ブロック拠点病院のない自治体における中核拠点病院の機能評価と体制整備のための研究

文献情報

文献番号
201920011A
報告書区分
総括
研究課題名
ブロック拠点病院のない自治体における中核拠点病院の機能評価と体制整備のための研究
課題番号
H30-エイズ-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
高田 清式(国立大学法人 愛媛大学 医学部附属病院 総合臨床研修センター)
研究分担者(所属機関)
  • 武内 世生(国立大学法人 高知大学 医学部附属病院 総合診療部)
  • 末盛 浩一郎(国立大学法人 愛媛大学 大学院医学系研究科)
  • 井門 敬子(国立大学法人 愛媛大学 医学部附属病院 薬剤部)
  • 若松 綾(国立大学法人 愛媛大学 医学部附属病院 総合診療サポートセンター)
  • 中村 美保(国立大学法人 高知大学 医学部附属病院 総合診療部)
  • 小野 恵子(国立大学法人 愛媛大学 医学部附属病院 総合診療サポートセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
四国地区は近年HIV・エイズ患者の増加が著しく、かつ高齢化率が約29%であり、長期療養が必要な例が多い。この長期療養患者に関し、施設への紹介・受け入れが難渋している実情がある。この背景のもと、県内の病院・施設との連携整備、さらには県・市の保健行政との連携も踏まえ、診療体制の充実を図りたい。高知県とも連携し、さらにブロック拠点病院が存在しない四国地区全体の診療体制の充実に努めたい。
研究方法
【研究1】教育講演、意見交換、研修教材の作製
愛媛県および高知県にてネットワーク会議や各病院にて講演会を開催し、情報収集のため意見交換を行う。研修教材も作成する。
【研究2】高齢者施設におけるHIV感染症等に関する研修会と実態調査
高齢者施設から現場の福祉・介護担当者に参加いただき研修会を開催する。知識啓蒙とともにHIV感染者を支援する自覚を促す目的で介護・受け入れについて調査する。
【研究3】福祉療養施設への出張研修、実態調査
 介護・受け入れを推進するため療養型病院や福祉施設へ直接出張講義を年間数施設単位で行う。医師・看護師・薬剤師・MSWのHIV診療チームとして出張講義をし、HIV感染者の福祉・介護に関し調査する。結果を介護用小冊子(研究4)に反映させる。
【研究4】実践的ポケット版小冊子
地方でHIV/エイズ患者を積極的に介護施設で円滑に介護をしてもらう試みとして、介護時の実用的なHIVに関するポケット小冊子を作製し四国のHIV診療施設に配布する。
【研究5】在宅介護職の実施研修
HIV患者の介護に直接あたってもらうため、在宅介護職の各々の看護師にHIV患者の実施研修を行う。
結果と考察
【研究1】
 愛媛県および高知県の各拠点病院のHIVに関する啓蒙、意見交換を図るために、県の行政の協力を得てHIV診療ネットワーク会議(県全域の拠点病院が参加し討論)を令和2年2月18日に開催した(高知県のスタッフも参加)。四国地区エイズ診療中核拠点病院HIV担当看護師会を令和元年10月19日に開催し、4県9名の看護師が参加し、各施設の報告と協議をした(行政との連携、専任看護師の必要性、地域施設との連携、各地区の研修会の現況等)。また、徳島、香川県も参加し四国全体の各種医療スタッフ合同会議を行い、具体的な問題を整理し知見を共有した(令和元年11月28日)。研修教材も完成した。
【研究2】
高齢者施設の介護・福祉担当者が参加し、HIV感染症等に関する研修会を令和2年1月29日に開催した(参加者53名)。今回は国内でも認識されつつある「U=U」(治療にてウイルス量が検出感度以下なら、性行為などにても感染しない)の概念も紹介し、最先端の知識の啓蒙に努めた。研修会後アンケート調査をし、①HIV感染の印象に関しては、計87%が恐れ不要と感じ、比較的HIVに関し前向きに捉えてくれていると考えた。さらに②各自の療養型病院や介護施設への入所・受け入れに関しては、意識の差はあるが、85%が施設として受け入れ可能と多くの前向きな意見を得た。
【研究3】
 地域の療養型病院および福祉施設へ出張講義を計7施設で行った(各参加者12~97名、計259名)。当院から医師・看護師・薬剤師・MSWのHIV診療チームとして出向した。その際アンケート調査をし、①HIV感染の印象に関しては(回答数249名)、計89%が恐れ不要と感じ、比較的HIVに関し前向きに捉えてくれていると考えた。さらに、②各自の療養型病院や介護施設への入所・受け入れに関しては(回答数237名)、意識の差はあるが、94%が施設として受け入れ可能と多くの前向きな意見を得た。
【研究4】
 愛媛および四国での実用的な(最新の愛媛や四国の現況や針刺し事故時の感染予防内服薬を配備している具体的な病院名等を印刷)HIVに関するポケット冊子(18x10cm大程度)を作製し県内および四国さらには中国地区の主なHIV診療施設に配布した。ハンディで判りやすいと概ね好評であった。
【研究5】
 在宅介護職の看護師に各々3日間当院のHIV患者の実施研修(外来、病棟)と講義・討議を計3回実施した。HIV感染症に関する啓蒙とHIV患者の在宅医療への推進にも繋がり、極めて意義深い研究活動と考えた。
結論
ブロック拠点病院がない地域において、HIV診療体制整備のために高齢介護施設の介護・福祉担当者への講演会、積極的な出張講義、ポケット版小冊子の配布等を行い、具体的に問題を整理し知識・経験を共有できた。高齢化社会で介護・療養が必要なHIV感染・エイズの増加に対応するため、診療体制の整備は、特にブロック拠点病院が身近に存在しない地方においては拠点病院間のみならず介護・福祉施設との福祉連携の充実が不可欠であり、研究を継続し地方のモデルという点でもさらに向上に努めたい。

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
2022-01-17

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201920011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,700,000円
(2)補助金確定額
11,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,603,857円
人件費・謝金 826,995円
旅費 2,058,642円
その他 4,510,506円
間接経費 2,700,000円
合計 11,700,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
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