文献情報
文献番号
201917008A
報告書区分
総括
研究課題名
独居認知症高齢者等が安全・安心な暮らしを送れる環境づくりのための研究
課題番号
19GB1001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
粟田 主一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
研究分担者(所属機関)
- 堀田聰子(慶應義塾大学大学院健康マジメント研究科)
- 石崎達郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
- 稲垣宏樹(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
- 岡村毅(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
- 角田光隆(神奈川大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
30,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、独居認知症高齢者等(認知症者のみで構成される単独世帯や夫婦のみ世帯高齢者)が安全・安心な暮らしを送れる環境づくりのための実現可能な社会モデルを提示し,自治体向け・住民向けガイドラインを作成することにある。
研究方法
本研究では,1.文献調査,2.既存統計資料等を活用した実態調査,3.疫学調査,4.事例調査,5.地域生活支援等の取組みに関する調査,6.アクション・リサーチによって,独居認知症高齢者等の生活実態,課題解決に必要とされる居住支援・生活支援・意思決定支援等の取組み,尊厳ある地域生活を継続するための社会モデルを示し,自治体向け・住民向けガイドラインを作成する。初年度は上記の各領域について研究プロジェクトを立ち上げ調査研究を実施した。
結果と考察
初年度の研究によって以下のことが明らかになった。1)独居高齢者の終末期及び死に関する調査研究は十分に行われていない。2)認知症のある人のQOLに影響を及ぼす要因は、①環境要因、②心理要因、③身体要因、④社会要因に分類される。3)独居でケアが必要な高齢者の生活実態は多様であり、それを踏まえた支援の拡充が必要である。4)同居者のいる認知症高齢者に比して、独居認知症高齢者は、相対的にIADLが高い可能性があるが、重度化するとともに閉じこもり傾向が高まる。5)独居高齢者は、社会的孤立傾向にある者が多く、住居や経済状況にリスクを抱えている者が多い。6)異なる特徴のある地域で暮らす多様な背景を持つ認知症高齢者の暮らしとそれをとりまく環境には、独居認知症高齢者等が安全・安心な暮らしを送れる環境づくりに向けた豊かな示唆が含まれている。7)マンション管理組合と地域包括支援センターとの連携による居場所づくりや生活支援の提供が、独居認知症高齢者の生活課題の解決につながる可能性がある。8)離島における独居認知症高齢者の生活課題の解決にあたっては、「早期対応」、「在宅生活の維持」、「看取り」に至る支援体制作りの構築がカギとなる。9)「NPO法人ふるさとの会」は、「安定した住まいを確保,維持するための居住支援」と「孤立することなく安心した生活を継続するための生活支援」を通して、生活困窮状態にある独居の認知症高齢者の地域生活を支援している。10)「暮らしの保健室」は、困りごとを気軽に相談できる地域の拠点であり、スタッフは、認知症になる以前から、そこに暮らす人々と信頼関係を形成し、人々の変化に気づき、困りごとをともに考え、不安を支えながら必要な社会支援を調整している。11) 大都市に暮らす認知機能低下高齢者の3年間にわたる追跡研究では、独居であることと地域生活継続との間に有意な関係は認められなかった。地域生活の継続を阻む要因については、さらなる詳細な調査分析が必要である。
結論
今年度の研究からは、独居認知症高齢者等が安全・安心な暮らしを送れる環境づくりの基本的な考え方として、社会的孤立を解消する方向でのアプローチが重要であり、そのためには、①サービスへのアクセスを支援できる信頼できる身近な関係があること、②社会支援の統合的な調整を行う仕組みがあること、③社会支援(特に生活支援と居住支援)を包括的に利用し続けることができる環境があること、が不可欠の要素になるであろうことが推察された。
公開日・更新日
公開日
2020-08-04
更新日
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