番号
201922037A
報告書区分
総括
研究課題名
総合診療が地域医療における専門医や多職種連携等に与える効果についての研究
課題番号
H30-医療-指定-018
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
前野 哲博(筑波大学 医学医療系 )
研究分担者(所属機関)
  • 原田 昌範(山口県立総合医療センター へき地医療支援部)
  • 森 正樹(日本外科学会)
  • 西崎 祐史(順天堂大学 革新的医療技術開発研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
16,553,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
総合診療が地域医療における専門医や他職種連携等に与える効果について研究を行う。また、へき地医療の推進に向けたオンライン診療体制、遠隔手術の実施体制の構築、臨床能力を評価する方法を確立するための検討を行う。
研究方法
・総合診療が地域医療における専門医や多職種連携等に与える効果(総括研究)
総合診療医の必要数の検討は、本研究の成果及び各種統計データから適切な算出方法を検討した。事例集は、事例をさらに増やして情報の充実を図った。総合診療医の役割に関する調査では、医療者と文化人類学者がフィールド調査とインタビューを行った。他職種を対象とした総合診療医に対する認識調査は、フォーカスグループを行い、逐語録をもとにテーマ分析を行った。総合診療医のキャリア形成に関する実態調査は総合診療専攻医1年目を対象としてWebアンケート調査を実施した。他職種向けタスクシフティングプログラムの開発を行った。
・へき地医療の推進に向けたオンライン診療体制の構築(分担研究1)
諸外国(米国、豪州、英国、デンマーク)のへき地におけるオンライン診療について調査研究を行った。山口県のへき地において4ケースの実証を通じて、離島へき地におけるオンライン診療の課題を整理し、モデルを示した。
・遠隔手術ガイドラインの検討(分担研究2)
ガイドライン作成にあたって、遠隔手術の適応と運用方法について、安全面、倫理面、法的側面ならびに技術的側面から検討した。並行して遠隔手術の実証研究を行い、得られた情報をガイドラインの作成にフィードバックした。
・JMEP基本的臨床能力評価試験の質向上(分担研究3)
①GM-ITE問題作成プロセスのブラッシュアップ、②CBT(Computer- Based-Testing)導入による試験問題管理の効率化、③実践経験の評価に即した問題作成、④GM-ITEバリデーションの4つのテーマを同時に進めた。
結果と考察
・総括研究
総合診療医は、院内外の医療従事者に治療あるいはケアの統合や方向づけをし、規範的統合を図っていた。多職種は、医師に忠告的リーダーシップだけでなく、フラットでオープンな態度を求めていた。一方、医師患者関係には命令や説明といった父権主義を期待していた。これはアジアで特徴的である、関係主義的価値観が影響している可能性がある。
・分担研究1
米国視察では、オンライン診療の実際の様子を撮影・録画し、調査シートの項目について関係者にヒアリングし、現状や課題をまとめた。また、4ケースの実証を検討する過程で、課題の整理を進めている。米国では、へき地にて家庭医を中心にオンライン診療が実践され、実用的であった。ただし、普段からの良好な医師患者関係やスタッフとの連携が重要であり、制度だけを導入すればよいとは限らない。診療報酬上の課題が大きいことが分かり、2020年の診療報酬改定がオンライン診療の指針の内容に沿うものに変更されることが期待される。
・分担研究2
ガイドラインの具体的事項として、現場医師と遠隔医師との責任の所在と按分、医療の質と安全性の確保、遠隔手術の限界と患者への情報提供のあり方、適応手術のあり方、通信環境のあり方について検討を行った。並行してプロジェクトチームを立ち上げ、実証研究に向けての体制構築を行った。学術情報ネットワーク(SINET5)で北海道と九州を接続した際の伝達遅延を計測し、遠隔手術の実施可能性を確認した。ガイドライン作成に向けて具体的な検討が開始されたが、適応となる手術や運用方法には、実証研究の成果や通信環境の整備状況、さらにはロボットの技術的側面が大きく影響することから、実証研究と並行してガイドライン作成を進める必要性が確認された。
・分担研究3
本年度は研究準備~実施の期間であり、結果報告ならびに考察は次年度を予定している。
結論
・総括研究
多職種は、階層上位かつ父権的という医師への認識をもつ一方で、地域包括ケアにおいては、患者中心で他職種に親近性のある医師の役割を期待していた。
・分担研究1
諸外国には好事例が存在する。我が国のへき地におけるオンライン診療を充実するには、特に診療報酬上の課題があり、実証を継続し示していく必要がある。
・分担研究2
遠隔手術の実施に向けた体制の構築を行った。安全な導入に向けてガイドラインの作成を開始・継続している。遠隔手術の適用対象等についてのガイドラインとして活用し、総合診療医のバックアップ体制の充実を図る。
・分担研究3
次年度の研究結果を確認し、考察を加えた上で、報告を予定している。

公開日・更新日

公開日
2020-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201922037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,095,000円
(2)補助金確定額
15,355,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,740,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 967,929円
人件費・謝金 119,600円
旅費 7,987,913円
その他 5,738,204円
間接経費 542,000円
合計 15,355,646円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-09-02
更新日
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