新興・再興感染症のリスク評価と危機管理機能の実装のための研究

文献情報

文献番号
201919015A
報告書区分
総括
研究課題名
新興・再興感染症のリスク評価と危機管理機能の実装のための研究
課題番号
19HA1003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 智也(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 中里 栄介(佐賀県唐津保健福祉事務所(唐津保健所))
  • 中瀬 克己(岡山大学医療教育統合開発センター)
  • 田村 大輔(自治医科大学小児科学)
  • 中島 一敏(大東文化大学 スポーツ・健康科学部健康科学科)
  • 松井 珠乃(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 大曲 貴夫(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)
  • 市川 学(芝浦工業大学 システム理工学部)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 梁 明秀(横浜市立大学 医学部)
  • 石井 健(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所)
  • 森田 公一(長崎大学熱帯医学研究所)
  • 西浦 博(国立大学法人北海道大学 大学院医学研究科 社会医学講座衛生学分野)
  • 林 基哉(北海道大学大学院)
  • 金 勲(キム フン)(国立保健医療科学院 生活環境研究部 建築・施設管理研究領域)
  • 森下 竜一(大阪大学大学院 医学系研究科 臨床遺伝子治療学講座)
  • 志馬 伸朗(広島大学大学院 医系科学研究科 救急集中治療医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
773,700,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 西浦 博 北海道大学大学院(平成28年4月1日~令和2年7月31日)→京都大学大学院(令和2年8月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、脆弱性評価と危機管理機能の「実装」を促進するための研究(実装研究:Implementation Research)を実施する。諸外国の新興・再興感染症の発生動向や、その対策に関する情報を収集し、比較しつつ、適宜求められる危機管理機能に関する見直しを行いつつ、我が国に新興・再興感染症が侵入した際の国や地方自治体等における対応体制や関係機関のリスク評価(脆弱性評価)を進め、感染症危機管理機能の実装に向けた検討を行い、国内対策の見直し等に資する提言を取りまとめていくことを目的とした。また、COVID-19発生を受けて、診断、治療、ワクチンの開発、病態や感染メカニズムの解明、公衆衛生対策の知見の共有とフィードバックを行い、対策に貢献することを目的とする。
研究方法
8人の研究分担者が研究代表者と共に協力・分担して研究を遂行した。大きく、1)感染症危機管理の脆弱性評価ガイダンスの実装研究、2)実働・机上の訓練・演習を通じた脆弱性評価手法の研究、3)疫学調査機能強化方策の実装研究、4)医療体制のキャパシティ評価の研究の4課題に分かれて、実施した。
COVID-19発生後、9人の研究分担者を追加し、迅速分子診断法や抗原抗体検査法等診断法の開発研究、抗ウイルス薬の治験やレジストリの整備、DNAワクチンの開発、環境調査による感染メカニズムの解明、数理疫学的手法による感染動態の推定、オンラインセミナーによる公衆衛生対策の知見の共有とフィードバックやインタビューによる保健師の活動調査を実施した。
結果と考察
脆弱性評価ガイダンスを活用した地域の感染症危機管理能力の評価と実装については、地方自治体間の「ワークショップ型相互評価モデル」を佐賀・長崎で実証した。今後、運営要領の作成、実施自治体の拡大へとつなげていく。実働・机上の訓練・演習を通じた脆弱性評価手法の検討については、3地方自治体で企画・評価に参画し、訓練実施ガイドを作成/評価様式を提供した。今後、参画する自治体を拡大、実施ガイドの体系化をすすめていく。疫学調査機能の強化方策の実装研究については、FETP修了生のキャリアラダーモデル案を作成した。今後、自治体での実態調査、意見聴取を進めていく。また、耐性菌アウトブレイク事例のFETP活動事後評価を実施した。今後、様々な疾病タイプ、要請内容で継続的に評価をすすめていく予定である。
COVID-19の診断法については、蛍光LAMP法、LAMP法の開発・実装を行った。抗原抗体法については、モノクローナル抗体等の作成からキットの作成を行った。治療法については、レムデシビル等、Hyperimmune IVIGの意思主導治験、シクレソニドの特定臨床研究を実施した。また、入院患者のレジストリの整備・登録、重症患者データベースの整備・登録、重症患者に対する診療指針等の作成、ECMOのキャパシティ調査、搬送システム・病院間搬送マニュアルの作成を行った。クルーズ船アウトブレイク事例のデータから、感染リスク・不顕性感染リスク・重症化リスク等の定量化とリスク要因の特定を行った。クラスター環境の調査により、クラスター発生場所の換気状況を明らかにし、特に病院の換気に関する注意喚起を行うため健康危険情報を報告した。オンラインセミナーでは延べ数千人以上に15講義を提供し、新興感染症に対する専門知識や経験の共有を迅速に関係者に対して行う仕組みを実証した。保健所保健師への調査では、自治体内の高度専門家不足、人材不足、資源不足等組織的な課題のほか、専門職の個人スキルの課題等を明らかにし、今後の保健師人材育成に関する示唆が得られた。
結論
新興・再興感染症に備えた感染症危機管理の基盤形成のため、脆弱性評価ガイダンスを利用したピアレビューメカニズムの実証、演習・訓練の企画・開発、実地疫学調査体制の向上のためのプログラム開発やレビューメカニズム、指定医療機関の機能向上のための資料作成やキャパシティ評価等、様々な試みを行い、その有用性を実証することができた。期間中に、新興感染症COVID-19の発生を経験することになったが、これらの研究基盤をベースとして研究班を拡張し、迅速に、その診断、治療、ワクチンの開発、病態や感染メカニズムの解明、公衆衛生対策の知見の共有とフィードバックを行うことができた。

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201919015Z