小児期および成人移行期小児リウマチ患者の全国調査データの解析と両者の異同性に基づいた全国的「シームレス」診療ネットワーク構築による標準的治療の均てん化

文献情報

文献番号
201913002A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期および成人移行期小児リウマチ患者の全国調査データの解析と両者の異同性に基づいた全国的「シームレス」診療ネットワーク構築による標準的治療の均てん化
課題番号
H29-免疫-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
森 雅亮(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 宮前 多佳子(東京女子医科大学・医学部)
  • 八角 高裕(京都大学・大学院医学研究科・発生発達医学講座発達小児科学)
  • 梅林 宏明(宮城県立こども病院・綜合診療科 兼 リウマチ・感染症科)
  • 松井 利浩(国立病院機構相模原病院・リウマチ科)
  • 大島 至郎(国立病院機構大阪南医療センター・リウマチ・膠原病・アレルギー科 )
  • 西山 進(倉敷成人病センター・リウマチ膠原病センター・診療部リウマチ科)
  • 橋本 求(京都大学医学部附属病院・リウマチセンター)
  • 秋岡 親司(京都府立医科大学・大学院医学研究科・小児科学)
  • 井上 祐三朗(千葉県こども病院・アレルギー・膠原病科)
  • 五十嵐 徹(日本医科大学・医学部・小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先駆的研究で行った小児期から成人移行期の小児リウマチ性疾患(若年性特発性関節炎(JIA), 小児期発症全身性ループスエリテマトーデス(SLE), 若年性皮膚筋炎(JDM), 小児期発症シェーグレン症候群(SS))の全国実態調査結果に基づき、①小児期および成人移行後の診療実態、②従来の分類基準の妥当性の検証、③小児から成人移行までの長期観察による、寛解あるいは機能障害に至る予後予測因子の検証、④診断までの過程、治療、投薬内容の検討によるデータベース補填のための基礎データの収集、⑤妊娠に関わる問題点の検討、の5点に焦点を当てて多角的に小児と成人との異同について検証すること、および地域の実情に合わせた小児期から成人移行期までのシームレス診療体制を確立し全国診療ネットワークを構築すること、が本研究の目的である。
研究方法
本年度は、1)「成人リウマチ診療医のための移行支援ガイド」の完成に尽力することとし、関連学会にパブリックコメントを求め、学会承認を得る作業を行った。また、2)小児リウマチ性疾患の成人移行患者における、小児科から成人診療科への紹介と受け入れの実態調査に基づいた全国的な診療ネットワークの構築として、①NinJa (関節リウマチ患者のコホート)参加施設の医師に協力を仰ぎ、小児リウマチ性疾患の成人移行患者の受け入れ状況についてアンケート調査を行い、②本研究班に所属する小児科研究者に対しては、小児リウマチ性疾患の成人移行患者の成人科への紹介状況についてアンケート調査を実施した。加えて、3)対象疾患(JIA, 小児期発症SLE, JDM, 小児期発症SS)における移行期問題の解決を図り、その成果を英文誌投稿などの方法で公表する。
結果と考察
1)移行医療に関する資料である「成人リウマチ診療医のための移行支援ガイド」の作成・完成
・小児科サイドにおいても、成人科サイドの考え方を知ることができ、双方向での結びつきを強化することになったと確信している。最終的に、関連学会(日本リウマチ学会、日本小児リウマチ学会)からのパブリックコメントに随時回答し、両学会の承認を得ることが出来た。
2) 小児リウマチ性疾患の成人移行患者における、小児科から成人診療科への紹介と受け入れの実態調査に基づいた全国的な診療ネットワークの構築
・実態調査の結果に基づいて、本研究の最終目的であった『小児科-成人リウマチ診療科とのシームレスな全国的な診療ネットワーク』を構築することが出来た。今後、小児科、成人診療科、患者会および多職種にわたるメディカルスタッフ間での情報共有とスムースな移行・転科を行うための参考資料として、本ネットワークを活用・普及していきたい。
3) 対象疾患(JIA, 小児期発症SLE, JDM, 小児期発症SS)における移行期問題の解決
①JIA
・『移行患者医療情報』の作成
・全身発症型関節炎の病態調査の一環とした関節炎残存例とそれ以外の二次調査の実施
②小児期発症SLE
・「小児リウマチ患者に対するDXA 使用の現況」
・「小児期発症全身性エリテマトーデスにおける遺伝要因の検討」
・「初回発症時に尿異常を呈さない全身性エリテマトーデスの腎組織診断と腎予後に関する検討」
・IVCY 長期的副作用調査
・SLE 分類基準のvalidation
③JDM
・移行期支援サマリーの作成
・「我が国における若年性皮膚筋炎・若年性多発筋炎の臨床的特徴についての多施設共同研究」実施
・抗MDA5抗体陽性患者における生命予後因子の解析
④小児期発症SS
・SS 移行ガイド(医師向け)の作成
・SS 移行ガイド(患者向け)の作成
・小児〜成人期の年齢的連続性をもったSS レジストリの確立
・唾液プロテオーム解析による若年シェーグレン症候群の早期診断法の開発
結論
1)移行医療に関する資料である「成人リウマチ診療医のための移行支援ガイド」の完成
・2020年5月には、冊子物として上梓される予定(出版社:羊土社)。今後、このガイドの活用・啓蒙・普及を図り、実臨床の場での有用性を検討していく。
2)小児リウマチ性疾患の成人移行患者における、小児科から成人診療科への紹介と受け入れの実態調査に基づいた全国的な診療ネットワークの構築
・今後(1)成人移行患者の受け入れ可能施設リスト作成、 (2)小児科-リウマチ科のみならず、整形外科、眼科、皮膚科との連携および他科を融合したリウマチ性疾患のエリア別シームレス診療ネットワークの構築を目指す。
3) 対象疾患(JIA, 小児期発症SLE, JDM, 小児期発症SS)における移行期問題の解決
・各疾患の移行期に関わる諸々の課題に取り組んだ結果、多くの研究成果を公表することとなった。

公開日・更新日

公開日
2020-10-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201913002B
報告書区分
総合
研究課題名
小児期および成人移行期小児リウマチ患者の全国調査データの解析と両者の異同性に基づいた全国的「シームレス」診療ネットワーク構築による標準的治療の均てん化
課題番号
H29-免疫-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
森 雅亮(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 宮前多佳子(東京女子医科大学・医学部)
  • 八角 高裕(京都大学・大学院医学研究科・発生発達医学講座発達小児科学)
  • 梅林 宏明(宮城県立こども病院・綜合診療科 兼 リウマチ・感染症科)
  • 松井 利浩(国立病院機構相模原病院・リウマチ科)
  • 大島 至郎(国立病院機構大阪南医療センター・リウマチ・膠原病・アレルギー科 免疫疾患センター)
  • 西山 進(倉敷成人病センター・リウマチ膠原病センター・診療部リウマチ科)
  • 橋本 求(京都大学医学部附属病院・リウマチセンター)
  • 秋岡 親司(京都府立医科大学・大学院医学研究科・小児科学)
  • 井上 祐三朗(千葉県こども病院・アレルギー・膠原病科)
  • 五十嵐 徹(日本医科大学・医学部・小児科学)
  • 山口 賢一(聖路加国際大学・聖路加国際病院アレルギー膠原病科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究「小児期および成人移行期小児リウマチ患者の全国調査データの解析と両者の異同性に基づいた全国的「シームレス」診療ネットワーク構築による標準的治療の均てん化」の課題に基づいて、先駆的研究で行った小児期および成人移行期を併せた小児リウマチ性疾患の全国実態調査より得られたデータから、両者の診療実態の差異、既存の分類基準の妥当性と予後予測因子の検証、臨床の場で実際に行われてきた診断・治療内容の検討等を更に詳細に解析し、小児リウマチ医と成人リウマチ医が連携した全国的な診療ネットワークの構築を目指した。
研究方法
平成29年度:前年度までに行った、小児期および成人移行期の主な小児リウマチ性疾患患者の全国実態調査結果を用いて、『全国実態調査データの解析とリウマチ性疾患の移行期医療の実態と問題点の把握』について、1) 全国実態調査データの詳細解析、2) 移行期医療の普及に必須である移行期ガイド作成のための資料作成、3) 対象疾患(JIA, 小児期発症SLE, JDM, 小児期発症SS)における移行期問題の解決、について研究した。
平成30年度:移行医療に関わる支援ガイドは、まず成人科リウマチ医師から小児リウマチ性疾患の移行に関して、知り得たい点を抽出した。その抽出点(クエスチョン)について、小児科リウマチ医を中心に回答を作成し、この内容を成人科リウマチ医と小児科リウマチ医との間で共有し、協議・推敲を重ね、ネットワーク分担班で総論パートを担当し、他の各分担班では担当疾患に関わる各論パートを作成した。
令和元年度:「成人リウマチ診療医のための移行支援ガイド」の完成に尽力することとし、関連学会にパブリックコメントを求め、学会承認を得る作業を行った。小児リウマチ性疾患の成人移行患者における、小児科から成人診療科への紹介と受け入れの実態調査に基づいた全国的な診療ネットワークの構築として、①National Database of Rheumatic Diseases in Japan(NinJa)参加施設の医師に協力を仰ぎ、小児リウマチ性疾患の成人移行患者の受け入れ状況についてアンケート調査を行い、②本研究班に所属する小児科研究者に対しては、小児リウマチ性疾患の成人移行患者の成人科への紹介状況についてアンケート調査を実施した。加えて、研究対象疾患(JIA, 小児期発症SLE, JDM, 小児期発症SS)における移行期問題の解決を図り、その成果を英文誌投稿などの方法で公表する。
結果と考察
平成29年度:前年度までに行った全国実態調査データを詳細に解析することとともに、成人科医師の移行・転科に関する要望を知るために、成人科医師が日頃感じている移行期診療の問題点を探る目的で、NinJa参加45施設、小児リウマチ学会調査による移行例転院先36施設の成人科医師を対象としたアンケート調査を実施した。その結果、小児科との連携状況や移行実績が明らかになるとともに、移行期医療の現状での問題点、移行期診療ガイド作成に向けた具体的な要望・課題などに関して多くの意見を収集できた。平成30年度:その調査結果を活かし、成人科医師の視点・要望を十分に踏まえた「成人科リウマチ医のための移行支援ガイド」の作成に、本研究班を挙げて従事した。令和元年度:本ガイドを完成させ、関連学会(日本小児リウマチ学会、日本リウマチ学会)の承認を取得したことから、学会と協同した出版物として公表するまでに至った。それとともに、小児リウマチ性疾患の成人移行患者における、また小児科から成人診療科への紹介と受け入れの実態調査に基づき、全国的な小児から成人までのシームレスな診療ネットワークの構築を図った。加えて、主たる小児リウマチ性疾患(JIA, 小児期発症全身性エリテマトーデス(SLE), 若年性皮膚筋炎(JDM), 小児期発症Sjögren症候群(SS)において、3年間を通じて、各疾患における移行期問題を取り上げ、その解決に向けて研究を遂行した。
結論
1.移行医療に関する資料である「成人リウマチ診療医のための移行支援ガイド」の作成・完成
・2020年5月には冊子物として上梓される予定(出版社:羊土社)。今後、このガイドの活用・啓蒙・普及を図り、実臨床の場での有用性を検討していく。
2.小児リウマチ性疾患の成人移行患者における、小児科から成人診療科への紹介と受け入れの実態調査に基づいた全国的な診療ネットワークの構築
・引き続き、1)成人移行患者の受け入れ可能施設リストを作る(全国のエリア単位で)、2)小児科-リウマチ科のみならず、整形外科、眼科、皮膚科との連携を図り、他科を融合したリウマチ性疾患のエリア別シームレス診療ネットワークの構築を引き続き関連学会レベルで目指す、等の研究を継続していく。

公開日・更新日

公開日
2021-11-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201913002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成28年度までに行った小児期および成人移行期の小児リウマチ性疾患患者の全国実態調査結果を用いて、1) 全国実態調査データの詳細解析、2) 移行期医療普及のための移行期ガイド作成・開発、3) 各疾患における移行期問題の解決、について研究した。成人科医師が日頃感じている移行期診療の問題点を探る目的で、成人科医師を対象としたアンケート調査を実施した結果、小児科との連携状況や移行実績が明らかになるとともに、移行期医療の現状での問題点、具体的な要望・課題に関して多数の意見を収集することができた。
臨床的観点からの成果
小児リウマチ性疾患の成人移行患者における、小児科から成人診療科への紹介と受け入れの実態調査を実施し、全国的な診療ネットワークの構築を完成させた。今回の研究で、1)成人移行患者の成人リウマチ科受け入れ可能施設リストの作成、2)整形外科、眼科、皮膚科との連携を図り、他科を融合したリウマチ性疾患のエリア別シームレス診療ネットワークの構築、を引き続き関連学会レベルで目指せた。現在は、このシステムを発展させ、日本小児リウマチ診療支援マップ(http://www.praj.jp/map/)が整備された。
ガイドライン等の開発
小児リウマチ性疾患の移行医療に関する資料として、「成人リウマチ診療医のための移行支援ガイド」を作成・開発し、2020年5月には冊子物として上梓された(出版社:羊土社)。JIAについては、「JIA生物学的製剤使用の手引き2020」の作成・開発も完了し、こちらも2020年5月に冊子物として上梓された(出版社:羊土社)。今後、これらのガイドの活用・啓蒙・普及を図り、実臨床の場での有用性・実用性を検討して必要性に応じて改訂作業を、日本リウマチ学会と協同して行っていく。
その他行政的観点からの成果
先駆的研究で行った小児期および成人移行期を併せた小児リウマチ性疾患の全国実態調査より得られたデータから、両者の診療実態の差異、既存の分類基準の妥当性と予後予測因子の検証、臨床の場で実際に行われてきた診断・治療内容の検討等を更に詳細に解析することができた。今後、小児期および成人移行期リウマチ・膠原病領域における、地域格差のない標準化診療の実現を目的とした全国的な診療ネットワークの構築の充実・展開を目標としているが、その礎となる研究になったと考えている。
その他のインパクト
成人科とともに、患者会や学会と協力し、小児リウマチ性疾患患者・保護者向けの公開講座を開催した。JIA/成人スチル病は毎年年1回の患者向け講演会を行い、同時に医療相談会も行った(神奈川、石川、大阪)。その他の小児リウマチ性疾患については、患者向け公開講座を平成29年度、平成30年度、令和元年度に東京で行った。いずれも開催時に行ったアンケート調査では高い満足度が得られ、朝日新聞、読売新聞、東京新聞等のマスコミにも取り上げてもらった。今後も定期的に(年に1~2回)医療相談会を開催していく。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
2024-11-14

収支報告書

文献番号
201913002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,190,412円
人件費・謝金 36,000円
旅費 1,757,897円
その他 3,169,713円
間接経費 1,846,000円
合計 8,000,022円

備考

備考
自己資金22円

公開日・更新日

公開日
2020-05-27
更新日
-