非血縁者間末梢血幹細胞移植における末梢血幹細胞の効率的提供と至適な利用率増加に繋がる実践的支援体制の整備

文献情報

文献番号
201914001A
報告書区分
総括
研究課題名
非血縁者間末梢血幹細胞移植における末梢血幹細胞の効率的提供と至適な利用率増加に繋がる実践的支援体制の整備
課題番号
H29-難治等(免)-一般-101
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 真一郎(学校法人慶應義塾 慶應義塾大学 医学部内科学(血液)教室)
研究分担者(所属機関)
  • 豊嶋 崇徳(北海道大学・大学院医学研究科 医学専攻内科学講座血液内科学分野)
  • 日野 雅之(大阪市立大学・大学院医学研究科 血液腫瘍制御学)
  • 上田 恭典(倉敷中央病院・血液内科)
  • 中世古 知昭(国際医療福祉大学 三田病院 血液内科)
  • 熱田 由子(一般社団法人日本造血細胞移植データセンター)
  • 高梨 美乃子(日本赤十字社・血液事業本部技術部)
  • 矢部 普正(東海大学・医学部再生医療科学)
  • 長藤 宏司(久留米大学・医学部内科学講座血液・腫瘍内科部門)
  • 藤 重夫(大阪国際がんセンター・血液内科)
  • 宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院・造血細胞移植センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、これまで非血縁者間末梢血幹細胞移植(UPBSCT)の導入を検討してきた研究班の成果を踏まえ、造血幹細胞移植医療体制を支える様々な組織と連携し、包括的視点から非血縁者末梢血幹細胞の効率的提供と、その至適な利用率増加に繋がる様々な調査、解析を実施し、UPBSCTにおけるドナーの安全担保と効率的な提供体制の構築と移植成績向上に役立てることである。
研究方法
今年度は1) TRUMPデータを用いた我が国のUPBSCTの成績の解析を施行し、UPBSCTの成績を非血縁者間骨髄移植のそれを比較し現状における両造血細胞ソースを用いた移植の同等性を検証、2) ECPを用いた治療抵抗性慢性GVHDの治療体制の構築について,北海道地域をモデルとした検討、3)骨髄採取との比較による末梢血幹細胞採取前後のドナー負担の明確化、ドナー負担軽減を目指した末梢血幹細胞採取法、採取体制の効率化に関して、SF-36を用いたアンケート方式による、骨髄採取と末梢血幹細胞採取におけるドナー負担の比較、非血縁ドナーからの末梢血幹細胞採取に関するデータを解析し、1日で採取が終了する件数を増加させるための方策について検討、4)末梢血ドナーフォローアップ体制の強化による安全情報の更なる充実と移植施設へのfeedbackシステムの確立を目指して血縁ドナーと非血縁ドナーの安全情報の管理の一元化について,JMDPドナー安全委員会,日本造血細胞移植学会ドナー委員会,造血細胞移植データセンター,日本赤十字社の4者が協力して、情報管理の一元化システムの構築について検討を継続した。
結果と考察
おおむね計画に従った検討を完了することができた。
難治性慢性GVHDの治療に用いるECPの設置は、今後の移植推進拠点病院事業と連携して地域ごとに、その至適配置を検討する予定である。
1) 末梢血幹細胞および骨髄採取後QOLの比較では、採取後1週間目の身体的QOLの低下は骨髄採取と比較して有意に少なく、ドナーへの身体的負担はより少ない採取法であることを示した。2) ボランティアドナーから末梢血幹細胞採取では、採取CD34陽性細胞を採取中に測定し血液処理量を決定することを確認した。
3) ドナー安全の向上のために、JDCHCTとドナー委員会が連携し、ドナー有害事象の把握、検討を含めてドナー安全情報管理の一元化が可能となった。また、JMDPにおけるオンラインドナーコーディネートシステムを構築した。
結論
今後安全性には配慮し採取前のG-CSF投与における検診の簡略化を進めることで、PBSCCを選択するドナーを増やすことが期待できる。また、採取中の採取効率の測定によってドナーの負担を大幅に軽減出来る可能性がある。今回構築されたドナーフォローアップシステムによって、業務量の減少と効率化によりコーディネート期間の短縮とより厳密な安全情報管理が期待される。また、血縁ドナーに対しても同一基盤での運用を行い,安全管理体制の構築を目指すことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201914001B
報告書区分
総合
研究課題名
非血縁者間末梢血幹細胞移植における末梢血幹細胞の効率的提供と至適な利用率増加に繋がる実践的支援体制の整備
課題番号
H29-難治等(免)-一般-101
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 真一郎(学校法人慶應義塾 慶應義塾大学 医学部内科学(血液)教室)
研究分担者(所属機関)
  • 豊嶋 崇徳(北海道大学 大学院医学研究科 医学専攻内科学講座血液内科学)
  • 日野 雅之(大阪市立大学 大学院医学研究科 血液腫瘍制御学 )
  • 上田 恭典(倉敷中央病院 血液内科)
  • 中世古 知昭(国際医療福祉大学 三田病院 血液内科)
  • 熱田 由子(一般社団法人日本造血細胞移植データセンター)
  • 高梨 美乃子(日本赤十字社 血液事業本部技術部)
  • 矢部 普正(東海大学 医学部再生医療科学)
  • 長藤 宏司(久留米大学 医学部 内科学講座血液・腫瘍内科部門)
  • 藤 重夫(大阪国際がんセンター 血液内科)
  • 宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院 造血細胞移植センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、これまで非血縁者間末梢血幹細胞移植(UPBSCT)の導入を検討してきた前研究班の成果を踏まえ、UPBSCTに於ける末梢血幹細胞の効率的提供と至適な利用率増加に繋がる実践的支援体制を整備し、ドナーの安全に配慮した至適なUPBSCT件数の増加を図ることである。
研究方法
非血縁者間末梢血幹細胞移植(UPBSCT)に於ける末梢血幹細胞の効率的提供と至適な利用率増加に繋がる実践的支援体制の整備について、(1)UPBSCT後合併症の効果的な予防・治療法の確立、(2)非血縁者末梢血幹細胞効率的提供体制の確立、(3)非血縁者ドナーからの末梢血幹細胞採取の安全性担保の3つの視点から取り組んだ。(1)によって移植医のUPBSCT後合併症への懸念を払拭するとともに、UPBSCTが至適な移植患者選択を可能とし、(2)によって末梢血幹細胞のタイムリーな提供を可能とし、移植を受ける機会の拡大と成績向上に繋げ、(3)によって安全情報のタイムリーな把握による安全性の担保、そしてドナーの安心感の向上をドナー数増加に繋げ、結果としてドナーの安全に配慮した至適なUPBSCT件数の増加を目指した。
結果と考察
TRUMPデータを用いて、我が国のUPBSCTとUBMTの成績を多変量解析で比較し、両者で生存率、grade III-IV急性GVHD、NRMに有意差がないことを確認した。また、UPBSCTで多く用いられていた少量ATGを含む前処置の選択が、UPBSCTの成績向上に関与したことが示唆された。HLA不適合UPBSCTにおいても、HLA不適合UBMTと同様の生存率が得られることを確認した。一方で、急性GVHDII-IVを発症した症例の予後は、UBMTと比較してUPBSCTで低下する傾向が認められた。血縁・非血縁者ドナーからの末梢血幹細胞採取の安全性に関して、biosimilar G-CSFを用いた採取の短期的安全性を評価、その内容を学会声明文に反映し、JDCHCTと連携して血縁・非血縁同種末梢血ドナーの長期安全情報一元化管理体制を新たに構築した。UPBSCCの効率化に関しては、体制の安全性は確認するとともに、これまで骨髄バンクおよびドナー登録事業に蓄積されたデータを解析し、ドナーの安全性評価に必要なG-CSF投与中の検査項目や採取の方法の見直しを行った。骨髄採取との比較による末梢血幹細胞採取前後のドナー身体的QOL(負担)を比較し、末梢血幹細胞採取後1週間目の身体的QOLの低下は骨髄採取に比較して優位に少なく、ドナーへの身体的負担はより少ない採取法であることを示した。ドナー負担軽減を目的とした1日での末梢血幹細胞採取を可能とする採取方法に関して、2018年12月までに施行された非血縁ドナー600例の採取情報を解析し、採取上限を300ml/kg(血縁ドナーにおける処理上限値)引き上げることで、移植に必要な細胞を確保するのに2日を必要としていた97例中56例(52.8%)において、1日での十分量の細胞採取が可能であることを確認した。同種末梢血ドナーフォローアップ体制に関しては、現在構築中のJMDPドナーコーディネートシステム、日本造血細胞移植データセンター、の本造血細胞移植学会ドナー委員会と連携して、タイムリーな採取安全性に関するデータ収集と施設への情報発信の具体的な方法と内容に関する検討を進めた。加えてWMDA EBMT年次総会の造血幹細胞ドナーに関するactivityに参加しドナー安全情報の収集を継続した。
結論
UBMTとの比較におけるUPBSCTの移植成績に関する情報は移植医が造血細胞ソースに対するpreferenceを見直すのに役立つと考えられる。また、慢性GVHDに対する対応策を示し、治療へのアクセスを具体化することで、合併症を懸念することでの幹細胞ソースの選択の偏りを改善することが期待される。末梢血幹細胞後の末梢血と骨髄ドナーの身体的負担の比較、そして末梢血採取の安全情報の収集とその適切な情報提供体制に構築は、末梢血提供を希望するドナーのリクルート増加に繋がることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201914001C

収支報告書

文献番号
201914001Z