入院中の精神障害者の円滑な早期の地域移行及び地域定着に資する研究:コホート研究

文献情報

文献番号
201918018A
報告書区分
総括
研究課題名
入院中の精神障害者の円滑な早期の地域移行及び地域定着に資する研究:コホート研究
課題番号
H30-精神-一般-004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
山口 創生(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
  • 菊池 安希子(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
  • 稲垣 中(青山学院大学)
  • 渡邉 博幸(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
  • 来住 由樹(岡山県精神医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、多施設での前向き縦断研究を通して、精神科医療機関における救急病棟や急性期病棟に入院し、かつ1年未満で退院する入院患者を対象として、入院時から追跡を開始し、退院後12ヵ月間にわたって追跡調査を実施し、退院後12ヵ月間の再入院(アウトカム)と個人の主観的指標(特に生活の質)との関連や、主観的指標の推移と再入院の関連を探ることを第1の目的とする。また、その他の曝露データ(個人の特性・薬剤治療の内容・入院中の薬剤以外の支援内容、退院後の支援状況、地域・環境の特性)を収集し、アウトカムに関連しうる要因を包括的に検証することを第2の目的とする。
研究方法
本研究の研究デザインは、前向きのコホートあるいは縦断研究である。各研究実施機関において対象患者を選定し、基準に合致する患者には、研究の説明および同意取得を実施する。同意取得を得た参加者からは、入院時、退院時、退院後6ヵ月時点、退院後12ヵ月時点に通常診療で得られる客観的データや自記式尺度に関するデータ、社会資源に関するデータなどを得る。本研究は、2018年10月1日から2019年9月30日までの1年間に、参加者のリクルート(組み入れ)および入院時調査が実施された。現在、退院時調査や退院後6ヵ月時点調査、退院後12ヵ月時点調査を実施中である。
結果と考察
本年度において、全ての機関が患者組み入れを完了し、最終的に635名の患者が本研究に参加した。参加者のうち女性は約55%、平均年齢は42歳、統合失調症の診断は約60%、医療保護入院(入院形態)が約50%で、また過去1年に精神科入院の経験があった者が約40%であった。また、主観的な経験およびアウトカムの自記式尺度得点については、入院時点データの平均値が極端に得点の高いあるいは低いものはなかった。客観的なアウトカムの分析の結果、入院時のPersonal and Social Performance Scale(PSP = 機能尺度)の総得点の平均値は47.1点であった。統合失調症圏患者は気分障害患者よりPSP総得点が有意に低かった。入院形態別に見ると,PSP総得点に関しては任意入院群が最も高く,措置入院群が最も低かった。他害行為によって入院となった患者はそれ以外より有意にPSP総得点が低く,セルフネグレクト行為により入院となった患者はそれ以外よりPSP総得点,が有意に低かった。問題行動の評価について、患者の問題行動の既往として、迷惑行為(56.0%)が最も多く、治療遵守の問題(46.4%)、身体的暴力(36.1%)、セルフネグレクト(30.7%)、自傷・自殺企図(共に24.2%)、物質乱用(22.4%)、多飲水・水中毒(7.8%)の順であった。さらに、薬剤の評価についての分析結果、クロザピンを使用していた者は3.1%(n = 19)であり、持続性抗精神病薬注射剤(Long Acting Injection:LAI)を使用していた者は11.3%(n = 69)であり、これらの薬剤の処方率が低いことを明らかにした。聞き取り調査による好事例分析では、入院初期から退院後の地域生活を見据えた包括的なケアが重要であることを報告された。上記の入院時点データや好事例分析の結果を活かすことができるように、追跡調査で参加者の脱役を防ぐことが今後の課題となる。
結論
これまでのところ、研究はほぼ計画通り進行しており、各機関で参加者の追跡調査が実施されている。来年度は、引き続きデータの収集および分析を行う予定である。なお、本研究の結果は、2020年3月時点におけるデータの分析結果である。今後、調査を継続する過程で、同意撤回などでデータ利用が不可能となった参加者がでた場合には、結果そして結果に基づく考察も変更となる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2020-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-11-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201918018Z