文献情報
文献番号
201922007A
報告書区分
総括
研究課題名
患者安全を支援するための法制度の構築を目指した比較研究:法による医療安全対策の支援・阻害機能の再検討
課題番号
H30-医療-一般-006
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 太(上智大学 法学部)
研究分担者(所属機関)
- 樋口 範雄(武蔵野大学 法学部)
- 佐藤 雄一郎(東京学芸大学 教育学部 人文社会科学系)
- 木戸 浩一郎(帝京大学 医学部産婦人科)
- 織田 有基子(日本大学 大学院法務研究科)
- 磯部 哲(慶應義塾大学 法務研究科)
- 児玉 安司(東京大学 医学部附属病院)
- 我妻 学(首都大学東京 法学政治学研究科 法曹養成専攻)
- 小山田 朋子(法政大学 法学部)
- 佐藤 智晶(青山学院大学 法学部)
- 畑中 綾子(東京大学 高齢社会総合研究機構)
- 井上 悠輔(東京大学 医科学研究所)
- 佐藤 恵子(京都大学 医学部附属病院)
- 安樂 真樹(東京大学 医学部附属病院)
- Ortolani Andrea (オルトラーニ アンドレア)(慶應義塾大学 法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,913,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は,諸外国における患者安全対策の比較研究を行い,法による医療安全対策の支援・阻害機能を分析することによって,過去20年間に展開された医療安全対策の見直し作業に対する示唆を得ることである.本研究の特色は,医療安全における諸制度と法機能について,諸外国の制度の全体像を整理し,その特性と具体的な課題を明確化する点である.
研究方法
上記目的のため以下の2つの観点から分析を行う.初(H30)年度は調査対象国の医療安全対策とそこでの法機能に関する文献調査を中心に行い,第2(H31)年度は文献調査を継続し疑問点の解消および運用実態のさらなる把握に努めつつ,可能な限り実地調査なども実施することによって最新状況の把握も進める.そして医療安全対策と法支援機能の効果と課題などを分析し,日本での医療安全対策の改善への示唆を得ることを目指す.
結果と考察
研究の進捗状況について,初(平成30)年度の検討は概ね計画通り順調に進んだ.調査対象国の医療安全対策とそこでの法機能に関する制度的枠組・運用についての正確な把握であるが,一部海外調査も交えつつ,文献調査を中心に可能な限り網羅的に検討してきた.また担当部局の医療安全推進室・医事課と綿密に連絡を取っており,その中で医事課が今後の検討課題と考える諸外国におけるインフォームド・コンセント法制の基本的枠組みについての調査も検討対象とすることとした.それらを含め今後の医療安全の見直し議論における課題などについて検討することを目指した.
第2年度には,初年度の研究過程で浮かび上がった疑問点の解消を含め,また特に諸外国における医療安全対策と法機能についての特性と課題についての分析,さらに無過失補償制度を含め関連諸制度(裁判制度,社会保障,懲戒手続,死因究明制度など)との関連,さらに,各国の社会的背景などについても検討した.これらの検討を経て,日本での医療安全の充実策とそこでの法機能のあり方の再検討を目指した.
詳細は分担報告に譲るが,まず医療事故に関する研究として,以下がある.最初の3つの研究はイギリスの医療事故に対する報告および調査分析制度に関する最新の状況の報告である.(Ⅰ)イギリスにおける新たな医療事故調査制度についての我妻報告,(Ⅱ)イングランド患者安全事象報告学習制度の新たな展開-NRLSから新システムへ-を論じた織田報告である.さらに,(Ⅲ)佐藤雄一郎報告は,わが国における副作用等情報の収集制度と対比させながら,インプラントによる豊胸術という個別具体的な分野に焦点を当てた英国における医療の調査について報告する.
(Ⅳ)医療事故ではないが,医薬品の安全性などにも通じる問題である化粧品,石鹸という商品の安全性に関して,大規模な石鹸によるアレルギー被害に関する訴訟について分析する畑中報告がある.次の2つの報告は,医療事故でも紛争化や事件後の加害者・被害者両者に大きな影響を与えうる謝罪に関するものである.(Ⅴ)樋口報告は,合衆国における謝罪の証拠排除を認める州制定法の紛争化抑制機能についての最新の実証研究を紹介する.(Ⅵ)佐藤恵子報告は,謝罪の在り方についての医療現場での訓練の在り方について実際的な観点からの報告である.さらに(Ⅶ)樋口報告による医療事故後の対応をめぐる仮設事例である.(Ⅷ)最後に情報による規制という点で事故報告の制度の諸問題にも連なる問題である利益相反への規制の現況を論じた小山田報告がある.
第2年度には,初年度の研究過程で浮かび上がった疑問点の解消を含め,また特に諸外国における医療安全対策と法機能についての特性と課題についての分析,さらに無過失補償制度を含め関連諸制度(裁判制度,社会保障,懲戒手続,死因究明制度など)との関連,さらに,各国の社会的背景などについても検討した.これらの検討を経て,日本での医療安全の充実策とそこでの法機能のあり方の再検討を目指した.
詳細は分担報告に譲るが,まず医療事故に関する研究として,以下がある.最初の3つの研究はイギリスの医療事故に対する報告および調査分析制度に関する最新の状況の報告である.(Ⅰ)イギリスにおける新たな医療事故調査制度についての我妻報告,(Ⅱ)イングランド患者安全事象報告学習制度の新たな展開-NRLSから新システムへ-を論じた織田報告である.さらに,(Ⅲ)佐藤雄一郎報告は,わが国における副作用等情報の収集制度と対比させながら,インプラントによる豊胸術という個別具体的な分野に焦点を当てた英国における医療の調査について報告する.
(Ⅳ)医療事故ではないが,医薬品の安全性などにも通じる問題である化粧品,石鹸という商品の安全性に関して,大規模な石鹸によるアレルギー被害に関する訴訟について分析する畑中報告がある.次の2つの報告は,医療事故でも紛争化や事件後の加害者・被害者両者に大きな影響を与えうる謝罪に関するものである.(Ⅴ)樋口報告は,合衆国における謝罪の証拠排除を認める州制定法の紛争化抑制機能についての最新の実証研究を紹介する.(Ⅵ)佐藤恵子報告は,謝罪の在り方についての医療現場での訓練の在り方について実際的な観点からの報告である.さらに(Ⅶ)樋口報告による医療事故後の対応をめぐる仮設事例である.(Ⅷ)最後に情報による規制という点で事故報告の制度の諸問題にも連なる問題である利益相反への規制の現況を論じた小山田報告がある.
結論
本年度には,昨年度の疑問点,課題の検討を進め,近い将来の事故調査制度,医療安全向上の検討の際に必要とされる基礎資料の充実を目指してきた.また特に諸外国における医療安全対策と法機能についての特性と課題についての分析,さらに無過失補償制度を含め関連諸制度(裁判制度,社会保障,懲戒手続,死因究明制度など)との関連,さらに,各国の社会的背景などについても検討してきた.加えて,担当部局の要請に基づき,諸外国の事故報告制度やその基礎となる患者などへの説明義務(インフォームド・コンセント)の現況についてもまとめた.これらの検討を経て,日本での医療安全の充実策とそこでの法機能のあり方の再検討を目指した.成果は各年度の報告書にまとめると同時に,積極的に大学紀要,商業雑誌等への掲載を研究期間終了後も目指す.
公開日・更新日
公開日
2021-04-28
更新日
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