ヘリコバクター・ピロリの薬剤耐性モニタリングと除菌戦略の立案

文献情報

文献番号
201919019A
報告書区分
総括
研究課題名
ヘリコバクター・ピロリの薬剤耐性モニタリングと除菌戦略の立案
課題番号
19HA1007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 敏郎(北海道大学 北海道大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 柴山恵吾(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 大崎敬子(杏林大学 医学部)
  • 横田憲治(岡山大学 大学院保健学研究科)
  • 小林寅吉(東邦大学 看護学部)
  • 鈴木秀和(東海大学 医学部消化器内科)
  • 村上和成(大分大学 医学部消化器内科)
  • 加藤元嗣(国立病院機構函館病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ヘリコバクター・ピロリは胃がん、胃MALTリンパ腫、胃潰瘍・十二指腸潰瘍等の多くの上部消化器疾患の原因菌であり、ヘリコバクター・ピロリ除菌はこれらの疾患の予防に画期的な効果を示すことが大規模研究から明らかにされてきた。わが国においては平成25年から、これら疾患の根幹をなすヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌治療が世界で唯一、保険診療下で実施可能となっており、既に胃潰瘍・十二指腸潰瘍患者は最大患者数(1996年)の4分の1まで減少、また、永年にわたり全く変動のなかった年間5万人の胃がん死亡数も徐々に低下し、疾患原因菌の除去が、がん死亡数低減にまで効果を示しうる、世界に発信できるわが国からの顕著な例である。他方、ヘリコバクター・ピロリ除菌対象者拡大に伴い、保険診療下で実施可能な治療薬剤耐性菌の増加も明らかとなりつつある。この現象は現在の除菌法では上記疾患の将来にわたる予防効果の減弱に、早晩、連動する。
 本研究では 1)薬剤耐性に資する耐性評価のための標準ヘリコバクター・ピロリ菌株の各臨床検査会社への提供、2)日本ヘリコバクター学会と協力して、全国規模の医療施設、臨床検査会社における耐性菌サーベイランスの実施とモニタリングの確立、3)これら調査に基づき、全国を網羅した継続的な薬剤耐性モニタリングシステムの確立、将来にわたるヘリコバクター・ピロリ除菌治療効果の持続に貢献できる全国情報を得て新たなヘリコバクター・ピロリ除菌治療戦略の立案をする。
研究方法
1) 研究デザイン:多施設共同前向き試験
2) 研究概略:除菌治療前菌株を1000 株を収集、集中測定機関においてCLSI 標準法に準じた寒天平板希釈法にてMIC(最小発育阻止濃度)を測定する。MIC 測定薬剤は、クラリスロマイシン(CAM)、メトロニダゾール(MNZ)、アモキシシリン(AMPC)、シタフロキサシンの4剤とする。
3) 研究対象者:保険診療下で実施する上部消化管内視鏡検査および胃粘膜生検が実施された患者
4) エンドポイント:主要評価項目はヘリコバクター・ピロリ菌の4 薬剤(CAM, MNZ, AMPC, STFX)に対する薬剤感受性測定
5) 薬剤耐性評価のための標準ヘリコバクター・ピロリ菌株の提供を受けた臨床検査会社の臨床検査として評価された薬剤感受性試験成績も副次的資料として収集する。
結果と考察
1)日本ヘリコバクター学会主導耐性菌サーベイランス事業では既に285菌株の収集が終了し、CLSI 標準法に準じた寒天平板希釈法によるMIC(最小発育阻止濃度)を測定中にある。本補助研究事業期間に実施され、結果の得られた16菌株の検討ではCAM耐性菌は31.2%、MNZ耐性菌は0%、AMPC耐性菌は0%、STFX耐性菌は12.5%であり、既報とほぼ類似した成績である。
2)感受性試験に資する標準菌株を6菌株、選定し、感受性試験標準化システム構築に協力する企業(4社)を対象とした企業説明会を実施、全社から了解が得られている。並行して、各企業に提供予定の4菌株(CAM高度耐性菌、MNZ高度耐性菌、AMPC耐性菌および3薬剤耐性菌)の全ゲノム解析が終了した。  
結論
1) 目標菌株数の1000菌株の収集に至っていないので、菌株収集期間を令和2年12月まで延長することが日本ヘリコバクター学会理事会で決定されており、次年度中に目標菌株の収集をめざし、感受性試験および解析をする。 
2)次年度には協力企業へ提供へした標準菌株に基づいた感受性試験成績の精度管理評価ができる予定であり、その結果も上記 1)と並行して解析できる。
3)厚生労働省主導で実施されている院内感染サーベイランス(JANIS)に準じた耐性菌サーベイランスシステムの構築が適していると判断されるので、協力企業と共に、そのモニタリングシステム構築を目指している。

公開日・更新日

公開日
2021-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201919019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,950,000円
(2)補助金確定額
4,945,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,137,021円
人件費・謝金 0円
旅費 216,360円
その他 692,597円
間接経費 900,000円
合計 4,945,978円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
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