医療安全支援センターと医療機関内患者相談窓口の地域における連携と人材育成のための研究

文献情報

文献番号
201922006A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全支援センターと医療機関内患者相談窓口の地域における連携と人材育成のための研究
課題番号
H30-医療-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
嶋森 好子(学校法人 岩手医科大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 一人(中京大学 法務研究科 )
  • 児玉 安司(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科)
  • 小松 恵(学校法人 岩手医科大学 看護学部 )
  • 水木麻衣子(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,677,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療安全支援センター相談員と医療機関の医療対話推進者等の相談員は、いずれも住民の安全・安心を確保するために設置されている。しかし、その活動は、先駆的な取り組みを除いて連携した活動は行われていない。また、その育成のための研修も独自のプログラムで行われており、必ずしも連携した活動を行うために適した研修とはなっていない。本研究は、地域住民が医療に対する不信や不満を解消して、安心して医療が受けられるように、「医療安全支援センターと医療機関内患者相談窓口の地における連携と人材育成のための研究」の2年目の研究である。本研究では、1年目の研究を踏まえ、地域の支援センターと医療機関の連携を推進するための具体的な活動の方向性と医療対話推進者の望む研修について明確にした。
研究方法
1.嶋森と分担研究者の小松が、岩手医科大学看護学部の倫理委員会の承認(NH2019.6)を得て、平成30年度から共催している、支援センター相談員の実践研修と医療機関の医療安全管理者養成研修(養成研修とする)に参加した研修生を対象に、研修内容について質問紙調査を行い、満足度と理解度及び地域で連携を推進する上での具体的な課題について検討した。2.児玉と山内・遠田が、「2019年度支援センター全国協議会」に参加した支援センターの職員と医療機関の医療対話推進者や医療安全管理者等の相談員の内、研究協力を承諾した参加者のアンケートを集計・分析し、研修に対するニーズや提供すべき情報について考察した。3.稲葉が、東京医療保健大学の坂本・本谷等の協力を得て、東京医療保健大学の研究倫理委員会の承認を得て「医療対話推進者の業務実態と研修ニーズ」について質問紙調査を実施した。また、中京大学で研究倫理委員会の承認を得て、「医療対話推進者の活動の実際と職場・患者への影響」についてインタビュー調査を行った。4.水木が、1年目に聞き取り調査を行った、先駆的に地域の医療機関と連携を図っている、2カ所の支援センターの相談員と担当者に「支援センターが必要としている支援」について追加的にインタビューを行った。
結果と考察
1.支援センターの実践研修と医療安全管理者養成研修参加者の研修項目として学ぶべき項目について、1日目にまとめて共催する形で研修を実施した。6つの研修項目の内、5つの項目については、8割以上が満足又は概ね満足と答えており、理解度も85%以上であり、支援センターの実践者と医療安全管理者に共通する項目として、共催研修としたことは、お互いが業務を理解するうえで効果的であったといえる。2.研修内容の一項目に満足度の低いものがあったが、2種類の研修者に合わせた研修内容として検討が必要と考えられる。3.支援センター参加者の約69%が医療機関と連携を取っているのに対して、医療機関の安全管理者等は、約2%しか支援センターと連絡を取っておらず、支援センターの存在を知らないものが約58%もあった。支援センターと地域の医療機関の相談員との連携推進のためには、医療機関側の情報受け入れ窓口の明確化と体制の整備が必要と考えられる。4.支援センターの職員は、相談業務に役立つ知識や具体的な情報を求めている。また、支援センターと医療機関の職員は、互いの活動についての知識が不足していると考えられ、今後の連携のためには、さらなる情報共有の機会を設けることが望ましいと考えられる。5.医療対話推進者の配置・介入によって、患者や家族の満足度向上のみならず、職員の負担軽減や組織の文化醸成、システム作りなどの影響を及ぼしていた。中でも対話に対する医師の関心が高まり、職員が患者と対話する経験をすることによって、病院スタッフの患者や家族への対応の仕方が変化するという成果が得られている。さらに、職員の対応の質向上により特別な介入を必要とする状況が発生する頻度が低下することが期待される。
結論
1支援センター相談員の実践研修と養成研修の1日目の共催は効果的であった。2.支援センターと医療機関の相談員が地域での連携を推進するためには、更なる情報共有の機会を設けることが望ましい。3.支援センターは、地域の医療機関との連携を重視しているが、医療機関の連携のための窓口が不明で、連絡が取りにくい状況がある。地域での連携を推進するうえで、医療機関が支援センターからの情報を受ける窓口を明確にして支援センターの情報を生かす視点を持つことが望ましい。4.医療対話推進者の配置・介入は、患者や家族の満足度向上のみならず、職員の負担軽減や組織の文化醸成、システム作りなどの影響を及ぼし、対話に対する医師の関心が高まり、病院スタッフの患者や家族への対応の仕方が変化するという状況も見られた。役割を担ってからの研修としては「PDCA サイクル」や「文化の醸成」に関する研修を希望していた。

公開日・更新日

公開日
2021-02-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-02-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201922006B
報告書区分
総合
研究課題名
医療安全支援センターと医療機関内患者相談窓口の地域における連携と人材育成のための研究
課題番号
H30-医療-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
嶋森 好子(学校法人 岩手医科大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 一人(中京大学 法務研究科 )
  • 児玉 安司(東京大学 大学院 医学系研究科)
  • 小松 恵(学校法人 岩手医科大学 看護学部)
  • 水木 麻衣子(東京大学 大学院医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
都道府県等が設置している医療安全支援センター(以下支援センター)は、住民の医療に関する苦情・心配や相談に対応し、医療機関、患者・住民に対して、医療安全に関する助言及び情報提供等を行っている。また、医療機関の患者相談窓口では医療安全対話推進者や医療安全管理者等が、患者や家族等の相談に対応している。支援センター相談員と医療機関の医療対話推進者等の相談員は、いずれも住民の安全・安心を確保するために設置されているが、その活動は、先駆的な取り組みを除いては連携した活動は行われていない。また、その人材育成のための研修も独自のプログラムで行われており、必ずしも連携した活動を行うために適した研修とはなっていない。本研究は、地域住民が医療に対する不信や不満を解消して、安心して医療が受けられるように、地域の支援センターと医療機関内患者相談窓口における連携を推進するための具体的な方法と人材育成のために必要な研修内容について検討することとを目的とした。
研究方法
1年目は、医療安全支援センターと医療機関の患者相談窓口の連携の実態を確認するために、全国支援センター相談員への質問紙調査と連携に先駆的に取り組んでいる支援センター5か所の相談員等へのインタビュー調査を行った。その結果、支援センターの相談員が医療機関へ情報提供する際、窓口が不明確で連絡することに強い負担感を感じていた。分担研究者の稲葉は、医療対話推進者等として活動している者とのディスカッションを通して、医療対話推進者等には、医療機関の医師の業務を低減させ、より高い患者満足度を得るための潜在力があることが、また、医療安全業務と連携のための条件等も検討すべき事柄があることが示唆された。2年目は、1年目の成果を踏まえ、質・安全学会主催の医療安全管理者養成研修の1日目の研修を支援センター実践研修と共催して行った研修の参加者を対象に、研修科目に対する満足度と理解度及び両者の連携の課題について、質問紙調査を行った。稲葉班では、東京医療保健大学の協力を得て、「医療対話推進者の業務の実態と研修ニーズ」に関する質問紙調査と「医療対話推進者の活動の実態と職場・患者への影響」についてインタビュー調査を行った。
結果と考察
医療安全支援センターの実践研修を医療安全管理者養成研修の1日目と共催して行った研修は、満足度も理解度も80%を超えており、共催研修は実践研修として有効であった。然し、医療機関から参加した療安全管理者養成研修の参加者178人中2人が支援センターと連絡した経験があると答えたのみで、支援センターを知らないと答えたものが6割近くあった。両者の連携推進の課題は、医療機関内患者相談窓口の相談員等が医療安全支援センターに対する理解を深めることと認識された。稲葉が行った、「医療機関内患者相談窓口員の活動実態と研修ニーズに関する研究」では、医療安全対話推進者等の設置は、患者サービスや医療の一部、医療安全の目的のためと答えていた。業務に関しては、支援体制構築や一次対応はできているが、職員への教育・研修、安全文化の醸成は、できていないと答えた者が多かった。指針の業務以外に、患者の受診サポートや職員からの相談対応等を行っており、職員には、その都度アドバイスを行っていた。これから必要な研修は「研修の企画・運営」「PDCA」「安全文化の醸成」に関することだとの意見があった。医療対話推進活動の成果は、患者・家族の満足度向上、職員の負担軽減や組織文化の醸成、システム創りに影響しており、職員の対応能力の向上が、特別な介入を必要とする状況の減少をもたらすことが期待されると答えている。
結論
医療安全支援センターと医療機関の患者相談窓口等の連携推進のためには、両者がお互いの業務を理解し連携するための仕組みづくりが重要であることがにんしきされる。医療機関は、支援センターからの情報を受ける窓口を明確にし、提供された情報を医療安全に活かす仕組みづくりが必要と考えられる。また、支援センターは、地域の医療機関の医療対話推進者等や医療安全管理者等と事例検討を行うなど、お互いに情報の共有を図り知り合う機会を設けることの重要性が示唆された。また、医療対話推進者等の活動は組織の安全文化の醸成に有効であることが医療対話っ推進者自身が語っている。今後の医療対話推進者の業務遂行に必要な研修として、「研修の企画・運営」「PDCA」「安全文化の醸成」に関する内容が必要であるとの示唆を得た。

公開日・更新日

公開日
2021-02-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-02-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201922006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国医療安全支援センターの相談員を対象とした調査はこれまで行われておらず、その実態が明らかにできた。また、医療安全支援センターと医療機関の患者相談窓口等の相談員は、それぞれが地域住民や患者の安全・安心を確保するために設置されているにも関わらず、連携した活動が行われておらず、患者・住民から得られた情報が十分活用されていない実態が明らかになった。同じ目的をもって設置されているそれぞれの機関が、自らの組織内にとどまらず、お互いに連携して活動する事のじゅうようせいが再認識された。
臨床的観点からの成果
医療安全支援センター相談員への質問紙調査で、医療機関への情報提供に負担感を強く感じていた。地域住民の安全・安心を確保する共通の目的がある医療安全支援センターの相談員と医療機関の相談員が地域で連携を推進する機会を作るために、医療安全支援センター相談員と医療安全管理者の研修内容を確認して共通する内容の研修を1日受けられるようにした。また、医療安全支援センター全国協議会に医療機関の相談員等にも参加を呼び掛けた。医療機関からの参加者も多く、お互いの情報交換が行われた。連携推進の一助になるものと思われる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
医療の質・安全学会のネットワーク委員会主催の「2019年度の世界患者安全デー制定記念シンポジウム」で、「全国医療安全支援センター相談員への質問紙調査結果」を報告した。医療機関から参加した医療安全管理者が医療安全支援センターの活動について理解して連携の必要性を感じたとの反応があった。また、医療安全支援センター相談員もシンポジウムに参加して医療安全支援センターの実態を理解してもらえたとの感想があった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
第14回医療の質・安全学会学術集会にて「医療安全支援センターと医療機関内相談窓口における連携と人材育成に関する研究」についてポスターによる発表を行った。
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
支援センターと医療機関の相談員が連携する機会を作るために、支援センター実践研修を医療の質・安全学会医療安全管理者養成研修の1日目に共催で実施、医療安全支援センター全国協議会に医療機関からの参加も促した
その他成果(普及・啓発活動)
5件
医療の質・安全学会会員向けに医療安全支援センターの実践研修や全国協議会開催案内をメールで送り参加を働きかけた。医療機関からの参加者が増加し支援センターへの理解と関心が深まった。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201922006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,700,000円
(2)補助金確定額
2,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 268,180円
人件費・謝金 152,189円
旅費 960,840円
その他 512,982円
間接経費 623,000円
合計 2,517,191円

備考

備考
1.地域住民の安全・安心を確保する機能を持つ医療安全支援センターと医療機関の医療安全管理者等の相談員が互いに業務を理解することを目指して、医療安全支援センターの実践研修を、医療の質・安全学会主催の医療安全管理者養成研修の1日目と共催して実施することとした。その打ち合わせや会議の回数が増加し、全国の医療安全にかかわる委員に参加してもらって検討したため、旅費と会場費などのその他経費が増加した。2.物品費については、大学の個人研究費で購入したものを使ったので、予算より支出が少なくて済んだ。3.データ整理のためにアルバイトを雇用する予定であったが研究協力者が分担してくれたので、不要となった。4.3月に成果報告会を実施するため会場を予約していたが、コロナ感染症のために規模を縮小したので、経費の一部が残高となった。経費の変動はあったが研究に支障はなく研究目的を達成できた。

公開日・更新日

公開日
2021-02-22
更新日
-