文献情報
文献番号
201916008A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護認定データ等を活用した高齢者の状態等の経時的変化の類型化のための研究
課題番号
H30-長寿-一般-008
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
下方 浩史(名古屋学芸大学 大学院栄養科学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 大塚 礼(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター NILS-LSA活用研究室)
- 森本 茂人(金沢医科大学 高齢医学)
- 楽木 宏実(国立大学法人大阪大学 老年・総合内科学)
- 島田 裕之(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター)
- 安藤 富士子(愛知淑徳大学 健康医療科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
加齢による生活機能や認知機能の低下等を明らかにし、その類型化を行うために、無作為抽出された地域住民を対象とした大規模な疫学調査の20年間の蓄積データと今後の追跡調査データ、介護保険データを用いて解析を行う基幹コホート研究と、その結果との比較検証やメタ解析を行う3つの検証コホート研究を実施した。さらに地域介護保険データ研究により、必要な医療・介護・福祉を特定し、高齢社会における疾患等の予防・治療、社会参加支援等に有用な知見を得ることを目的とした。
研究方法
(1) 基幹コホート研究
1997年から追跡されている「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」では、無作為抽出された地域住民を対象に、医学・心理学・運動生理学・身体組成・栄養学・遺伝子解析などの詳細な調査を毎日7人ずつ実施し、2年ごとに追跡観察をしてきた。これらのデータを用いて、フレイル、認知機能低下、要介護認定となる要因を解析した。
(2) 地域介護保険データ研究
人口88,000人の愛知県大府市で、平成12年4月以降に要介護認定データの解析を行った。65歳以上で2回以上の要介護認定を受けている高齢者7,250人の要介護認定区分の経時変化から要介護者を類型し、「高度障害維持群」、「軽度障害維持群」、「急速悪化群」、「緩やかな悪化群」の4群の比較を行った。
(3) 要介護の要因に関するメタ解析
長期にわたって追跡されている国内の4つのコホートのデータでの要介護認定となる要因の解析結果を用いて要介護認定リスクを明らかにするためのメタ解析を実施した。
(4) 検証コホート研究
高齢者機能健診コホート研究:地域在住高齢者データベースの中から4,746人を対象とし、身体機能および認知機能と新規要支援・要介護認定の発生との関連を検討した。
地域行政コホート研究:65歳以上の地域在住高齢者3,149人を対象に、72ヶ月間の認定なし死亡、初回要支援・要介護認定に対する初年度の健康診査非受診、定期通院の関与につき検討した。
SONIC研究:地域在住高齢者1,164人における将来の要介護認定に関連する要因として、特に握力、歩行速度というフレイル指標にも取り入れられている簡便な身体機能の関与に注目し、6年間追跡したCOX比例ハザードモデルを用いて検討した。
1997年から追跡されている「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」では、無作為抽出された地域住民を対象に、医学・心理学・運動生理学・身体組成・栄養学・遺伝子解析などの詳細な調査を毎日7人ずつ実施し、2年ごとに追跡観察をしてきた。これらのデータを用いて、フレイル、認知機能低下、要介護認定となる要因を解析した。
(2) 地域介護保険データ研究
人口88,000人の愛知県大府市で、平成12年4月以降に要介護認定データの解析を行った。65歳以上で2回以上の要介護認定を受けている高齢者7,250人の要介護認定区分の経時変化から要介護者を類型し、「高度障害維持群」、「軽度障害維持群」、「急速悪化群」、「緩やかな悪化群」の4群の比較を行った。
(3) 要介護の要因に関するメタ解析
長期にわたって追跡されている国内の4つのコホートのデータでの要介護認定となる要因の解析結果を用いて要介護認定リスクを明らかにするためのメタ解析を実施した。
(4) 検証コホート研究
高齢者機能健診コホート研究:地域在住高齢者データベースの中から4,746人を対象とし、身体機能および認知機能と新規要支援・要介護認定の発生との関連を検討した。
地域行政コホート研究:65歳以上の地域在住高齢者3,149人を対象に、72ヶ月間の認定なし死亡、初回要支援・要介護認定に対する初年度の健康診査非受診、定期通院の関与につき検討した。
SONIC研究:地域在住高齢者1,164人における将来の要介護認定に関連する要因として、特に握力、歩行速度というフレイル指標にも取り入れられている簡便な身体機能の関与に注目し、6年間追跡したCOX比例ハザードモデルを用いて検討した。
結果と考察
介護区分の進行は、「高度障害維持群」、「軽度障害維持群」、「急速悪化群」、「緩やかな悪化群」の4つの潜在クラスに類型化することができた。介護区分の進行は、基礎疾患の内容によって決まることが多いと思われる。脳卒中や心臓病、大腿骨頸部骨折などでは疾患の発症により急激に障害が進むが、こうした疾患発症のエピソードがなく徐々に衰弱し障害が進行していく場合も多い。また認知症は通常は進行がゆっくりであり、身体的な機能障害は比較的保たれていることが多い。しかし、高齢者では一人で複数の疾患や病態を持つことが多く、単純に疾患別の対応を決めることは難しい。実際、「緩やかな悪化群」には認知機能障害を有する人が多いが、「急速悪化群」でも、進行すれば認知機能障害を合併することが多く、もっとも認知機能障害が多かったのは「高度障害維持群」であった。
本研究により、要介護高齢者の障害の進行を4つの潜在クラスに分けることができたが、7千人以上の対象者を分析しても、進行の速さによる類型化が、要介護の内容や医療処置のニーズの類型化とは必ずしも一致しなかった。これは要介護の状況には個人差が大きく、単純な類型化によって、介護や支援の内容をパターン化することが難しいことを示している。個人の基礎疾患や環境、QOLなどを個別に考えていくことが介護、支援には必要であろう。
4つのコホート研究の結果によるメタ解析により、要介護認定のリスクとして有意だったのは、痩せ、血清アルブミンの低値、糖尿病、歩行速度1m/秒未満、握力の低値、低認知機能であった。低栄養や身体機能の低下が要介護認定の重要な要因であることが明らかとなった。本研究では、対象者の質が異なる4つのコホートの結果をメタ解析した。個々のコホートだけでなく、全体で有意な結果が得られた要介護認定のリスク要因は、より重要なリスクであると考えられる。
本研究により、要介護高齢者の障害の進行を4つの潜在クラスに分けることができたが、7千人以上の対象者を分析しても、進行の速さによる類型化が、要介護の内容や医療処置のニーズの類型化とは必ずしも一致しなかった。これは要介護の状況には個人差が大きく、単純な類型化によって、介護や支援の内容をパターン化することが難しいことを示している。個人の基礎疾患や環境、QOLなどを個別に考えていくことが介護、支援には必要であろう。
4つのコホート研究の結果によるメタ解析により、要介護認定のリスクとして有意だったのは、痩せ、血清アルブミンの低値、糖尿病、歩行速度1m/秒未満、握力の低値、低認知機能であった。低栄養や身体機能の低下が要介護認定の重要な要因であることが明らかとなった。本研究では、対象者の質が異なる4つのコホートの結果をメタ解析した。個々のコホートだけでなく、全体で有意な結果が得られた要介護認定のリスク要因は、より重要なリスクであると考えられる。
結論
介護区分の進行は4つの潜在クラスに類型化することができたが、医療処置や高次生活機能は群間で大きな違いはなかった。必要とする介護や医療処置の内容は、類型化による群別よりは障害の進行による影響の方が大きかった。潜在クラスは、進行の速さによって特徴付けられているが、各介護区分での障害内容、程度また医療処置の内容等に大きな差はなかった。要介護要因に関するメタ解析では、低栄養や身体機能の低下が要介護認定の重要な要因であることが明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2020-06-01
更新日
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